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さかなとつりざお

 逃げていく男達を追いかけた。


 目で見て確認できる程度の距離を保ちつつ、そのあとを追いかけた。


 マラートの居場所がわからないから、逃げる連中に案内してもらおうって考えだ。


「はあ……はあ……」


 途中でリーシャの息が上がった。足元がふらついて速度が落ちる。


「交代だ」


 そう言って、エターナルスレイブ改にリーシャを入れて、ミラを出した。


 ミラを連れてあとを追った。しばらくするとミラも息が上がってきたから、剣の中で休んで回復したリーシャと入れ替えた。


 それを繰り返してあとを追った。


(ありがとうございます、ご主人様)


「ご迷惑かけてごめんなさい」


 ――魔力を3000チャージしました。


 ――魔力を5000チャージしました。


「気にするな」


 魔力をチャージしつつ追いかけ続けた。


 すると、目的の場所にたどりついたようだ。


 町らしきところにやってきて、マルコヴィチの部下がそこに駆け込んだ。


 町自体は特に目立った特徴はないが、真ん中にある屋敷は町の外からでも確認出来る程でっかいものだった。


 というか。


「……金色?」


「金色ですねご主人様」


(……趣味、悪いです)


 リーシャにもミラにも大不評な、金色ででっかい建物。


 あそこにマラートがいるのか?


 そう思って町に近づいていくと、中からぞろぞろと武装して兵士が出てきた。


「行くぞ」


「はい!」(はい!)


 エターナルスレイブ改を強く握り締めて、敵兵に真っ向から向かっていった。


 向こうは問答無用で攻撃してきた。


 長い槍を持った敵兵が隊列を揃えて、槍衾を作ってきた。


 その状態のまま接近し――一気についてきた。


「ふっ!」


 炎の剣で槍の先端をまとめてなぎ払った。返す刀で敵兵の一人を切り伏せると、次の槍衾が迫ってきた。


 とっさに刀身で受け止めた。足が止まったところに、街の中から矢が雨の様に飛んできた。


 魔力を注ぎ、火力を上げて切っ先と矢をまとめて払って、いったん飛び下がる。


 相手の数を数えた。外に出ていて槍を構える連中だけでもざっと300は下らない。矢を射かけてくる連中もいれると更に膨らみ上がる。


「数が多いな」


(どうしますかご主人様)


「やるだけだ。ミラはおれのそばから離れるなよ。途中で入れ替えもあるからな」


「はい!」


 頷くミラを引き連れて戦闘を再開した。


 槍衾の威力はもう体験した。そこそこ手ごわいが、知ってればどうと言うことはない。


 魔力を惜しげもなく込めて、炎の刀身の火力を上げる。


 ミラを引き連れて、一点突破を計った。


 飛んできた槍と矢を払って、目の前に立った敵兵を容赦なく切り捨てていく。


 斬って、どかして、前に進む。


 一点にかけての中央突破で突き進んでいった。


「な、なんだこいつは」


「あんな武器見た事ないぞ」


「ひぃいい」


 ある程度斬っていくと敵兵の戦意が落ち始めて、迫ると腰砕けになったり逃げ出したりするのもいた。


 そうして道を切り開き、町の中に入った。


 中に入ってしまうと圧力が更に減った。


「ご、ご主人様。ごめんなさい」


 ミラが疲れたようだから、リーシャと入れ替えて更に進む。


 金色に輝く巨大な建物に向かって突き進む。


「ぬううううん!」


 ふと、横合いからプレッシャーが迫ってきた。


 空気を引き裂いて飛んでくる何かを水の刀身で受け止める。


「ぐっ!」


 とてつもないパワーだった。受け止めたので無傷だが、衝撃で体ごとすっ飛ばされる。


「ご主人様」


 かけよってくるリーシャ。


 着地して、攻撃が飛んできた方向を見た。


 そこに、馬にのった大男がいた。


 サイズは規格外の一言だった。


 二足歩行の馬よりも一回り大きな巨体で、右手に柄のついた刀――青竜刀のような大きな刀をもっている。


 そいつは凶悪な笑みを口に浮かべながら、おれに向かってきた。


「お前は?」


 おれは冷静に聞き返す。


「おれ様をしらんとは、どこのモグリだ?」


「まさか」


「そうだ、このおれ様がマラート様だ」


「お前が……マラートか」


「様をつけろ!」


 水平に斬撃が飛んできた。


 耳が痛くなるほどの風切り音が唸りをあげる。


「――ふん!」


 魔力を多めに込めて、水の刀身でうちあう。


 パァン! 破裂音が辺り一帯に響く。


「ぬうう!」


「……ふぅ」


 おれは一歩下がって、息を吐いた。


 一方のマラートは乗ってる馬がよろめく。数歩下がったあと、馬が崩れ落ちた。


 マラートは倒れる前に飛んで、地面に自分の足で立った。


 そいつの顔色が変わった。


「なんだ、お前は」


 警戒の色が強くなった。


 その間に兵士達が追いついてきて、まわりを取り囲んだ。


 しかし兵士達はマラート以上に驚いていた。


「マラート様が押されてる……?」


「ぬうううん!」


 青竜刀が唸った。発言した兵士が縦に真っ二つにされた。


「だあああれがああ、押されるって?」


 マラートは部下の兵士を恫喝した。


「お前、名前は」


「アキト」


「話は聞いてる。ビースク、それにマガタンの二つの町がほしいみたいだな」


「別に町がほしいってわけじゃない」


「なんだと?」


「お前に虐げられてるのが気にくわないだけだ」


「虐げる? おいおいそれは見当違いだ」


 マラートは冷笑した。


「おれ様は、この力でそいつらを守ってきたんだ。守った結果に対して報酬をもらってるだけだ」


「その報酬が法外だ」


「あれでも足りないくらいだぜ? なんだってこのおれ様が直々に守ってやってるんだからな。もっともらってもおかしくないくらいだ」


「それでマガタンが破綻しかけたぞ」


「知らんなあそんなことは。何もしないで運んで来たエサをむさぼる怠け者が悪い」


「……ゲスが」


 エターナルスレイブ改を握り締めて再び飛びかかっていく。


 魔力を込めて斬りかかる、水の剣はマラートを徐々に押していった。


 力で押されたマラートは精神面で攻撃をしかけて来る。


「ゲスなのは連中だ」


「なに?」


「連中は怠け者の寄生虫だ。運んで来たエサをむさぼるだけで、自分からは何もしない。お前が単身でここでいるのが何よりの証拠じゃあないのか?」


「……」


「お前が何を思ってここにきてるのかはしらんが、連中はエサさえもらえれば相手はだれだっていいんだよ」


「そ――」


「そんな事ないです!」


 ぱあ、と光って、ミラがエターナルスレイブ改から飛び出してきた。


 いきなり剣から女が飛び出してきてマラートは驚愕する。


 その間、ミラがまくし立てる。


「ご主人様がしてることはそっちとは違います。全然、ぜんっぜーん、違います!」


「はい、その通りです」


 リーシャもそれに同調した。


「ご主人様はエサを与えるだけではありません。確かに当面のエサを与えました、しかし同時にその先の事も考えてます。魚を与えるだけなのがご主人様じゃありません、魚を与えたあと、釣り竿も一緒に与えるのがご主人様です」


「そうだそうだ。釣り竿もいっぱいおいてきたもん」


 リーシャとミラ、二人は入れ替わり立ち替わりおれの事を擁護した。


「はっ、とんだ無駄な努力だなああ。あの連中が――」


「マラート様!」


 兵士の一人が話に割り込む。


 マラートの前に飛び込んできたが、激高したマラートに蹴っ飛ばされた。


 蹴っ飛ばしたあとに、マラートが聞く。


「なんだ!」


「て、敵襲です!」


「敵襲だああ?」


「はい! 東と南の二方向から武器を持った連中が迫ってきて、町の外で交戦中です!」


「どこの奴らだ!」


「び、ビースクとマガタンの連中です」


「なにいいいい!」


 顔を真っ赤にして、青筋を浮かべて激怒するマラート。


 鬼のような形相でおれを睨んだ。


「てめえ……」


「一つ教えてやる」


 マラートに比べて、おれはかなり冷静だった。


「武器は作り方だけ教えた。おれがここに来る前、マガタンの武器はまだ未完成だった」


 魔法陣のままだったはずだ。


「それを完成させて、手にして、立ち上がってきた。それでもまだ寄生虫か?」


「ばかな! そんなばかな! 連中にそんな根性があるわけが!」


「しかし現に来てる」


「――っ!」


 マラートは激怒し、青竜刀を大上段から振ってきた。


 とっさに飛び下がる。青竜刀が地面にあたってクレーターを生み出す。


 リーシャをエターナルスレイブ改に取り込んで、マラートに立ち向かう。


「底が見えたぞ、マラート」


「ほざけええええ!」


 更に大上段から振り下ろされる青竜刀、さっきのに勝るとも劣らない威力。


「ふっ!」


 炎の刀身(リーシャ)で払った。燃え盛る刀身と撃ち合って、青竜刀はバターのように溶けて、真っ二つに折れた。


「なっ――」


 驚愕するマラートに、おれはさらに迫る。


「おわりだ」


「うおおおおお!」


 最後のあがきをするマラートを縦に真っ二つにした。


 真っ二つに裂かれ、崩れ落ちるマラート。


 それを目にしたそいつの部下が蜘蛛の子を散らすかのごとく逃げだしたた。


 なだれ込んできたビースクとマガタンの町民を前にして、マラートの兵は総崩れとなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、敵には容赦ないよね。 想像すると結構グロい。
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