表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/172

魔法のキッチン

「メニューオープン……え?」


 朝の自宅、今日は何から作ろうかなとDORECA持ってメニュー開いたら驚いた。


--------------------------

アキト

種別:フロンズカード

魔力値:186006

アイテム作成数:1060

奴隷数:2

--------------------------


 魔力がかなり増えてる。


 昨夜寝る前は十万ちょっとだったはずなんだが、何故か八万も増えてる。


 さすがにこれはおかしい、記憶違いの域を超えてる。


 とはいえ原因はごくごく限られてるから、おれは可能性のある二人に聞いた。


「リーシャ、ミラ。何かいいことあった?」


「いいことですか?」


「えっと……」


 二人は考える。ミラが先に答えた。


「ご主人様ができました!」


 ――魔力を100チャージしました。


 手を合わせて、笑顔で答えるミラ。


 何もしてないのに微妙に魔力がチャージされたのが本心っぽかった。


「リーシャは?」


「えっと、わたしも……あっ」


 言いかけて、顔を赤らめて口をつぐんでしまう。


「どうした」


「い、いえ、なんでもありません!」


 更に顔を赤くして、手をぶんぶん振る。


 じっと見つめた、目をそらされた。


 いやな感じではなさそう、恥ずかしいだけって感じだ。


 意味不明だけど、原因はわかった。


 昨夜から今朝にかけて、おれが寝てる間にリーシャに何か嬉しい事があったんだな。


 そのリーシャはおれをちらっちら見た。更に原因はおれにあるみたいだ。


 ……寝顔が可愛かった、とか?



     ☆


「あっ、アキトさんおはよう」


 家を出るとマドウェイがいて、話しかけてきた。


「おはよう。なんかばたばたしてるな」


 マドウェイの後ろに男連中が集まってて、何か準備している。


「これからみんなで狩りにいくところなんだ」


「狩りに? 食べ物はあるんだろ?」


 おれは倉庫の方をみた。


 あの中に、昨日まとめて作った1000個近くのプシニーがある。


 現在の住民は27人だ、一日三食計算でもとりあえず12日分はある。


「それはすごくありがたい」


 マドウェイは頭を下げた。


「プシニー……だっけ。あれ一つでお腹ふくれるし、大量にあるから生活の心配がなくて、みんな感謝してる」


 ならなんで? と思った。


「しかし……これは言いにくいんだけど、あれはまずい」


「違う、まずすぎる」


 おれが言った、申し訳なさそうな表情をしたマドウェイが吹き出した。


「そう、まずすぎる。腹はふくれるんだけどあのまずさは……ってことで、ちゃんと食べられるものもほしいなって事で、やっぱり狩りはしようって話になった」


「そうか」


 最低限の保障はあるけど、上のランクの生活を目指すって事か。


「男衆は狩りに、女達は植物で食べられるものを探す。そんな風に手分けする事になった」


 そう話すマドウェイ達を送り出した。街の中に奴隷の二人と残った。


「ご主人様、今日は何から作りましょうか」


 リーシャが言ってきた。


 おれは考える。


 色々とやりたいことはある。


 家をもっと作ったり。


 ミラに引かせたラインで町の壁みたいなのを作ったり。


 シュレービジュを探しに行って、更に住民を増やしたり。


 やりたいことは山ほどある。


 が、それは全部あと回しにした。


「台所を作ろう」


「台所ですか?」


 リーシャは首をかしげた。


「ああ、正確には共同の炊事場、ってヤツかな。みんなは美味しいものを食べたくて狩りに行ってるんだから、それを料理にする場所をな」


「なるほど」


「そういうのも作れるんですか?」


 ミラが聞いてきた。


「メニューオープン」


 DORECAを持って作成リストを見る。


 それっぽいものはなかった。


 なかったけど――別のものの魔法陣を地面にだした。


「リーシャ、ミラ」


「「はい!」」


 二人はにこにこ顔で倉庫に駆け込んだ。


 戻ってくると、リーシャは不思議そうな顔をしていた。


「ご主人様、この素材って……木の家ですか?」


 さすが何度も一緒に作ってるリーシャ。持ってきた素材で判断出来る様になっていた。


「ああ」


「炊事場をつくるのでは?」


「いいから」


「はあ」


 リーシャとミラ、二人は素材を魔法陣入れて、木の家を作った。


「むっ、ちょっと場所がわるいな」


 木の家をひょいっと持ち上げて、離れた場所におろす。


 魔法陣の段階で位置調整は難しいんだよなあ。


 ちなみに、おれが作ったものなら、その気になれば簡単に持ち上げられる。


 他の人間には物理法則通りの重さだけど、おれだけがそうじゃなくて、重さ関係なく持ち上げられる。


 じつはこれ、ある事に流用できそうなんだけど……機会があったら試してみようと思ってる。


 場所を調整して、家の中に入る。


 次々と魔法陣を作る。


 テーブルとか棚とか、そう言った台所に必要なものを一通り魔法陣でだした。


 そしてかまどを――。


「……」


「ご主人様?」


 ミラが小首をちょこんとかしげて見上げてくる。


「こっちにしよう」


 おれはあるものを見つけて、かまどの代わりにそれをだした。


     ☆


 魔法陣の矢印が指す先、町からかなり離れた山の中にそれがいた。


 それは穴から流れ出ていた。


 穴のまわりを溶かし、燃やす溶岩。


 それが全部流れ出てから、形を変えてうごめきだした。


 溶岩のモンスター、その体が素材の光を放っていた。


「こいつか」


 単身でここにやってきたおれは腰のエターナルスレイブを抜いた。


 この距離でも熱さが伝わる、肌がじりじり灼ける。


 剣を振って斬りかかった。


「硬い! けど!」


 斬れないわけではない。力を込めて更に振り下ろすと、溶岩のモンスターを両断した。


「やっぱりそうなるか」


 真っ二つにされた溶岩のモンスターは一つにくっついた。


 スライムっぽい感じがしたからぶっちゃけ予想してた。


「……2000かな」


 ちょっともったいないけど、けちって結局高くつくよりはいい。多めに払っても一撃でやったほうがいい。


 おれは魔力をエターナルスレイブに込めた。


 数字にすると2000、それを一撃で放つイメージで。


 刀身が白く光り出し、膨張していく感じだ。


 それを――一気に振り下ろす。


 奴隷の剣と魔力の塊、それがハンマーのように溶岩の魔物を消し去った。


 そのあとに残ったのは赤い光、魂のような赤い光だった。


     ☆


 赤い光――ラーバの魂を町に持ち帰って、炊事場の中に持ち込んだ。


「ご主人様!」


「お帰りなさい!」


 二人の奴隷に出迎えられる。


 出した魔法陣が一つをのこして、全部完成している。


「ご苦労様」


 二人の頭を撫でて、その魔法陣に向かう。


 ラーバの魂を入れると、魔法陣がものに変わった。


 台の上に、二つの穴が開いている。その穴の前につまみがある。


「ご主人様、なんですかこれは?」


「かまどみたいなもんだ。多分こうして……」


 おれはつまみをひねった。直後、そこから火がでた。


 もう片方のつまみもひねる、そこからも火が出た。


「すごい! どうやって火をつけたんですかこれ」


 ミラが驚く。


「そういうものだ」


 そういってつまみを回す。消えて、弱火で、強火に。


 まるっきりガスコンロだ。


「こんなの見た事ないです!」


「うん! 普通はかまどで火をおこすから大変」


 リーシャとミラがいう。


 火を消して、テーブルとか棚、そしてコンロの位置を調整して、より台所にする。


「よし、完成だ」


 台所をみて、おれはちょっと達成感を覚えた。


 今までと違って、ある意味パーツ単位でつくって、それを組み合わせたものを作ったから、今までで一番達成感があった。


 ちなみに、台所――魔法のコンロは町の住民達にものすごく喜んでもらえた。


 それを使って作ったウサギの丸焼きをお礼にもらったくらいだ。


 こっちの感謝は魔力増えないけど、悪い気はしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ