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無限の力

「10000だって?」


 脳内に聞こえた声、DORECAにチャージされたのは10000という数字だった。


 確か、聖夜は100チャージって言ってたっけ。


 何もしてないのに、100倍の魔力が入った。


 これは……どういう事だ?


『最初の魔力をチャージ出来ましたね』


「あ、ああ」


『このように、あなたが奴隷にした事で相応の魔力がチャージされます』


 イリヤはおれの疑問に反応することなく、事務的な説明をした。


 いや、何もしてないんだけど? 強いていえば握手しただけなんだけど?


 それを聞こうとしたけど、イリヤは無視して話を進めた。


『どうか、この世界を再生してください』


 直後、おれとリーシャの体が光に包まれた。


 目の前が光る、まぶしくて目を開けてられない。


『どうか……』


 イリヤの声が遠くなる。


 しばらくして光が収まった。


 目を開ける。そこは雲の上じゃなくて荒野だった。


 何もない、見渡す限りの荒野。


 おれの横でリーシャが不安そうな顔できょろきょろしてた。


「もう放り出されたのか。いやさっきの、聖夜と同じ流れだけど」


 そういえばとまわりをみた、聖夜とその奴隷はいない。


 足跡とかそういう痕跡もない、多分違うところに飛ばされたんだろうな。


「ご主人様」


 声を上げるリーシャ、彼女はおれを見つめながら反対側を指した。


 指が指す方向を見た。そこに一軒の家っぽいものがあった。


 草で出来た円錐のような家、縄文時代の竪穴式住居っぽい家だ。


 まわりは何もなくて、家はその一軒だけ。


「家っぽいな」


「はい」


「ってことは人が住んでるのかな。行ってみるか」


「はい」


 おれとリーシャが並んでその家に向かっていく。


 奴隷だからか、リーシャはおれの一歩後ろを歩いてる。


 家の前について、呼びかけた。


「ごめんくださーい、誰かいませんか?」


「だれだ……?」


 返事が聞こえた。かなり弱々しい声だ。


「ごほっ、ごほっ。ごめん、今起き上がれないんだ……」


 おれとリーシャは視線を交換して、中に入った。


 がらんとした部屋の中で、男が一人寝そべっていた。


 男は肘をついて起き上がって、おれ達をみた。


「人間……? それにエターナルスレイブか。久しぶりに見たな……」


 男はそういって、更に咳をした。


 発作的な、見てるだけでもつらそうな咳だ。


「なんか病気なのか?」


「ああ、ちょっと前から――ごほっ! ごほっ!」


「医者には診せたのか?」


「医者?」


 男は力なく笑う。


「そんなもの、滅びかけたこの世界に存在するものか」


「むっ……」


 男は肩をすくめて、物事をあきらめたような力のない笑顔を浮かべる。


 見ててつらい。


「ごほっ! ごほっごほっ!」


 男は更に咳をした。さっき以上の盛大な咳をして、そのまま気を失って、後ろ向きに倒れてしまった。


 みた感じかなり重病っぽいな。


 なんとかしてやりたいけど、医者じゃないしな、おれ。


 そんなおれにリーシャがおずおず言ってきた。


「あの……ご主人様。薬を作って差し上げればいいのではありませんか?」


「薬?」


「はい、ご主人様はものを作れますから……」


「ああ、これか」


 言われて、おれはDORECAの事を思い出した。


 取り出して、それをまじまじ見つめる。


 確かこれでものを作れるって話だっけ。


「メニューオープン」


 イリヤの言ってた事を思いだして、呪文らしきものを唱えた。


 すると目の前に文字が広がった。


 まるでパソコンのようなウィンドウの中に、文字がずらっと並んでる。


--------------------------

アキト

種別:ノーマルカード

魔力値:10000

アイテム作成数:0

奴隷数:1

--------------------------


 なんだかステータスっぽいものが並んでいる。


 そしてその下にずらっと固有名詞が並んでる。


 その中に「万能薬 300」というのを見つけた。


「この万能薬ってのでいいのかな……やってみよう」


 試しに触ってみた。


 触った指先が光った。


「それで地面を触ってみて下さい」


 リーシャが言った、言われた通り地面を触った。


 触ったところに光が乗り移った。光は広がって、魔法陣になった。


 魔法陣から同じ色の光の矢印が出て、明後日の方向を指していた。


 そして魔力は300減って、9700になった。


「そこに必要な素材をいれれば道具が完成します」


「その素材はなんだ――ああ、ここに書いてあるか」


 開いたメニューの中にそれがあった。直前に触った万能薬からポップアップが出てきて、「アブノイ草×5」って表示された。


「このアブノイ草ってのを5個使えばいいんだな? ……ああ、この矢印はもしかして素材がある方向を指してるのか」


「はい」


「よし、じゃあ取りに行こうか」


 家をでて矢印が指していた方向に向かって歩いて行く。


 100メートルくらい歩くと、地面が光ってるのが見えた。


 荒野の中で、珍しく草が生えているところ。その草が光っている。


 魔法陣と同じ色の光だ。


「これか」


「多分そうです」


「じゃあとっていこう。5個だったな」


 結構長い草を必要な数分むしって、それをもって男の家に戻る。


 家の中で光っている魔法陣の中にアブノイ草を入れた。


 魔法陣の光がパアって光って、草を包み込む。


 直後、草が瓶になった。液体の入った、ガラスの小瓶。


「これが万能薬か。……とりあえず飲ませてみるか」


 気を失ってる男の口をあけて、万能薬を流し込む。


 しばらく待つと、男が目覚めた。


「ああすまん、また気を失ってたみたいだ」


「それはいいけど、体の調子はどうなんだ?」


「調子? むっ」


 男は自分の手をみた、にぎにぎした。


「これは……治ってる?」


 男は立ち上がって、手足を振り回した。


「治ってる、治ってるぞ! あれだけしんどかったのが嘘のようになくなってるぞ」


「よかったな」


「これは一体どういうことなんだ?」


「薬を作ってのませた」


「薬? あんた医者なのか?」


「違う――いろんなものを魔法で作れるだけだ」


 今の事でちょっとだけ自信を持てたおれはそう答えた。


 男が驚く。


「魔法で? ものを?」


「ああ」


「……なんだかわからないけど、とにかくありがとう!」


「ああ」


「おれの名前はマドウェイ、あんたは」


「アキトだ」


「そうか。ありがとうアキト! 本当にありがとう!」


 マドウェイに思いっきり感謝された。


 感謝か。


 おれは後ろにいるリーシャの方を向いた。


「ありがとうリーシャ」


「えっ?」


「お前のアドバイスのおかげだ」


「そんな……わたしは奴隷として当たり前の事をしただけです」


「それでもありがとう。お前がいてくれてよかった」


「ご主人様……」


 リーシャははにかみ、微笑んだ。


 ――魔力を3000チャージしました。


 リーシャが微笑んだ後、また脳内に声が聞こえた。今度は3000がチャージされて12700になった。


 数字はともかく、最初のチャージと似たような展開だ。


 もしかして……笑顔でチャージされたのか?

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