ウーマンアーミー、ワンマンアーミー
アキトの町から離れた山の中。
目の前にあるのは溶岩型のモンスター、ラーバ。
それを倒してゲットするラーバの魂は「熱を発する」ものを作るためによく使われる素材だ。
コンロだったり、湯沸かしだったり。
今の所無限っぽい感じで熱量を発する便利素材だが、その分ゲットするのも大変だ。
いや、エターナルスレイブ改を手に入れたおれにとってはもう大変じゃない、大変なのは――。
「オリア達は右ッ、ライサたちは左ッ。挟み撃ちにするよ」
「うん!」
「まっかせてー」
ラーバに立ち向かっている女だけの集団だ。
マイヤが率いる彼女らはラーバと戦っている。
「くっ、硬い!」
「どうする姉さん!」
「……オリアはあたいと一緒に足止め。ライサ、あんたは離れたところに穴を掘っとくれ」
「穴?」
「そう、その穴の中に落としてみる」
「わかった!」
ライサとよばれる少女は何人かの女を連れて、離れた場所で落とし穴を掘り始めた。
その間、マイヤは他の女を率いて攻撃を続ける。
「姉さん。あそこにおっきな岩がある」
「――! あっちに誘導する、あんたはいつでも落とせるようにやっといて」
「うん!」
今度はオリアって女が何人か連れて、離れた高台にある大岩のところに向かっていった。
マイヤは戦いつつ、岩が転がるであろうところにラーバを誘導していく。
岩を転がしたり、落とし穴を掘ったり。
マイヤの指揮で、彼女達はあの手この手でラーバに立ち向かった。
☆
「これで良いのかい?」
マイヤがラーバの魂を持ってきた。
激戦の末、おれが手出しすることなく、彼女達はラーバを独力で倒した。
おれは何もしてないが、逆にそれがおれにとって大きな一歩になった。
今までレア素材はおれが出向いて倒して、それで手に入れていた。
激戦したとはいえ、おれ以外の人間が何とかできたのは大きな意味を持つ。
「ああ、これでいい。よく倒せたな」
「これくらいどうということはないさ。それよりも約束は――」
「ちゃんと守る、安心しろ。むしろ」
「むしろ?」
「お前達にはいい武器を作ってやらないといけないなと思う」
「武器をかい?」
驚くマイヤ。
「ああ、そっちで使ってる武器とかぼろぼろだろ」
いうと、マイヤを含めて女達が自分達の武器を見た。
おれが指摘した通り、彼女達の武器はぼろぼろだ。
「作ってやるから、どういう物がいい?」
「なんでもいいのかい?」
マイヤは目を輝かせた。
「ああ」
頷くおれ。
マイヤと女達は視線を交換して、全員が頷いた。
☆
豪腕の巨人・トローイ。
砲台・ニートカを作るために必要な素材、トローイの腕を持つ巨人だ。
マイヤ達がオーダーしたのはそのニートカだ。
どうやら町に設置されたニートカは前から知ってて、それが欲しいと言い出して来た。
なんでも作ってやるといった以上、彼女達を連れてトローイのところに来たと言うわけだ。
ラーバの時と同じように、マイヤの指揮で女達がトローイに立ち向かっている。
そして、苦戦していた。
「姉さん! リアナが!」
「下がって手当てしな! ターニャにタチアナ! それに援護射撃を」
「「はい!」」
苦戦はしてるが、マイヤの指揮で善戦してる。
おれは後方に下がってきたリアナって女に近づいて、万能薬を使ってやった。
リアナのケガが治る。
「あ、ありがとう……」
「また行くのなら気をつけろ、あれと力比べをするのはバカげてる」
「わかりました」
「薬はここに置いておく、適宜使え」
そういって万能薬をおいてった。
マイヤらは前衛、後衛、支援と、全員の役割がしっかりしてる。
おれが置いていった万能薬は支援の女が受け取った。
マイヤの指揮によって、次第にトローイは弱まっていき、やがて倒された。
☆
「なるほど、こうしたかったのか」
できあがった物を見て、おれは納得した。
トローイの腕を使ってニートカを作ったあと、マイヤは更に台車的な物をねだってきた。
特別な素材なしでそれを作って、ニートカを上に載せる。
移動砲台のいっちょ上がりだ。
「ああ、町にあるあれを見たときから思ってたのさ。これがあればってね」
「そうか」
移動ニートカを囲んで、わいわい言い合ってる女達。
それを見て、マイヤに聞く。
「これ、あといくつ必要だ?」
「え?」
「移動砲台、あと何門あればいい」
「そ、そうだね」
マイヤはちらっと仲間の女達をみて。
「四……あればありがたい」
「わかった」
おれはDORECAを取り出して、ニートカの魔法陣を四つ作った。
エターナルスレイブ改を抜く。
ユーリアを取り込んだままの、光の奴隷剣。
「ちょっと待ってろ」
と言って、矢印にむかって歩き出す。
マイヤ達の戦いをみて、ちょっとだけ火が点いた。
トローイを探す、後ろからマイヤ達がついてきた。
彼女達を引き連れてしばらく歩いてると、丁度良い具合にトローイの集団と出くわした。
数は五、ニートカを作ってもまだ余る数だ。
「ユーリア」
(はい)
頭の中で返事をしてくるユーリア。
おれは背後をちらっと見て、いった。
「良いところを見せる、力を貸せ」
(わかりました)
トローイに向かって駆け出す、先頭の一体が豪腕をふるって殴ってきた。
魔力を込めた奴隷剣で撃ち合い――はじき飛ばす。
おれ対トローイ五体。
戦いの火ぶたはきって落とされ――すぐに終わったのだった。




