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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第十三章

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王

 宮殿からでた瞬間、頭上からまた衝撃波が伝わってきた。


 聖夜がまた宮殿に攻撃したのだ。


「ちっ」


 忌々しげに吐き捨てる聖夜。絶対結界の宮殿に傷一つ与えられないから苛立ってるようだ。


 宮殿はそれでいいが、攻撃するたびにまわりを巻き込んでる。


 実際、民が悲鳴を上げたり逃げ惑ってる。


 放ってはおけない。


「聖夜!」


「聖夜!」


「秋人おおおお!」


 まるで子供のように目を光らせて――しかし凶悪な顔つきで。


 おれを見つけた聖夜が空から飛んできた。


 振りかぶって――右腕を振ってきた。


 ガキーン! エターナルスレイブで受け止める。


 撃ち合ったのは黒光りする鋭い爪、拳の第3関節から生えてきてるモンスターの様な爪だ。


「探したぞ秋人!」


「黙れ!」


 こいつをこのままここに置いておくわけには行かない。


 力を込める。


 宝石が煌めき、土色の鎧が全身を包む。


「リベックから――でていけえええ!」


 爪を切り結んだまま聖夜を押す。


「うおおおおお!」


 全力で押す、大通りに出て、リベックの外に向かって一直線におした。


 リベックの外に押し出す、たまってるゴミの山に突っ込んで、吹っ飛ばして、更に押す。


 このまま――更に遠くへ。


「調子にのるなあああ!」


「くっ!」


 聖夜の体が空中に固定されてしまったかのような手応えを感じたあと、剣ごと吹っ飛ばされた。


 着地するなり体勢を立て直して、剣を構え直して聖夜を睨む。


 聖夜は前よりも更にまがまがしい姿になっていた。


 髪は逆立ててて、金属的な質感になってる。


 背中に獣チックな巨大な羽があって、上半身だけじゃなくて下半身も裸だが、そこはズボンに見える鱗に覆われてる。


 もう人間に見えなくなった、完全に悪魔的な――邪神の姿だ。


「何をしに来た聖夜」


「知れたこと。よくも邪魔をしてくれたな」


「リグレットの事か」


「そうだ。なんのつもりだ秋人」


「リグレット達とは協力関係にある、危険だとわかったら助けるのは当たり前だろ」


「それでおれ様を出し抜いたつもりか」


「彼女達を守りたかっただけだ」


「お為ごかしを!」


 聖夜が腕を振るう、黒いオーラの塊が飛んでくる。


 剣を立てて防御、おれが立ってる地面以外、まわりがえぐれる。


 間髪入れず聖夜が飛んできた。両拳に地獄の爪を生やして殴りつけてくる。


 エターナルスレイブで受け止める。金属音が鳴り響き、衝撃波が肌を打った。


 受け止めたまま蹴りを繰り出す、聖夜を蹴り飛ばす。


 頬を生暖かいものが伝う。この感触は血か。


 手の甲で拭うと――傷はなかった。


 なんで?


(ご主人様)


 脳内にライサの声が聞こえる。


 体に纏う土色の鎧、彼女の魔力チャージの特性。


 傷が徐々に治る――というのがライサ母娘の能力なのだろう。


「そのままフォローしててくれ」


(はい)


 最低限のやりとり、それから聖夜を見る。


 聖夜はゴキゴキと首をならしてる。


 彼の拳、爪と爪の間がぱっくり裂けてるのがみえた。


 血は出てない、代わりにもっとなにかおぞましいものが漏れ出てる。


 人間じゃないと一目でわかる光景。


 おれの視線に気づいて聖夜は自分の手を見た。


 そして、にやりと笑う。


「秋人よ、こんなので得意げになってるんじゃねえぞ」


「……」


「この程度、今のおれ様からすれば傷のうちにも入らないんだよ」


 拳をにぎにぎする聖夜、傷が一瞬のうちに修復される。


「それも邪神の力か」


「そうさ。邪神の力はすばらしいぞ秋人、こんなことも出来るんだからなあ」


 聖夜は手を振った。黒い玉状の何かが地面に打ち込まれる。


 土がはじけ飛んで、穴ぼこが出来た。


 しばらくして、そこからモンスターが出てきた。


 泥人形。ギリギリ人間の形をしつつ、頭からどろどろ溶け続けてるようなヤツだ。


 かといって土の色をしてない。聖夜が繰り出して、ドス黒い色をしてる。


「そういうモンスターを作れるのか」


「これだけじゃないぜ」


 もう一度手を振った。左右に二つ魔法陣が出来た。


 魔法陣から文字通り光の速さで、黒い光がおれを包んだ。


 剣を構える。


「身構えるな、攻撃じゃねえ」


 聖夜が言う、言葉通り、攻撃されてる感覚がしない。


 光はすぐに収まって、魔法陣に引っ込んでいった。


 そして、その魔法陣から二人の人間が現われた。


「マラート! マクシム!」


 かつて倒した強敵、リベックの支配者だったマラートとイナゴのような男マクシムだ。


 二人は怒りの目でおれを睨んでる。


 が、喋らない、動かない。


 にらみつけてきたまま、動かない。


 目は怒りに燃え盛ってて、今すぐにでも飛んできそうだ。


「……召喚、それも召還者の支配下に置かれるパターンだ」


「よーくわかってるじゃねえか」


「聖夜……」


 マラートとマクシムを召喚した聖夜を睨む。


「どうだ、おれもモノ(、、)が作れる様になったぜ。しかもこんな風に」


 二人の前に出て、自慢げに手をかざす。


「死人も作り直せるんだ」


「……」


「女神は間違ってたんだよ秋人。あんなちっぽけなカードで、ちまちまやって世界再生とかアホらしい。邪神の力を使えばよかったんだ。邪神の力さえ全部戻れば、この世界を一気に作り直すことが出来る。そうしたら世界再生だ」


「そこに笑顔はない」


 聖夜を否定した。


 邪神の力で何をどこまでやれるのかはわからない、だが今のでわかった。


 モンスターを呼び出し、死人を生き返らせる能力をみてはっきりわかった。


 そこに笑顔が存在する余地がない、と。


「――ぷっ」


 聖夜が吹き出す。


 今世紀最大の笑い話を目撃したような、そんな顔でおれを見る。


「笑顔? 笑顔っていったか秋人」


「ああ、いった」


「またそんな戯れ言をいうか」


「戯れ言じゃない」


「秋人よ、現実を見ろ。お前はどれだけ時間をかけた。作った国とやらはどんなもんだ」


「何が言いたい」


「邪神の力を全部取り戻したら……そうだな、そんなの一晩で作りあげることができるぞ」


「同じ話だ、そこに笑顔はない」


「はっ」


 話にならん。とばかりに肩をすくめる聖夜。


 おれは――ライサを真・エターナルスレイブから出した。


「――!」


 彼女の姿を見た聖夜の表情が変わった。


 次にベラを出した。


 ライサにそっくりな彼女の娘、小さなエターナルスレイブ。


 ライサの頬を撫でて、ベラの頭を撫でた。


「力を借りるぞ」


「「はい」」


 声を揃える二人、笑顔になる。


「秋人!!!」


 聖夜が突っ込んできた。


 鬼のような形相で爪を振るう。


 来るのは予想してた、ライサ母娘を取り込んで真・エターナルスレイブではじく。


「秋人! 貴様! 人の奴隷を取りやがって」


「寝取られる方が悪い。お前が奴隷を間違った扱いをしたからだ」


「奴隷を力で従えて何が悪い!」


「違う! 奴隷は愛でるものだ!」


 剣と爪が撃ち合う、金属音が鳴り響く。


 聖夜との間で何回繰り返されたかわからないやりとり。


 押し問答、平行線のまま。


「いつまでもいつまでも戯れ言を! ならば!」


 次の瞬間、左右から殺気が襲いかかってきた。


 土色の鎧を替えてふせぐ――が突破される。


 肩と脇腹をきられた、反撃して飛び下がる。


 マラートとマクシムだった。


 動けるようになったが、相変わらずしゃべれない二人。


 二人が襲いかかってきた。


「しねえ! 秋人!」


 聖夜が更に突進してくる。二人と一緒に攻撃をしかけてくる。


 防戦一方になった。


 聖夜、マラート、マクシム。


 流石にこの三人を一遍に相手にするのは分が悪い。


 おれは押された。


「どうした秋人! 笑顔の力とやらはそんなものか。そんな力じゃ何も出来ないぞ」


 爪が右肩をえぐり、マラートの剣に吹っ飛ばされた。


 地面にツッコミ、その勢いで転がっていく。


 聖夜が近づいてくる、上からおれを見下ろす、勝ち誇った顔だ。


「ここまでだな秋人。笑顔だなんてほざく弱者は世界から退場しろ」


 振り上げられ聖夜の爪。


 真・エターナルスレイブを構えて受け止めようとした――が。


 爪は飛んでこなかった、代わりに砲弾が飛んできた。


 何発もの砲弾が放物線を描いて飛んできた。


 弾は轟音をならして次々と地面に着弾。


 聖夜は慌ててはじき、防いだ。


 しかしマラートとマクシムはそうはいかなかった。


 防ごうとしたが、砲弾を次々と浴びて、奇妙な音を立ててつぶれてしまった。


「な、なんだこれは」


「……リベックからの砲撃だな」


 うろたえる聖夜に言う。


「お前、盗もうとしただろ、ニートカ。アレの砲撃だ」


「なっ」


「聖夜。邪神の力に比べたら確かにおれは弱者かも知れない。だがな、それでいいんだよ」


「なんだと!?」


「おれは戦士でも勇者でもない、おれは――王だ」


「王、だと?」


「王は、別に戦場で最強じゃなくてもいい」


「ざれごと――」


 反論しようとした聖夜が盛大に吹っ飛んだ。


 横合いから飛んできた巨大な砲弾に吹っ飛ばされた。


 人間よりもでっかい砲弾――戦艦リーシャの主砲。


 横を向くと、戦艦がこっちに砲身をむけてるのが見えた。


「あき……とぉ」


 ぼろぼろになりながらも立ち上がってくる聖夜。


 あれ(リーシャの主砲)を喰らってもまだうごけるのは流石邪神と言うべきか。


 が、来たのは戦艦だけじゃなかった。


 反対側からドラの音と吶喊の音が聞こえる。


 砂煙を上げて突進してくるのはカザンの民、国一の戦闘民族だ。


 先頭にマルタの姿が見える。


 そして、リベックからの砲撃も続いていた。


「ご主人様」


 更に背後から声がした。


 振り向くと、そこに五組のエターナルスレイブがいた。


 リーシャ、ミラ、ユーリア、リリヤ、スベトラーナ。


 五人が娘と共にそこにいた。


 駆けつけてくれたのか。


「……スベトラーナだけあとで説教な」


「はい!」


 覚悟の上です、と言わんばかりの顔で応じるスベトラーナ。


 奴隷達、戦艦、戦闘民族の兵、都市砲撃。


「聖夜よ、これがおれの力だ」


「……」


「望みなら見せてやろうか。全員、笑ってる姿を」


 つぎの瞬間、脳内のアナウンスがけたたましく鳴り響いた。


 12人分の魔力チャージ。


 振り返るまでもなく、奴隷達が笑ったのがわかった。


「この力よりも上なのか? 聖夜」


「――くそがああああ!」


 聖夜が突っ込んできた。


 だいぶ速度が落ちた、弱々しい突進。


 真・エターナルスレイブで受け止め、両手両足を切った。


 直後に『おれの力』が聖夜に殺到し。


 聖夜は邪神の力ごと、跡形もなく消し去られたのだった。

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