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完全解決

 DORECA、パラジウムカード。


 手の中にあるカードは今まで見た事の無い様な輝きを放っていた。


「新しいカードか」


「哀れな子。カードだけ新しくなっても意味はないわ。そのカードの力はすべて封じているのだから」


「そうか?」


 カードのメニューを開いてリストから選ぶ。


 支払いは、魔力のみ。


 次の瞬間、無数の魔法陣が邪神の体を取り囲んで、収束して鉄の剣になった。


 体と同じ座標で生成する鉄の剣。邪神は一瞬でハリネズミになった。


「なんですって!」


 驚愕する邪神、まったく予想外みたいだ。


「力は使えるようになってるみたいだな。しかも……」


 いまの攻撃、魔力消費はゼロだった。


 魔力での緊急生産、本来なら十倍の魔力が必要になるはずだが、実際は消費がゼロ。


 パラジウムカードの能力なのか? それとも?


 いやいまはそれよりも。


「どうして使えるの?」


「封じたのがおれの力じゃないのがあだになった」


「おかしな子、あなたの力など、女神から授かった力に比べれば大したことないでしょう?」


「だからDORECAだけ封じたのか」


「そうよ」


「それがあだになったといってる。これはもうあのカードじゃない」


 パラジウムカードを掲げてみせる。


「二枚のカードが融合したまったく新しいカードだ。だから封じたのも無駄になった」


「くっ」


「もう一度封じてみるか? このカードも、前のと同じように」


「お兄ちゃん!?」


「パパ様!?」


 二人に微笑みかける、大丈夫だ、と匂わせながら。


 そう、多分大丈夫だ。


 予想だけど、かなり確信に近い。


 邪神と言えど、そこまで何度も何度もポンポンポンポンDORECAを封じる事は出来ない。


 DORECAの元は女神の力だ。そして邪神は自力では女神のところに行けなかった。


 そう、聖夜を使ってようやくだ。


 多分、DORECAの力を封じたのも聖夜を経由したから。


 だから、この場で再び封じられることはない。


 女神の力を取り込んでて、それが完全に自分の物になったらもう一度封じることもできるかも知れないが。それはまだ出来てない。


 力の消化・取り込みは後回しにするって自分で言ってた。


 だから、このカードを邪神は干渉出来ない。


 それことをおれはほぼ確信した。


 それは正解だった。


 邪神はふっと笑い、感心したようにいった。


「聡い子、そして憎らしい子。全てを理解している顔をして」


「推測しただけだ」


「どっちでも良いわ。でも、何か勘違いしてないかしら。カードが使える様になったからってわたしに勝てると思うの?」


「勝つつもりでいる。お前を野放しにしたらまたこの世界を壊すつもりなんだろ?」


 そうなったら今までの努力がパーだ。


 いや、それよりも。


 ちらっとリリヤとアリサを見た。


 エターナルスレイブ、おれの奴隷。


 こんなに健気で愛おしい存在も絶滅させられる。


 それは見過ごす訳には行かなかった。


「さあ、ここでケリつけようか」


「……お互いのメリットにならないことはやめないかしら。その子達が大事なら、あなたとその子達の安全は保証してあげるわ」


「世界を半分くれてやるって言われてる気分だ」


「恐ろしい子、その子達が世界の半分に匹敵するとでもいうの」


「ああ」


 頷く。


「エターナルスレイブ、奴隷達はおれにとってこの世界の半分に匹敵する存在だ」


「お兄ちゃん……」


「パパ様!」


 感涙するリリヤ、後ろから腰にしがみついてくるアリサ。


 ――魔力を10,000,000チャージしました。


 ――魔力を10,000,000チャージしました。


「……」


 そして、苦虫をかみつぶした顔の邪神。


「だから、答えはもう決まってる。ノーだ」


「愚かな子。ならば死になさい」


 手をかざす邪神。


 瞬間、カードが光り出す。


 光るパラジウムカード、反射的にメニューを開ける。


「――っ!」


 一瞬だけ知った顔が見えた気がした。


 共にこの世界にやってきた、男の顔。


 本当に一瞬だけだった、錯覚にも感じる、ほんの一瞬。


 直後、リストの中にある選択肢が現われた。


 魔力を二千万も要求するもの。


「発動!」


 説明文を冒頭だけ読んで、、動画を一瞬だけ再生しただけで理解したおれは即座にそれを発動させた。


 大量の魔力が一瞬で使われ、魔法陣が邪神を包み込んだ。


「むだよ、何をしても」


 それでも構わず手をかざす邪神――だが、何も起こらなかった。


 来るはずの攻撃が何も起きない。


「ど、どういう事なの?」


「力を干渉して封じた」


「なんですって」


「お前が持ってる力は邪神としての力、そして女神の力。そのどっちも聖夜が持ってた力。そして――」


 DORECAをかざして、邪神に見せつける。


「この中に、聖夜の力がある」


「それでわたしを封じたというの?」


「そういうことだ。さて、どうする?」


 邪神に聞く。


 彼女はものすごく悔しい顔をしたけど、何もやろうとしない――出来ないでいた。


 それをみて、おれは推測が当たったと確信した。


 邪神は取り込んだ女神の力を解放できない、そしてこの封印はずっと続くものだと。


 つまり、邪神は。


 ほぼ永久にその力を封じられてしまった、ということになったのだった。

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