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ばっちぃご主人様

「あそこがいいな」


 水辺に立って、ぼんやりと見えてる島を見つめて言った。


「あの島なんですの?」


「ああ、あの島だ。島はいいぞ、海に囲まれてるから、それだけで攻めにくくなる、まさに天然の要塞だ」


「なるほどですの」


「そこへはどうやって渡るんだの?」


「作れるものの中にボートがあるはずだ。魔力で緊急生産しろ」


 ブロンズカードの中にそれがある事を思い出して、二人にいう。


「分かりましたの。すぐに作りますの」


「アリサが作るんだの」


 母娘奴隷はボートの作成を取り合った。


「アリサは娘なんですの、ここはお母さんに譲るんですの」


「ママ様はいつもお役に立ってるから少しはこっちにも分けてくれなんだの」


 取り合いと言うにはかなり微笑ましい光景で、おれは更にボールを投げ込んだ。


「ボートは確かオールで手こぎだったはずだ。作らなかった方が向こう岸まで漕ぐやくな」


「オールを」


「漕ぐ」


 こくり、と二人の喉がなる音が聞こえた。


「むむむ、ボートを作ってお兄ちゃんのやくに立ちたいんですの」


「でもオールを漕いだ方がやくに立てそうなんだの」


 取り合いがとまって、二人して悩みだした。


 どっちの方がいい、という悩みで、見ててますます微笑ましくなった。


 急ぎじゃないから、おれは、健気な母娘奴隷の悩む姿をこっそり見て楽しんだ。


「そこまで言うのなら勝負ですの!」


「勝負?」


「そうですの。ボート漕ぎなら腕力、だから腕相撲勝負ですの」


「受けて立つだの」


 母娘奴隷は海辺で腕相撲をし出した。


 ますます面白い光景になった。


 当然、リリヤが勝った。母娘の力の強さはそのまま見た目に比例するからだ。


「やったー、ですの」


「しかたないんだの……」


 負けたアリサだが、それほど落ち込む訳でもなく、奴隷カードを取り出してボートを魔力のみで生産した。


 海の上にボートを浮かべて、三人で乗り込む。


「いきますの」


 最後に乗り込んだリリヤがオールをつかんでこぎ出した。


 ボートがゆっくり進み、時間をかけて島に渡った。


「はあ、はあ……」


 一人でこいできたリリヤはヘトヘトになった。


「ご苦労、よくやった。これをやる」


「ありがとうございますの!」


 ――魔力を100,000チャージしました。


 渡る途中でおった折り紙のメダルをリリヤに渡すと、思いっきり喜んでもらえた。


「羨ましいだの……」


「アリサもちゃんとすればそのうちもらえますの」


「うん、頑張るだの」


 小さい体でガッツポーズして気合を入れるアリサ、それを励ますリリヤ。


 母娘を連れて、上陸した島を練り歩いた。


 モンスターが現われた。


「な、なんですのこれ」


「腐ってるんだの……」


 怯えて、抱き合う母娘奴隷。


 現われたのは人の姿をしたモンスターだが、体のあっちこっちで腐敗が進んでて、ゾンビにしか見えなかった。


 怯える二人をおいて、一気に踏み込んだ。


 右手を曲げてゾンビの口の中につっこんで、一気にひきおろす。


 くちから腹までぱっくりと裂けて、倒れるゾンビ。


「たいしたことなかったな。動きも遅かったし。これならまだエルーカーの方が手ごわい」


 強さとしてはいままで倒してきたモンスターの中でも弱い部類に入る。


 パワー、速度、防御力。


 どれをとってもモンスターの中で最低ランクだった。


 そのゾンビが……ぞろぞろ現われた。


 島の奥から一体また一体と姿を見せた。


 ざっと数えても、100体近くはいる。


 見た目の恐怖と相まって、小さな村なら壊滅しそうな戦力だ。


「とりあえず一掃するか」


 地を蹴って、ゾンビに突っ込んでいった。


 素手で殴ったり、蹴ったり、投げたり折りたたんだり。


 ゾンビを次々と撃退する。個体差があるのか、中には強いゾンビもいた。


 うーあー、とおきまりのうめき声から、一転してエルーカー顔負けの突進を噛ましてくるやつ。


 気がつけば木の上に上って、跳び降りて鋭く伸びた爪でひっかいてくるヤツ。


 関取顔負けなくらい太ってて、大量の酸を吐き出してくるヤツ。


 様々なバリエーションのゾンビがいた。


 そいつらを全員、素手で倒していった。


 そのせいで、全滅させた頃は腕がゾンビの体液と肉片でべっとりしていた。


 ちょっと気持ち悪いな、これ。


「お、お兄ちゃん」


「パパ様……」


 母娘奴隷がおれを呼んだ。振り向くと、二人がものすごく複雑な顔をしてるのが見えた。


「どうした。大丈夫だったか」


「はいですの。それよりも武器を作った方がいいと思いますの」


「パパ様強いけど………ばっちいだの……」


「うん? ああ」


 自分の姿をもう一度みた、確かに、これはばっちいかも知れない。


 というより。


「そうだな、武器だな」


 奴隷剣、エターナルスレイブ。


 リーシャの髪(奴隷の贈り物)から作り出し、奴隷達の体で増強した愛剣は聖夜の襲撃で、自らこわした。


 おれが作った物を全部消滅させるまで消えない聖夜の結界を消すために、おれ自らの手で消したのだ。


 それがそのままになってて、おれはいま、武器を持たない状態でいる。


 それに変わる武器を作らないといけないよな。

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