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忠蛇リラ公

 DORECAで防衛設備を充実させていった。


 毒沼を撤去した部屋、女王の部屋の南の部屋。


 部屋の真ん中に魔法陣を設置、十倍の魔力で緊急生産。


 何の変哲もない地面だが、そこに廃材を投げた。


 シャキーン! 地面がぱかっと開いて鋭い刃が飛び出る。


 廃材がドスドスドス、と貫かれて穴ぼこになった。


「よし、今度はあっちの部屋だな」


 テクテクテク。


 今度は女王の部屋を通って東の部屋に向かった。


 そこでまた魔法陣をはって、緊急生産。


 六個の魔法陣から出来た、六体の人形。


 鎧姿にロングソードを持った人形達。


 また廃材をもってきて、今度は人形の真ん中に放り投げた。


 廃材に反応して人形が一斉に動き出した。もっていたロングソードで攻撃を繰り出す。


 縦切り、横切り、つき。


 流れる三連撃、それが六体。


 廃材は空中でばらばらに引き裂かれた。


 もう一回投げる、人形達は同じ動きで攻撃した。


 六体の人形、全部縦切り、横切り、つきの三つの動きしか出来ない。


 シンプルなトラップだ。


「対人だとどうだ?」 

 それが気になって、真・エターナルスレイブを抜いて、人形の真ん中に向かって歩いて行く。


 六本のロングソードが一斉に攻撃してきた。


 縦切り×6、横切り×6、つき×6。


 キキキン、キキキン、キキキン――。


 奴隷剣と人形のロングソードが撃ち合う金属音が響き渡り、部屋の中に火花が散る。


「うん、これなら大抵の相手は撃退できるな」


 DORECAを持って、次の部屋に向かおうとする。


 テクテクテク。


 今度は北の部屋――に来たのはいいが。


 立ち止まって、後ろを振り向く。


 そこにリラがいた。


「リラ」


「はい!」


「さっきからどうしたんだ? おれの後ろにばっかついてきて」


「大丈夫。使者様は気にしないで続けてください」


「いや大丈夫って言ったってな……」


 ちょっと考えて、部屋をでた。


 南のトラップ地面の部屋に来た。


 テクテクテク。リラはついてくる。


 何もしないでそこを出て、東の罠人形の部屋に来た。


 テクテクテク。リラはついてくる。


 こんどは女王の部屋に戻る。


 やっぱりテクテクテクと、まるで子犬が飼い主の後についてくるかのような感じで、リラはニコニコしながらずっとくっついてきた。


 実際にテクテクって音はしないし、そういう歩き方じゃない。


 何しろリラの下半身はヘビだから、テクテクってよりはシュルシュルだ。


 でもなぜかテクテクって感じがする。


 おれが意味なく部屋を移動して回っても、何も聞かず言わず、テクテクとくっついてくる。


「リラ」


「はい」


「ずっとついてこなくていいんだぞ? おれが全部やってやるから、お前は休んでろ」


「ついていくと使者様はご迷惑ですか?」


「迷惑って事はないが……」


 気がちょっと散るけど、それは別に大した事じゃない。


 さてどうしたもんかな、って思ってる時にある事に気づいた。


 リラはしっぽを振っていた。


 おれが結んでやったリボンをつけたヘビのしっぽをパタパタ降ってる。


 ……本気で犬っぽく見えてきた。


「……リラ」


「はい」


 DORECAで魔法陣を出して、魔力でボールを作る。


 なんの変哲も無い、十倍生産でも魔力消費100程度のゴムボール。


「そーい」


 それを明後日の方向に投げた。


 リラはおれとボールを交互に見比べた。


「???」


 首をかしげて、何をやってるんだろ、って不思議そうな顔をした。


 流石にそこまで犬じゃないか。


「ごめん何でもない、今の忘れ」


「――あっ」


 リラが声をあげて、ハッとした顔になった。


「わかりました!」


 地面を這っていって、転がってるボールを拾ってきた。


 それをおれに差し出す――やっぱりニコニコ顔で。


「はい、使者様」


 ニコニコ顔のリラ。


 本能じゃない、考えた上でやったこと。


 その考えた上で「わたし何でもしますから」っていう表情をして、しっぽをばたばた振るリラ。


 やばい、ちょっと来た。


 悪党から助けた事で懐いたリラは、ちょっとヤバイくらい可愛かった。

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