奴隷の夜
「今日はひとまず休もう」
落ちていく西日を眺めながら言った。
「わかりましたの。夜を明かす用意をするの」
「ああまて」
リリヤが動き出そうとするのを止める。
自分のDORECAを取り出して、メニューを呼び出す。セーブ&ロード機能を使って、更に魔力で緊急生産。
さっきまで何もなかったところに家が現われた。
ただの家じゃない。縦に長い家だ。
リリヤ母娘を連れて、中にはいった。
中は一見普通の家だ、食事するためのテーブルがあって、寝るためのベッドがある。
一方で真ん中にはしごがあって、縦長の上の部分に繋がってる。
ロフトだ。
「はしごがあるんだの」
「ああ、のぼってみるか?」
「行ってくるだの!」
アリサが短い手足を使ってはしごを登っていく。落ちても大丈夫なように、さりげなく下に立ってフォローする。
隣にリリヤがやってきた。
「上にも部屋があるんですの。……部屋?」
「部屋っていうか、ロフトっていうんだ。こういうのを見た事ないか?」
リリヤは首を振った。
「ないですの」
「そうか。昔こういうのにすんでた頃があったんだ。外から見ると普通の部屋だけど、上に部屋が余分に一個ついててお得な気分になる」
「成程ですの」
「それと……」
言いかけ、上を見あげる。
――魔力を5,000チャージしました。
ロフトに登ったアリサが年相応の子供みたいに、目をきらきら輝かせて身を乗り出していた。
「すごいんだの、部屋の中なのに二階なんだの」
「ちょっとした秘密基地って気分になるだろ」
「パパ様の言うとおりなんだの!」
大はしゃぎするアリサ、目を細めるリリヤ。
ロフト物件は、割と高評価みたいだった。
☆
夕飯の後、おれは紙とペンを作って、テーブルの上であれこれ書いていた。
新しい武器の構想だ。
エターナルスレイブに変わる、新しい武器。
それをどういう物にするのかを考えていた。
今ひとつ思いつかないから、初心に返って、条件を紙に書き出していく。
まず、奴隷にちなんだものでなきゃいけない。
当たり前だ、手元に12人も可愛い奴隷がいて、めでれば笑顔を見せてくれるんだ。
それを力に、武器にしない手はない。エターナルスレイブの後釜として作るのだからなおさらだ。
次に、どうせなら一から開発したい。
DORECAが与えてくれた物をそのまま作るんじゃなくて、このロフト付き部屋のように、いろいろ組み合わせて、オリジナルの物を作りたい。
他にも細々した条件はあるけど、この二つが最重要事項だ。
「お兄ちゃん」
はしごからリリヤが下りてきて、おれの横に膝立ちになった。
「アリサは寝たのか?」
ロフトをみて、リリヤに聞く。
「はいですの。はしゃいだから、普段よりもぐっすりですの」
「無駄に登ったりおりたりしてたしな」
その光景を思い出してちょっとクスッとした。
「お兄ちゃんは何を書いてるんですの?」
「あたらしい武器の構想だ。リリヤは何かアイデアないか?」
「お兄ちゃんの武器ですの? うーん」
首をひねって考える。
「リリヤとアリサをコピーするですの」
「……はい?」
いきなり何を言い出すんだ?
「今日のゾンビみたいに、リリヤとアリサをいっぱい作って使役するですの。それがお兄ちゃんの武器ですの」
「召喚士みたいな感じか?」
「そんな感じですの」
「ピンとこないな」
「そうですの……」
しゅん、と肩をおとすリリヤ。
採用されなかったから落ち込んでる……って事はいまの本気だったのか。
それはそれですごいな。
「お兄ちゃんはどんなのを考えてるんですの?」
「いろいろだ。まずは銃」
「銃?」
「ああ、ベースになる魔法の銃を作って、消耗品のアイテムとなる弾を作る。お前達の何かを素材にしてな。多分だけど、全員違う効果の特殊弾ができあがると思う」
「なるほどですの」
おれはいままで考えついたアイデアをリリヤに話してみた。
自分じゃピンとこないから、リリヤの反応をうかがった。
リリヤも話をきいていろんな反応を――中には「いい!」って言ってもくれたが、今ひとつ決め手に欠けた。




