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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第五章 ゴールドカード+奴隷ノーマル
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器の大きさ

「秋人ぉぉぉぉぉぉ」


 マイヤ達に囲まれて町に戻ろうとすると、離れたところから怒声が聞こえてきた。


 振り向くと、聖夜だった。


 久しぶりに会う聖夜は血走った目でおれに突っ込んできて、鉄の剣を振りかぶってくる。


「アキト」


「大丈夫だ」


 前に出るマイヤを手で制して、奴隷剣・エターナルスレイブ改を抜く。


 「全員孕ませてくれ」という女達の前でかっこわるいところは見せられない。


「うおおおおお!」


「ふっ!」


 奴隷剣を振って聖夜を迎撃した。


 剣戟音が一回――おれの剣が聖夜の剣を真ん中から真っ二つにした。


「くそっ!」


 聖夜は折れた剣をむちゃくちゃ振ってきた。


 傍目から見たらほとんどだだっ子パンチのような、攻撃にもなってない攻撃だ。


 手を掴んで受け止め、そのまま腹パンする。


 がらん、と剣が地面に落ちる。


「がはっ……」


 聖夜もがっくり膝をつく。


「ご主人様!」


 うしろから聖夜の奴隷が走ってきた。


 服は女神のところにいたときのままで、それが更にぼろぼろになってる。


 ……多分、奴隷として正しい格好だ。


 彼女は聖夜を心配して、そばに駆け寄った。


「うるさい!」


 聖夜はそんな彼女を振り払った。


 手が裏拳になって、頬にクリーンヒットする。


 奴隷が尻餅をついた。手で頬を押さえて泣きそうな顔をする。


「くそっ! たったの200かよ。この能なしが!」


 いや、いい加減そのやり方じゃないって気付けよ。


「なあ聖夜――」


「黙れ!」


 聖夜がおれを睨む。血走った目が更に充血していた。


「言え! てめえはどんなズルをした。あの女神にまた会ってそれで取り入ったのか?」


「女神? いやイリヤとはあれ以来会ってないぞ」


「嘘をつくな! じゃあ何をした」


「……奴隷と一緒に町を作っただけだ」


「嘘をつくな!」


 聖夜が叫ぶ。


「そんな事であんなに町をでかくさせられるはずがない! この短期間で町を四つも持てるはずがない!」


「てめえが、てめえがズルをしたに決まってる」


 結局それか。


 自分が理解できないのはズルって事か。


「はあ。分かった言うぞ、おれは大した事をしてない。奴隷を愛でただけだ」


「てめえええ!」


 聖夜はおれに殴りかかってきた。


 反撃――する前にマイヤが割って入って、聖夜を羽交い締めにした。


「離せ! てめえ! この期に及んでまだおれをバカにするか!」


「してな――」


「うるさい黙れ!」


 怒鳴られた。これは何をいっても無駄だな。


「なあアキト、こいつはどうするんだい」


 マイヤはおれを見る。まわりの女達も同じだ。


 必要ならあたいらが処理しとくよ、そんな声が聞こえた気がした。


「……離してやれ」


「いいのかい?」


「ああ、同郷の誼だ」


「そういうことなら仕方ないねえ」


 マイヤは納得した。


 聖夜の背中をどんと押して、おれからちょっと遠ざけた。


 よろめいた後、おれをにらみつける聖夜。


「秋人……っ」


「もう一回言うけど、おれはとくに何もしてない。ズルはしてない。奴隷をおれが思う一番良い方法であつかっただけだ。そう言う意味ではお前と何ら変わらない」


「……」


 答えず、ただおれを親の敵の様に睨む。


「騙されたと思って、その奴隷を愛でてみたらどうなんだ。喜ばせてみたら変わるかもしれないぞ」


「だまれ!」


 聖夜は怒鳴って、身を翻した。


「そんなばからしい話なんて信じられるか。みてろ、いつかてめえがやったズルを暴いてやる」


「……」


 もう何を言っても無駄な気がした。


 聖夜が立ち去る、奴隷が後を追いかける。


「ご主人様」


「来るな間抜け!」


 奴隷がびくっ、と立ち止まった。


「そこで正座でもしてろ! 今日は戻るな!」


 聖夜は奴隷を怒鳴りつけた後去っていった。


 奴隷はそれを見送って、言い付け通り岩場の上で正座した。


「ちょっと、なにしてんだいそんなところで。足に悪いから立ちな」


 マイヤは奴隷を起こそうとする。


「マイヤ」


「な、なんだい」


 おれの真顔にたじろぐマイヤ。


「好きにさせてやれ」


「し、しかし」


「ご主人様からの命令だ。そして彼女はエターナルスレイブだ」


 奴隷を向いて、聞く。


「そうだろ」


「……」


 奴隷は答えなかった。ただおれを見つめた。


 微妙に、感謝している、風に見えなくもない目で。


「そ、そうかい」


「行こう」


 おれはマイヤと女達を引き連れて立ち去った。


 聖夜の奴隷から離れた。


 マイヤたちはちらちらと振り向くが、おれはそうはしなかった。


 あれで……多分幸せなんだ、本人のなかじゃ。


 過労を名誉だといったリーシャたちの言葉が、おれに確信を持たせる。


 一団、荒野を進む。


 しばらく歩いたあと、マイヤが話しかけてきた。


「アキト」


「なんだ?」


「あんた……あたいが想像してた以上に大きい男だったんだね」


「そうか?」


「そうさ。なあ、みんな」


 マイヤがいうと、女達が声を上げて同意した。


「それに比べて……あの男のキンタマの小ささときたらないねえ」


 またまた女達が同意した。


 全員が一斉に喋りだし、まわりが一気に姦しくなった。


「ねえ、アキト」


 マイヤがおれの腕を組んで、猫なで声になった。


「どうした」


「やっぱり、今すぐあたいらを孕ましとくれよ」


 声がピタッと止んだ、女達が全員期待の目でおれを見る。


 期待されるのは良いけど。


「今はダメだ。まだお前らのための町を作ってやる余裕がない。しばらく待て」


「そうか、うん、わかった」


 マイヤがおれから離れた。寂しそうな顔をした。


 なにかフォローしとこうか、と思ったが。


「やっぱりアキトは器が大きい男だ」


「うん!」


「わたしもそう思う」


「アキトさんの子供を産める日が楽しみ」


 マイヤも、女達も。


 さっき以上に姦しくなって……喜んでくれたのだった。

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