家をたてよう
マドウェイの家を出て、リーシャと向き合ってメニューウインドウを開く。
ウインドウの下にある作れるものリストを見る。
その中で一つ引っかかるものがあった。
さっきまで確実になかったものだ。
「木の家、か」
「家ですか?」
「ああ、家だ。……これを作るか、何をするにしても、まずは住むところがないと始まらないしな」
「はい!」
大きく頷くリーシャ。
一応、リストを全部確認した。家ってつくのはこの「木の家」だけみたいだ。
それに触って、マドウェイの家から離れたところの地面に触る。
万能薬の時と同じように魔法陣がでて、矢印が三つ飛び出した。
魔力は2500消費された。
魔法陣をいったん放置して、必要素材を確認する。
木の家。アブノイ草×50。木片×300。ブッシノ石×10。
「アブノイ草って……さっき万能薬を作ったときに使ったヤツか。……ああ、一度使った素材に関わりのあるヤツが解禁される仕組みかな?」
なんとなくそう思った。
ゲームによくある仕組みだから、ぱっとそれを連想した。
おれはちょっと考えて、更に魔力2500はらって、木の家の魔法陣をもう一個作った。
横並びの二つの魔法陣を見て、リーシャにいう。
「手分けしよう。リーシャはさっきのアブノイ草を100個集めてきて。片方50ずつ」
「わかりました」
頷くリーシャ、矢印の一本に沿って、さっきの場所に向かっていく。
おれは反対方向を指してる矢印の方にいった。
ちょっと歩くと、そこに廃材の山があった。
木材が山ほど積み上げられてるところで、その木材が光っている。
それをもって、魔法陣のところにもどって、その中におく。
木材は魔法陣の中に吸い込まれる。木材をさしてた矢印の光がよわまる。
もう一回運んでくる、入れると、更に光が弱まる。
三回目、並べた木材が余った、一本だけ吸い込まれず魔法陣の上に残った。
そして矢印が消える。
「足りたって事か」
多分そうだろうな。
余った分の木材をもう片方の魔法陣に投入、そして更に木材を運んでくる。
同じように2往復して、木材が全部足りた。
その間、リーシャが集めてるアブノイ草も片方はたりたけど。
「あれ? 矢印のさす方向が変わってないか?」
「はい、さっきのところは全部取り尽くして、大分離れたところにまたあって、そこを指してます」
「なるほど、一番近くにあるところをさしてるのか」
「そうだと思います」
「そうか、遠いらしいけど、頼むぞ」
「はい!」
リーシャは更にアブノイ草を取りに行った。
おれは残ったもう一つの素材、ブシノ石を取りにいく。
矢印が指す方向に向かって歩いて行く。
すると、崖にやってきた。
「こっちであってるよな」
まわりをきょろきょろ見回す、ついでに崖の下をのぞき込む。
「あんなところに」
2メートルくらいしたにある出っ張りが光っていた。
いくつかの石があって、それが光ってる。
あれがブシノ石か……難しいな。
ぶっちゃけ……ちょっと怖い。
崖だから、キンタマがヒュンって縮み上がる。
まわりをもう一回見回す、ここ以外に石は――光ってるところはない。
「しかたない、やるか」
そういって、出っ張りに降りようとした。
慎重に、慎重にゆっくり降りる。
「ふう……」
何とか出っ張りに降り立った。
たしか10個必要だったっけ。それが二つだから、20個か。
石を拾って、崖のうえに投げた。
きっちり20個投げた後、崖の上に上った。
「ふぅ……」
疲れた。特に何かあったわけじゃないけど、とにかく精神的に疲れた。
石を拾って、元の場所に戻る。
リーシャがもう戻ってきていた。アブノイ草の矢印が消えてるから、そっちは揃ったみたいだ。
「ご主人様、大丈夫ですか? なんか顔色悪いですけど……それに汗がびっしょり」
「大丈夫、ちょっと疲れただけだ」
「そうですか」
リーシャはほっとした。
そんな彼女をおいて、ブシノ石を魔法陣に入れる。
片方に10個ずつ。
すると矢印が消えて、魔法陣が光り出した。
万能薬が出来るときの現象と一緒だ。
そして、家ができた。
広さそこそこ、一人が暮らす程度の広さの木の家ができた。
コテージみたいな家だ。
「あの程度の素材でこんなのが出来るのか」
なんとなくつぶやいた。質量保存の法則もあったもんじゃないけど、魔力を2500と結構使ってるから、それが大きいんだろう。
中に入ってみる、中は結構ちゃんとしてる。
普通に住むにはこれで充分って感じだ。もちろん家具とか色々必要だけど。
おれは外に出て、リーシャに言った。
「リーシャはどっちがいい?」
「え?」
「どっちの家がいい? 同じだろうけど、好きなの選んでいいぞ」
「わ、わたしにですか? マドウェイさんのために作ったのじゃないんですか」
「うん? ああ、そういえば……あっちにそのうち作ろう。こっちはお前のだ」
「ご主人様……ありがとうございます」
リーシャが涙を流した。
話の流れ的に、あきらかにうれし涙だ。
涙がポトッと地面に落ちた瞬間。
――魔力が20000チャージされました。