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超パワーファイター

 ヴァレリヤが帰ったあと、部屋の中はおれと小さな奴隷の二人になった。


 奴隷は立ったまま、おれをじっと見つめている。


 リーシャやミラに比べてかなり小柄で、表情も乏しい感じがする。


「とりあえず、お前の名前は?」


「ユーリア」


 無愛想な声で答えた。


「ユーリアか、その見た目、お前もエターナルスレイブなんだな」


「そう」


「そうか、じゃあこれからよろしくな」


「はい」


 フラットな口調で言われてた。


 沈黙が流れた。ユーリアと見つめあった。


 なんとなく沈黙がつらかった。おれは立ち上がって、部屋を出た。


 舘の中を歩いて、別の部屋に入った。


 そこに大量の紙があった。


 このリベックの町で、おれに何かしてほしい、物を作ってほしい直してほしいの要望書だ。


 つまりは領主としての仕事だ。


 それを何枚かとって、見つめる。


「どれからやろうかな」


 つぶやく。


 一枚目は町の北側に住んでる町人からのもので、壁が前の戦闘で壊れたから直してくれというものだ。


 もう一枚は慢性的な飲み水不足を何とかしてくれっていうやつ。


 更にもう一枚とってみると、今度は子供が病気だから何とかしてくれって言うやつ。


 壊れたものも、飲料水も、子供の病気も。


 全部さくっといってさくっと片付けられるものだけど、あまりにもごちゃごちゃしすぎてどこから手をつけたらいいのかわからない。


「うーん」


 唸ってると、横からユーリアが立ってきた。


「見せて」


「うん? ああ」


 おれは紙をユーリアに渡した。


 受け取ったユーリアはそれを見つめて、残った紙も手にとって見つめた。


「ご主人様は」


「うん?」


「なんでもできるって聞いた」


「ああ」


「本当に?」


「ああ、なんでもだ。厳密に言えば魔力が続く限りなんでもできるが正しいけどな」


「そう」


 ユーリアは頷いたあと、紙を仕分けし出した。


 一枚ずつ読んで、それを何かの基準にして分けていく。


 それが終わって、おれを見上げてくる。


「はい」


「うん?」


「やりやすいように分類した」


 と言って、分類した紙の束を一つ渡してくる。


 それを受け取って、ペラペラめくる。別の束もペラペラめくってみる。


「おお、よく分類されてるじゃないか」


「これでやれば、効率よくできる」


「そうか……そういえば500人分の食料も用意しないといけなかったな。それを魔法で作るんだが、どこに入れるべきだ?」


「それならここ」


 ユーリアは別の紙の束を指した。


 おれはもってるヤツをおいて、そっちを手に取った。


「じゃあこっちからやろう」


「そう」


 ユーリアは無愛想のまま頷いた。


 うーん、さすがに魔力はチャージされないか。


     ☆


 ユーリアを連れて、町の中を飛び回って、領主の仕事をこなしていく。


 彼女があらかじめ分類してくれたおかげで、効率よくこなすことができた。


「領主様ー。ちょいとお願いがあるんだけど」


 新しいお願いも、ユーリアが話を聞いて、分類してくれた。


 リーシャとミラとでバタバタやってたのとは大違いだった。


     ☆


 夕方、舘に戻ってきた。


「メニューオープン」


--------------------------

アキト

種別:ゴールドカード

魔力値:392,567

アイテム作成数:51,922

奴隷数:3

--------------------------


 DORECAを出して確認する。


 作成数が一気に増えた、これはヴァレリヤの援助のためにプシニーをまとめて生産したからふくれあがった。


 そして、魔力値も大分へった。


 一時はカードの上限に引っかかってカンストしてたのが大分減った。


 減った魔力は回復させないとな。と、おれはユーリアを見た。


「お疲れ」


「別に疲れてない」


 やっぱり無愛想な返事だ。


「いや結構助かった。ユーリアのおかげだ」


「そう」


「何か礼をしたい。なんかほしいものはないか?」


「別に」


 素っ気なく答えるユーリア。


 頭を撫でてみた。


 光のドレスを作ってやった。


 魔力をかなり払ってスイーツも色々作ってやった。


 ……逆張りでおでこにチョップしてみた。


 色々やってみたけど、魔力は全然チャージされない。


 うーむ、手ごわい。


「ご主人様、ただいま戻りました」


 リーシャが戻ってきた。別件で働かせていた彼女は、大量に作ってあまったスイーツを物欲しそうに見つめた。


「……食って良いぞ」


「ありがとうございます!」


 ――魔力を3,000チャージしました。


 うーむ、リーシャは素直だな。


 赤字ではあるけど、スイーツを与えればこれくらい魔力が上がるってのがわかる。


 それにひきかえ、ユーリアは相変わらず素っ気ないままだ。


 何をすれば魔力が上がるんだろうな。


「あの……ご主人様」


「なんだ」


「その……こんなことを聞くなんて、はしたない奴隷だと思わないでくださいね」


「うん?」


「その、首輪の事なんですけど」


「首輪? ああこれか」


 ポケットから首輪を取り出す、罰としていったん没収した首輪だ。そうかこれが気になるのか。


 罰は主にミラにするものだったし……どっちかっていうとそれすらも「奴隷を愛でる行為」だから、返すのは別にいんだがな。


 さてどっちがいいかな、と思ったその時。


 ――ガタっ。って音がした。


 音の方を見た。ユーリアが目を見開かせてこっち見つめている。


 出会ってからはじめて、はっきりとした表情をみせた。


 その視線は……首輪に注がれている。


 ほしいのか首輪……いやほしいんだろうな。


 なんだって奴隷、なんだってエターナルスレイブだ。


 首輪をほしがって当然。


「バカだなおれは、もっと早く気づけ」


「え?」


 自嘲気味につぶやくおれ、不思議がるリーシャ。


「メニューオープン。ユーリア、お前は何色がいい?」


「え?」


「首輪、石の色は選ばせてやるぞ」


「――っ! ほ、本当?」


「ああ」


「じゃ、じゃあ白を」


「よし」


 魔力を払って、首輪の魔法陣を作る。


「手伝います!」


「待て」


 癖で動き出すリーシャを呼び止める。


「どうしたんですかご主人様」


「おれが素材を集める」


「ご主人様が?」


「ああ、自分の奴隷の首輪だ、自分で作る」


「――はい!」


 リーシャが大きく頷いた。


 ――魔力が1,000チャージされました。


「そのまま待ってろ」


「はい」


 子供みたいなワクワク顔で、ものすごく期待するユーリア。


 他はほとんど無反応なユーリアだったけど、一発が大きいタイプらしい。


 ――魔力が2,000,000チャージされました。


 首輪を渡した瞬間、彼女はものすごく可愛い笑顔をしたのだった。

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