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女王とリゾート

 リグレットの里、女王の部屋。

 足を踏み入れたおれはぎょっとした。


 というかぞっとした。

 里全体に重い空気が漂っている、それはリグレットたちのくらい空気がそうさせている。


 この部屋もそうなってる。

 ただし数倍……いや数十倍……いや。

 数百枚重く、心に突き刺さる。


 その中心に一人の女がいた。

 どんよりとした瞳をしたリグレット。


「やっほージェニャニャ、アキトちゃんをつれて来たよ」

「ジェニャニャ?」

「うん、女王だよ」

「女王……ジェニャニャ……」


 ふざけた名前だ……って一瞬思った。

 ホルキナがおれへの呼び方をつなげていわなかったらそう思っただろう。


 アキトがアキトちゃんで、そういえばスベトラーナがスベっちだ。

 なら、ジェニャニャもその通りのはずがない。


 女王だが――多分その通りのはずがない。

 ホルキナ的に。


 それは正解だった。


「女王、ジェーニャよ」


 ジェーニャが名乗った。

 彼女が喋った途端室温が十度近く下がったような気がした。


 実際は多分下がってない、そう感じたのは一瞬だけ。

 それが余計に恐ろしく感じた。


「可愛い子。なにも変わってないのね」


 隣の邪神がそう言った。

 邪神はリグレットの神、だからジェーニャの事もしってて、それで変わってないって言ってるんだろう。


 それはいいんだけど。


「可愛いか?」

「可愛いじゃない」

「ふむ」


 邪神のそれは額面通りに受け取っちゃダメなのは分かってるけど、今回のはいつにもまして意味不明だった。


 意味不明だったから、とりあえずスルーした。


「おれはアキトだ」

「人間の王。何をしに来た」

「街作りにきた。リグレットたちが快適に暮らせる街を作りに」

「勝手になさい」


 ジェーニャはそう言ったきり、口を閉ざしてしまった。

 まるでこれ以上話す事はないとばかりに、会話を一方的に打ち切った。


 とりつく島もないとはこのことか、さてどうするべきか。

 と、考えていると。


「よし、ジェニャニャの許しもでたしいこっか」


 ホルキナがおれの背中を押した。

 外にでてから、彼女に聞いた。


「いいのかいまので?」

「うん、だってジェニャニャが好きにしてっていったじゃん? あたしもあたしの国も好きにして!」

「いやそういう意味じゃないだろ」

「いいのいいの、それよりもなにを、何を作るの? あたしは何をすればいい?」

「ふむ」


 おれはホルキナをみた。

 最初にあったときから思ったことなんだが。


「お前がおれの奴隷だったら面白かったな」

「えー、ここまできてあたしを口説くの? アキトちゃん意外性の男だね!」

「ちがうわ!」


 口説くっていうか、いや口説くに聞こえるのか。

 聞こえたかもしれないけど、そうじゃない。


 おれの力の元、物作りの魔力は奴隷達の笑顔から来てる。

 エターナルスレイブの奴隷達が心の底から喜んで、笑う度におれに魔力が入る。


 コロコロと笑う、底抜けに陽気なホルキナだったら面白いな、と思ったのだ。


「ふっ」


 邪神がいきなり鼻で笑った。


「どうした」

「何でもないわ」


 なんかあるっていってるのも同然の口調だけど、彼女がそう言うのならとりあえずはスルーする事にした。


     ☆


 リグレットの里の開発をはじめようとした。


 まずは里をぐるっと一周した。

 すると何よりもまず目についたのが、リグレットたちの無気力さ。

 ジェーニャと同じ、いやジェーニャ以上に。

 ここにいるリグレット達はだらっとしていた。


 あっちこっちにリグレットの姿が見えるが、何かしている様子はない。

 ただ生きてるだけ。


 あっちこっちにいて、ぼんやりとしてて、たまに動いたと思ったら貯蔵庫にいってプシニーを取って食べて、またぼんやりとする。


 生きる屍。

 全員がそうなってる里、というイメージを受けた。


 ホルキナとスベトラーナが明るさツートップ、というのも分かる気がした。


 あの時は――いや今もそうだけど。

 要求された時、プシニーを送ったのは失敗だった、そう思った。


     ☆


「まっ、だから助けを頼んだんだけどね。見ての通りみんなあれじゃん? 生産性もへったくれもないんだよ」


 ホルキナに手伝ってもらいながら、リグレットの里の話をした。

 ちなみに邪神はちょっと離れたところでのんびり見てるだけ。


「みんなアレだね、生きる目的がないからなんだね」

「生きる目的」


「リグレットってもともとエターナルスレイブじゃん? で、ご主人様が出来ないままこうなったじゃん?」

「ああ……」


「童貞のまま死んだ後に生まれ変わって、前世童貞だったから今回も童貞だよっていわれたようなもんだよ」

「そのたとえはどうかと思う」


「じゃあハゲのまま死んだ後に生まれ変わって、前世ハゲだったから今回もハゲるよって宣言された様なもんだよ」

「やめてやれよ鬼悪魔か!」


 髪の話はシャレにならないんだよ!


「まっ、それだけつらいんだよ、みんな」

「そうか」

「で、今何してんのこれ?」

「ああ、パーティーだ」

「パーティー?」

「というかリゾートだな」


 おれが作ってるのはリゾート地。


 前にリーシャと一緒に作ったホテルとかビーチとか、そういうのをぎっしり詰まったリゾート地だ。

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