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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第五章 ゴールドカード+奴隷ノーマル
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良い奴隷達

 山ほどのデザートを運んで、カザンの町にやってきた。


 それははフードプリンターで作ったものだ。DORECAの作成じゃないから、おれも奴隷達も楽々運ぶ、って訳にはいかなかった。


 だから台車に積んで、マイヤたちに護衛についてもらって、カザンまでやってきた。


 カザンの町で、町の外まで出迎えて来たヴァレリヤと合流する。


「遠路はるばる、ようこそおいで下さいました」


「約束のものを持ってきた。中に案内してくれ」


「はい」


 ヴァレリヤの先導で町の中に入る。


 途中で何人かの子供が泥遊びをしていて、なんか和やかな感じだ。


「うん?」


「どうかしましたか?」


「いま町に入ったよな」


「はい。ここからがカザンの中です。それがどうかしましたか?」


「町に入ったのに感じがまったく変わらない。町の外にいる感じだ」


「その事ですか」


 ヴァレリアはにこりと微笑む。微妙に誇らしげな顔をする。


「マルタ様のご意向で、カザンはイリヤの泉はないのです」


 町の必須品、モンスターの侵入を防ぐ高級アイテム、イリヤの泉。


 それがない事を誇らしげにいう。


「なんでだ?」


「我々は邪神を倒した勇者パーティーの一人、戦士ルスランと同じ血を引く誇り高き一族。イリヤの泉などなくともモンスターは来たら返り討ちにすればいい、というのがマルタ様のご意向なのです」


 すればいいって。


「ご報告が遅れましたが、先日アキト様に都合して頂いた食糧。あれもモンスターを倒した実績にあわせて住民の皆に配布してます。より多く倒せたもの、より大物を仕留めたものから優先的に、という形で」


「そんなことをやってたのか。そっちの好きにやってもらっていいけど、そのやり方じゃもらえないヤツもでてくるんじゃないのか?」


 要は懸賞制度だから、そうなりそうな気がする。


「カザンにそんな弱者は存在しないもん」


「うぉ!」


 後ろからいきなり話しかけられた。


 ビックリして振り向く、そこにマルタがいた。


 マルタは腰に手を当てて、ヴァレリヤ以上に誇らしげな顔でいいはなった。


「あたしらは偉大な戦士ルスランに繋がる一族なんだよ、戦いでモンスターごときに遅れを取るはずがないじゃん」


「モンスターごときか」


「そうよ」


「ちなみに聞くけど、成績がビリだったヤツはどれくらいモンスターを倒せてるんだ?」


「ヴァレリヤ?」


 マルタはヴァレリヤに聞く。


 おれと同じ数字の把握は部下に任せてるみたいだ。


「12体です」


「だって」


「期間は? ビリでそれだから一ヶ月くらいか?」


「一日に決まってんじゃん」


 今度はマルタが即答した。


「はあ?」


「だから一日。まあ平均だけどさ」


「一日で12体モンスターを倒せてるのか? ビリで?」


「うん」


 それがどうした、って顔をしたマルタ。


 さすがにそれは無いだろ――って思った所にモンスターがやってきた。


 遠くから砂煙を巻き起こしてやってくるモンスター。巨大でイノシシの様な見た目をしたモンスターだ。


「アキト」


 マイヤがおれを見た。おれはうなずく。


 許可を得たマイヤ達が迎撃態勢に入った――その時。


 泥遊びをしていた子供の一人が飛び出した。泥混じりの鼻水をたらしてる子供だ。


 子供はダッシュしてからの跳び蹴りをモンスターに放った。


 先を越されて、マイヤ達はぽかーんとなった。


 おれから見れば別にそれほど強くない(子供にしては結構強いってレベル)が、戦う意思はめっぽう強くて、攻め攻めでモンスターに攻撃をし続けた。


 激闘が十分くらい続いて、子供はモンスターを倒した。


 ますますぽかーんとなってしまうマイヤたち。


「ちぇ、倒されちゃったか」


「やられたらおれが行くつもりだったのに」


「飛び出しが遅い方がわるい」


 泥遊びに戻った子供達、会話の内容がある意味ひどい。


 ……ここは修羅の国か。


 おれはマルタを見て、呆れた口調で行った。


「みんなああなのか」


「もちろん」


「あんな事ができるんなら自分達で食糧調達もできるだろうが。倒した獲物を食糧に加工するとかさ」


「えっ、何それ? 倒した獲物をってどういうこと?」


「はい、いやだから、あそこに倒れてるモンスターを食糧にするとか」


「どうやって?」


「どうやってって……」


 マルタを見る、ヴァレリヤを見る。


 そういう発想自体ないのか?


 そう思ってるとまたモンスターが襲ってきた。泥遊びをしてる子供達が動き出す前に、今度は街の中から老人が飛び出してきて、俊敏な動きでモンスターに挑んだ。


「……おいおい」


 呆れるおれ、さっきからもう何をいっていいのかわからないって感じでぽかーんとするマイヤたち。


 なんかもうカザンはこれでいいような気がしてきた。


「それよりも、約束のものを持ってきたぞ」


 マイヤたちに合図を送って、荷台を引いてきたもらう。


 上にかぶせてある布を取って、小さな箱を一つ取り出して、マルタに渡す。


「これは?」


「カステラ。くってみろ。甘くて美味しいぞ」


 マルタは言われた通りカステラを食べた。


 くちがもぐもぐする――目が輝きだした。


「美味しい! なにこれ、あたしが食べたものの中で一番美味しいよ」


「そうか」


「ねえねえ、これってもしかして全部そのカステラってやつ? こんなにいっぱい?」


「約束だからな」


 いうと、マルタはますます目を輝かせたのだった。


     ☆


 リベックの町に戻ってきて、領主の舘に戻った。


「お帰りなさい、ご主人様」


「ユーリア、これからカザンの人間があれこれモンスターの素材を持ち込んでくる事になる。それに値段をつけて渡してやれ」


「買い取り?」


「そうだ。物々交換でもいいし、エンを使った取引でもいい。お前に任せる」


「うん」


 頷くユーリア。


「それとカザンもおれの傘下に入ることになった。事務的な事は全部お前に任せる、いい感じにやってくれ」


「わかった」


 おれは椅子に深く座って、体を休めた。


 ちょっとだけ疲れた。


「ご主人様、報告いい?」


「ああ」


 目を閉じたまま頷く。


「町の人から質問。住民税はお金で払っても良いのか、って」


「いいぞ、その方が向こうも楽だろ」


 今までやってた物々交換よりは。


「わかった、そうする。それから提案、カザンがご主人様のものになるなら、銭湯を作ってあげた方がいい」


「そうだな。今度作りに行ってくる。他は?」


「リーシャさんとミラがサル狩りに行ってる。森にいっぱい吸い寄せられた」


「サルなら任せておけば良いだろ。他は?」


 目を閉じたままユーリアの話を聞く。


 ものすごく有能な奴隷だ、内政面に関しては、もはや彼女がいないと回らないくらい依存しちゃってる。


「ユーリア」


「はい」


「ここに座れ」


「はい」


 ユーリアがおれの横に来て、ちょこんと床に座った。


「お前は最近よくやってくれてる。褒美になにかほしいものはないか?」


「ご主人様の役に立ちたい」


 ユーリアは迷いなく即答した。


 本音だとわかる。


 おれの奴隷、エターナルスレイブ。


 ご主人様の命令で過労でたおれるのを名誉に思う人種だ。


 おれの役に立ちたい、ってのは間違いなく本音だろうな。


 おれは聖夜の奴隷を思い出した。荒野で正座を命じられても、それすら奴隷としてこなすあの子。


 奴隷はそれでも良いかもしれない、だがおれはそういうのはいやだ。


「ユーリア」


「はい」


「調整して、おれとお前達三人が休める日を作れ。最近お前達を剣にして戦ってないから、それをやりたい。三人まとめてだ」


「わかった。調整する」


「ああ」


 頷く。


 魔力はチャージしなかったな、薄目で見たらユーリアは微かに微笑んでた。


 おれは奴隷を愛でる、過労で倒れるのは仕方ないけど、それ以上に手元において愛でる。


 聖夜と違う道をいく。


「ユーリア」


「はい」


「肩を揉め。報告があったら続けろ」


「はい!」


 ちょっと強めに答えた。嬉しさが伝わってくる。


 ユーリアに肩を揉んでもらう。報告を続けてもらう。


 ゆっくりとした時間を過ごした。


「ご主人様」


「うん?」


 うとうとしかけたところで呼ばれて、目を開ける。


 懐が光ってるのが見えた。


 DORECAだ。取り出すと、それが一段と光って――カードの色を変えた。


 黄金から、白金へ。


「へえ……メニューオープン」


--------------------------

アキト

種別:プラチナカード

魔力値:6,721,386

アイテム作成数:61,343

奴隷数:3

領民:5000

--------------------------


 ステータスを確認して、すぐにわかった。


 新しく「領民」ってのが加わって、それが5000人になった。


 それでプラチナカードにレベルアップした、って所だ。


「リーシャさんとミラ」


 つぶやくユーリア、おれは頷く。


 どうやら、おれがいないところで、奴隷達が働いてくれたようだ。


「ユーリア」


「はい」


「二人をねぎらう方法を考えろ」


「……はいっ」


 ――魔力を500,000チャージしました。


 命令されたユーリアは、珍しく魔力をチャージしてくれた。


 まったく、良い奴隷をもったもんだ、おれは。

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