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巣作りアキト

 リラと一緒に彼女の家にやってきた。


 地下の横穴をぐるぐる回った後にやってきたのは家と言うよりは子供が裏山で作った秘密基地のようなところだ。


 穴を更に掘って家にする。


 それはいい、地下に住むモンスター娘だからある意味似合ってる。


 が、おれが気になったのは。


「他にいないのか?」


 その()が一軒だけ、ってところだ。


「実は……わたし達の一族の女の子は、一年に一人が独り立ちして、それまでいた集落を出て、新しい集落を作るのが習わしなんです」


「へえ」


「新しい集落を作って、そこで子供を産んで育てていくんです」


「アリかハチのような話だな」


「でもわたし……ぶきっちょで」


「ぶきっちょ?」


 リラは頷き、自分の()に入った。


 後をついて中に入ると、納得した。


 家の中にはテーブルとか寝床とか、様々な家具があるけど、それは全部ひどい出来映えだ。


 テーブルの足の長さが不揃いだし、寝床は草を敷き詰めたような物だけ。


 前言撤回、子供の裏山基地の方がナンボか出来がいい。


「そうか、それでおれに物作れないかって聞いたんだな」


「はい……」


 リラが恥ずかしそうにうつむいた。


 ま、そういうことなら話が早い。


「家を作るかまずは、素材は……上まで取りに行くのは面倒臭いから魔力生産でやるとして。他には――」


「きゃあ」


 突然リラが悲鳴を上げた。


「どうした!」


「あ、あれ」


 リラが指さした先、地下道の壁が崩れて、でっかいヘビが出てきた。


 アナコンダよりも更に一回りでっかい、太さ一メートルくらいある巨大ヘビだ。


 でっかいだけじゃない、口から見える牙は毒々しい液体が滴ってる。


 毒ももってるんだろうな。


「な、なんでこんなところにズミャーが」


「ズミャー。あれの名前か」


「はい」


「お仲間じゃないのか?」


「違います! あんなのと一緒にしないでください!」


 リラが激しく反発した。大ヘビと蛇女、お仲間だと思ってたけど違うっぽいな。


「とにかく逃げましょう」


 リラは逃げ腰だった。


「イリヤの泉はないのか」


「あんなの作ったらわたしも近寄れませんから」


 なるほどモンスター娘だからか。


 ……モンスターと何が違うんだろ。


 そんな事を想いながらおれはズミャーに近づいていく。口を開けてかみついてくるそいつを避けて、横っ面を思いっきり殴る。


 ゴッ! 硬い岩を殴った感触がした。


「硬いな」


「硬いんです! それだけじゃなくて力強くて、獲物を締め上げて毒で溶かしてじっくり食べるヤバイやつなんです。というか早く逃げましょう使者さ――」


 真・エターナルスレイブを抜いて、魔力を込めてたたっ切る。

 予想よりさらにちょっと硬かったけど、多めに込めた魔力で頭をズパッと切りおとした。


「これも何かの素材になるかな。リラ、これって固有の個体か? それともズミャーという種族なのか?」


「……」


 リラは絶句していた。


「リラ?」


「……」


「おーい、どうした」


 目の前で手をヒラヒラ振ってみる。


「――はっ」


「どうしたんだ一体」


「し、使者様って強いんですね」


「……神の使者って思ってるのに強いって思わなかったのか」


「その……ズミャーが怖くて……」


 神の使者でもかなわないって思ってたのか。


 まあいい。


「それよりもこいつは個体か? それともこういう種族か?」


「えと、少ないけど、こういう種族です」


「なるほど、それは安心だ」


 個体なら素材になったら一点限りのものになるから困る。希少でも種族である方が断然いい。


 そう思って「安心」ってつぶやいたんだが。


「それで安心するって……もしかして、使者様って予想以上にすごい人だったのかな」


 リラがなんかつぶやいていた。


 それをひとまず無視して、おれは頭の中でやる事の修正をした。


 イリヤの泉が作れないのなら、防衛・迎撃システムをより念入りに作らないとな。


 地下要塞、って位の感覚で作った方がいいのかもしれない。


     ☆


 魔力を込めた真・エターナルスレイブで壁を斬りつける。まるで熱した刃物でバターにするかのように、壁を溶かすような感覚で地下洞窟を広げていった。


 縦、横、高さ。


 全部広げて――巨大な地下空洞にした。


 ハーフのバスケットコートがリング含めてすっぽり入れる位にした。


 元の穴のざっと五倍くらいの体積になった。


 こっちはこれでいい、広くならしたから後で家というか舘か城っぽいのを作ってやろう。


 話を聞くとリラは新しいコロニーの女王、そういう立場になるみたいだからな。


 ズミャーが出てきた穴の前に立つ。同じように奴隷剣で掘っていく。


 人一人が通れる細い道をしばらく掘ってから、今度は小さめの、さっきの四分の一位の広さの空間を掘る。


 そしてDORECAを取り出して、入り口に魔法陣を張る。


「これはなんですか?」


「リラ、そっちにあったテーブルを持ってきてくれ」


「あ、はい」


 リラは言われたとおり、自分がつくったぶきっちょなテーブルを運んで来た。


「これを使わせてもらうぞ」


「つかうって……なんだかわからないけどどうぞ」


 許可が出たから、剣でテーブルをバラして魔法陣の中に入れる。


 素材が揃って、木造の扉になった。


「えええええ!?」


 驚くリラ。


「一瞬でドアができた!?」


「神の力で、おれの力だ」


「すごい!」


「こっちの空間は攻撃システムを盛り込もう。地下洞窟だから、道をうまくこっちにつなげて、敵をうまくここに誘導するようにして」


 考えつつ、つぶやく。


 ちょっと楽しくなってきた。


 今までの町作りとちょっと違う、いわばダンジョン作りだ。


 やってる事は近いけど、がらりと違う。


 テ○リスとぷ○ぷよ。


 マリ○カートとグラン○ーリスモ。


 ストリートファイターとバーチャ○ファイター。


 そんな感じで、近いけど違う、そんなのをやってる新鮮な感覚だ。


 DORECAを取り出して、空間――部屋の壁に魔法陣をペタペタはって、魔力で緊急生産する。


「それはなんですか使者様」


「これは――って丁度いいのがきた」


 説明しようとしたら、壁がボコ、って感じで穴が空いて、モンスターが部屋に侵入してきた。


 ちょっとでかい、大型犬位のサイズのモグラみたいなヤツだ。


「わ、また出た」


「こっち来い」


 リラの手をつないで、部屋の外に連れ出す。


「た、戦わないんですか」


 上手く行かなかったら戦うけど、まずは様子見だ。


 リラと一緒に部屋の中を見る。


 モンスターはおれ達を追いかけて部屋の真ん中を通ってきた――瞬間。


 ドドドドド! 壁から無数の矢が打ち出された。


 モンスターが一瞬でハリネズミにされて、そのまま倒れて、動かなくなった。


「わあああ」


「自動防衛システムって所だ。ニーナが偶然開発して、戦艦に搭載しようとしてうまく入らなかったヤツだ。こういうのを作っていけばリラが戦わなくてもモンスターを撃退できるだろ」


「わたしのために……ありがとうございます使者様!」


 目を輝かせるリラに微笑み返して、おれは更に考える。


 今まで通り衣食住は確保するとして、ダンジョンにするんなら他に何が必要なのか考えたのだった。

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