後悔
リーシャと一緒に、休暇を取るために海沿いで作ったリゾート。
それをまずDORECAでロードした。
セーブ&ロードの機能で、まずは前作ったものをそのままだした。
だしたものは当然地形の影響でぐっちゃぐちゃだから、ホルキナに協力してもらって、細かい調整をした。
「リゾートってなに?」
「遊ぶための場所だ」
「あそぶかあ」
ホルキナは遠い目をした。
「遊ぶって、考えた事もなかったなあ」
「ないのか? 意外だな。他のリグレットならともかく、お前は違うんだとおもってた」
「あたし、こう見えて昔はすごく真面目だったんだよ? エターナルスレイブとしては」
「はいはい」
ホルキナの戯れ言を適当に受け流した。
ホルキナはおれの奴隷じゃないから、DORECAにまつわる能力の数々を使えない。
だからちょっとした手伝いしかできないんだが、それでも手を借りて、準備はあっという間に整った。
「次は……リグレットって今何人いる? この里にいる数でいい」
「100人ちょいかな?」
「じゃあ余裕をもって120作っとこう」
DORECAを取り出して、ドレスを作った。
教えてもらった数字に言葉通り余裕を持たせて、120着作った。
「ドレス?」
「これをみんなに着せてここに案内するんだ」
「なんか分かってきた、面白いかもねそれ」
☆
ホルキナと里を回った。
DORECAも奴隷カードももてないホルキナは持てないから、ドレスは全部おれが持った。
リグレットと会う度に、ホルキナはドレスを受け取って無理矢理押しつけた。
ほとんどは受け取っても何もしないから、ホルキナが無理矢理着てる服を脱がせて、ドレスに着替えさせた。
リグレット達は実質食っちゃ寝してるだけなのに、ほとんどがかなりのスタイルだった。
そうして全員にドレスを押しつけて、ホテルに連れてくる。
ホテルの中の大広間、ブッフェスタイルにしたパーティー会場。
そこにリグレット達をつれて来て、パーティーをしようとした。
リーシャはこれで喜んでくれた。
控えめだけど、これで喜んでくれた。
リグレット達からは生きようとする気力が感じられない。
だからまずは生きる気力を出すためにこうしてパーティーをひらいて、全員つれて来た。
のだが。
全員が乗ってくれなくて、パーティー会場でも無気力なままだった。
きらびやかなドレスを着た褐色の肌の美女達が、パーティー会場で地べたに座ったり壁にもたれ掛かったり。
全員が無気力でただいるだけ――という。
世にも珍しい光景がそこにあった。
☆
「失敗したようね」
ホテルから離れて、夜風に当たるおれ。
そのおれの元に邪神がやってきた。
彼女は薄い笑いを浮かべて、おれの横に立った。
「そんな事はない」
「悲しい子。この世界にやってきて初めての失敗にうちひしがれてるのね」
「……」
初めての失敗、か。
そうかも知れない。
女神に召喚されて、この世界に来てからは順風満帆といってよかった。
何をやっても成功して、DORECAと奴隷の笑顔で切り抜ける事ができた。
それがここに来ての失敗。
リグレット達は何も反応しなかった。
会場に無理矢理連れ出したは良いけど、誰一人として笑ってくれなかった。
喜んでくれなかった。
それが少し……ショックだった。
「やり方間違ったのかな」
「ええ、根本的に」
「何が悪い」
「やらしい子、答えがそんなにほしいの?」
「ああ、ほしい」
「自分で考えようとする気概は?」
「そんなものはない」
「……」
邪神はおれを見下した。
冷ややかな目でおれをみた。
その目は正直こたえるけど……甘んじて受け入れる。
「彼女達はエターナルスレイブだった。あの究極に愛らしい生き物たちだったんだ。おれは知ってるエターナルスレイブが主人を得たときにどれだけ幸せな顔をするのか知ってる。リグレット達も同じように笑えるはずだ。スベトラーナは笑った。それを少しでも取り戻させるなら、おれの気概なんて糞食らえだ」
「……不思議な子」
何故か邪神の顔が変わった。
冷ややかな目が驚きに変わって、その後柔らかい笑みに更に変わる。
「いいわ、一つだけ教えてあげる」
「一つじゃなくて全部おしえてくれ」
「せっかちな子。まずは一つよ」
「わかった」
おれは頷きつつ、まっすぐ邪神を見つめる。
「もう知ってるかもしれないけど、リグレットは古い言葉で『後悔』という意味」
「後悔……リグレット」
「その言葉の意味をよく考えて」
邪神はそういって、静かに立ち去った。
後悔、リグレット、エターナルスレイブ、永遠の奴隷。
「――っ!」
瞬間、白い雷が脳天を撃ち抜いた。
もしかして――とおれは思ったのだった。




