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しっぽとリボン

 DORECAから新しく出てきたアイテム、その魔法陣をはった。


 魔法陣の矢印は倒したズミャーをさしてて、その牙が光ってる。


 牙をもいで、魔法陣に投げ入れる。


 魔法陣が変化する、地面にしみのようなものが広がっていく。


「うお!」


「きゃ!」


 リラと一緒に慌てて飛び退いて部屋から出た。


「な、なにこれ」


「しみじゃなくて沼かこれ? ぼこぼこ泡吹いてるし紫色……毒沼か」


「えええええ、毒沼ですか!?」


「だろうな」


 DORECAで魔力1を払ってプシニーを作って、沼に投げ入れた。


 ブロック状の食糧はじゅわー、って音を立てて溶けていった。


「ひぃっ」


「やっぱり毒沼だな、こりゃ」


 部屋の中を見る。広がった毒沼は部屋の地面を完全に覆ったところでとまった。


 部屋のなかが完全に毒沼化してる。


「攻撃・迎撃部屋としてはいいかもな」


「でも怖いです……」


「怖いか。そりゃそうか」


「ここ、もう通れませんね……」


「……ふむ」


 おれは少し考えた。


 部屋をみて、後ろにあるリラの家の予定地をみた。


 この毒沼は使える、そんな確信はあるけどこの場所にあると何かと不便だな。


 どかすか。


「よっと」


 おれは毒沼を持ち上げた(、、、、、)


 無理かなって思ったけど、DORECAの作ったもの、簡単に持ち上げられた。


「し、使者様! そんな事も出来るんですか」


 持ち上げられた沼、というあり得ない光景にますます驚き、尊敬するリラ。


「すごい」


「まあな。さて、どかいしたいけど、いったん置く場所ってないよな」


 掘り始めた地下洞窟、これをいったん置いておく場所はまだ無い。


 とりあえずおいて掘り進めるにしても、この部屋にあっては邪魔だ。


「仕方ない、消すか」


 DORECAで毒沼を消した。


「わあ……」


 もはや「すごい」って言葉さえでなくなったリラ。


 その目は覚えがある、奴隷達と似てる目だ。


 だからおれはこう言った。


「手伝うか?」


「いいんですか!」


 反応も奴隷達と一緒だった。


     ☆


「さて、とりあえずこれで良いかな」


 一つ部屋を掘り終えた、リラの家予定地の真下だ。


 これで予定地の上下左右全部に部屋を掘った。


 どこから敵が来るにしても、間にコントロール出来る空間でワンクッション挟んだ方がいいって考えた。


 こうしないと、根元にいきなり侵入される。上下左右を全部部屋で挟むと、必ずどれか一つ部屋を経由してからの侵入になる。


 そのワンクッションをどうするかだけだ。


 ふむ、実際外敵はどんなのがあるんだ?


 大ヘビ・ズミャーは知ってるけど、それ以外はどうなんだろ。


「リラに聞くか」


 そう思って移動する。リラは確か上の方にいたっけ。


 おれはDORECAで作った階段を使って上って行った。


「リラー? どこだ?」


「し、使者様?」


「そこか、ちょっと聞きたい事が」


「きゃ!」


 近づくとリラが小さい悲鳴を上げた。


 物陰に見える彼女は半裸だった。


 汚れた服を脱いで、新しい服に着替えようとしてる。


 いや全裸なのかこれ?


 下半身のヘビ部分は前から服を着てない、着てる上は今脱いでる。


 身につけてる繊維類は……しっぽの先の赤いリボンだけ。


 全裸リボン――造語が頭の中に浮かんだ。


 それをぼうっと眺めてると。


「じ、じろじろみないで下さい使者様!」


「わ、わるい!」


 慌てて振り向いて背中を向けて、慌ててそこを飛び出して下の空間に逃げ込んだ。


 どきどきする、心臓がぱくぱくする。


「全裸しっぽリボン……」


 何故か更にドキドキした。


 いやいや、そこでドキドキするのはおかしいだろ。


 おれはそう言う趣味はない。そりゃリラは可愛いけど、そういうのは違う。


 ……ちがう、よな。


「心頭滅却心頭滅却」


 呪文のように唱えながら妄想する。


 相手はリーシャ、場所は例の森の泉。


 水浴びをしてるリーシャが首輪を愛おしげに撫でる。


 全裸奴隷首輪。しっぽリボンから奴隷首輪。


 落ち着いた、ドキドキはしなかった。


 実家の様な安心感で落ち着いたが、複雑な気分になった。


 まあそこは仕方ないだろう、奴隷の姿で安心感を覚えるのは正しいことなのだから。


「きゃあああ!」


 突然、リラの悲鳴が聞こえた。


「リラ!」


 名前を呼んで、階段を駆け上がる。


 そこに男が二人いた。


 リラは服を着たけど、男達につかまっている。


「運がいいぜ、まさかこんな浅い所にヘビ女がいるとはな」


「しかもこいつ処女女王だぜ。巣作り途中で卵うんでないのは通常の三倍で売れる」


「へっへっへ、しばらく遊んで暮らせ――」


「どうした――」


 一気に飛び出して、二人の首を刎ねた。


 問答の必要もない、見るからにゲスでしかない男達だ。


 首を刎ねて、リラを助ける。


「……」


「リラ?」


 放心したリラは徐々に我にかえって、おれにしがみついて泣き出した。


「こ、こわかった。怖かったです」


 そんな事を訴えながら、おれにしがみついて泣き続ける。


「悪かったな、助けるのが遅くなって」


 おれの胸に顔を埋めて、ぷるぷる首を振る。


 そんな事ない、って言いたいんだろう。


「こういうのもないようにしてやる」


 リラは顔をあげた。顔に二つの感情が交ざってるように見える。


 ついさっき襲われて怯えてるのと、おれの言葉に対する期待が。


「人間の侵入にも対策を考えないといけないな」


 期待を笑顔に変えて、恐怖を完全に上書きしないとな。

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