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真なる魂

 村を出て、素材を求めて山に登った。


 山頂近くまで上ってきて、カードを取り出す。


 現象を操る魔法を使えるカード。


「メニューオープン」


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:53/56

魔法使用回数:52/100

--------------------------


 魔力値をチェックするおれ。


 昨日まで、そこは最大値56、現在値51だった。


 ミラ、ユーリア、リリヤ、ライサ、スベトラーナ。


 五人を抱いた後、最大値は5増えた。


 それはいい。


 しかし昨日、マイヤ達、妊娠した三人をのぞいた47人を抱いた。


 最大値は増えなくて、現在値だけが回復した。


 そこから推測するに、最大値が一回だけ、現在値は何回でも回復する。


 うーん、まだ例外があるかも知れないな。


 例えば、「初めてじゃない子」を抱いて最大値が上がるのかどうか。


 それは今後の課題として覚えとこう。


「さて、やるか」


 つぶやいて気合を入れる。


 魔力を払ってエンカウントアップと運アップを使った。


 そして、しばらくまつ。


「おっと」


 地面が揺れて、ちょっとふらついた。


 直後、あっちこっちから穴が空く。


 空いた穴から溶岩が流れ出して、モンスターになった。


 狙ってたモンスター、ラーバっていう溶岩型のモンスターだ。


 こいつから取れるラーバの魂ってのが様々なもののエネルギー源になる。


 熱をずっと発し続ける――少なくとも今の所最初に作ったコンロがまだ作動してるから、かなり長い間に渡って熱エネルギーを発する優れものだ。


 というか、おれの認識だと「永久機関」になってる。


 そのラーバが出てきた。現象を操作する魔法で遭遇出来た。


「……ちょっと多くないか?」


 穴から次々と流れ出るラーバ。


 一匹だけではすまなかった。


 どろっと流れ出て、一体のラーバになる。


 どろっと流れ出て、一体のラーバになる。


 どろっと流れ出て、一体のラーバになる。


 次々とそれが繰り返された。


 さらに別の穴も空いた。


 そこからもラーバが出てきた。


「多い多い多い」


 ちょっと焦るくらい多かった。


 数にすると30匹、しかも増え続けてる。


 溶岩が軟体生物のようにあたりをうごめく。


 草木が焼ける匂いと、かなりの熱がおれを襲う。


「どうする、雨でも呼ぶか?」


 カードを手にして考える、魔法で雨を呼べるけど、果たしてそれでどうなるか。


 そうしてるうちに、ラーバがくっつきはじめた。


 二体のラーバがぶつかって、溶け合った。


 まるで水の上に浮かぶ油がくっついて溶け合うかのように。


 次々と溶け合って――合体した。


 一体また一体と、合体して大きくなる。


 質量と体積が増えていくとともに、合体の速度も上がっていった。


 やがてそこにいる溶岩が全部ひとかたまりになった。


 でかさは実にテニスコート一個分。


 それくらいのでっかいモンスターになった。


「おいおい、こんなのありか」


 つぶやく。


 それで終わりかと思えば、そうじゃなかった。


 新しい養分を求めるかのごとく、巨大ラーバは体を伸ばして穴の中に入れた。


 そこからどくんどくんと、溶岩を吸い上げてくる。


 体が更に大きくなった――大きくなり続けていった。


 そして、山が燃えはじめた。


「……おれ、やらかしたって感じ?」


 汗がでた――その汗も熱さに蒸発された。


「メニューオープン」


 コモンカードを出して、魔法で雨を降らせた。


 雨雲が瞬く間にどこからともなくうまれ、雨が降り注いだ。


「……焼け石に水か」


 文字通りの現象が起きた。


 降ってきた雨がジュージュー音を立てて水蒸気になった。


 木に燃え移った火も、巨大ラーバの熱量もまったく収まる気配がない。


 木が燃えて、根元から倒れた。


 ラーバの体に吸い込まれていって、一瞬で燃え尽きた。


 直接触れるとそうなるのか。


「むっ」


 木が倒れて、視界が晴れた。


 そこに見えるのは、例の村。


 数日前から作り替えて、完成間近になってるあの村。


 そして、そこに向かってうねうねと行こうとしていく巨大ラーバ。


 一瞬で消し炭になった木は、村の行く末を暗示してるかのようだ。


「止めないとな」


 せっかく作った村を燃やされてはたまったもんじゃない。


 真・エターナルスレイブを抜きはなつ。


 超絶遅い――子供の足よりも遅い巨大ラーバに先回りする。


 魔力を込めて、振り下ろす。


 ドゴーン!


 ハンマーで殴られたかのように飛び散る巨大ラーバ。


 普通のラーバならこれで終わりだが、こいつはちがった。


 一部だけ飛び散って、本体(に見える)部分は無事だ。


 更に飛び散ったのを取り込んで、ほぼ元の姿に戻っていく。


 やっかいだな。


 が、やるしかない。


 剣を握り直して、深呼吸する。


 そしてたたきつける、とにかく叩きまくる。


 巨大な溶岩を――子供の頃傘で道ばたに積もった雪にするかのようにとにかく叩いていく。


 最初は押された。


 いくら叩いてもへらないようが気がした。


 飛び散ったのを再取り込みするし、穴の中から更に溶岩を組み上げる。


 膨らんで、進んで、おれはじりじり下がった。


 が、三十分を越えた辺りで状況が変わった。


 巨大ラーバの前進がとまった。


 よく見ると穴の中から溶岩が新たに出なくなった。


 それで増えなくなったのだ。


 溶岩は打ち止め、再生の速度を攻撃が上回った。


「うおおおおお!」


 いける、と思ったおれは更に回転をあげた。


 奴隷剣を乱舞して、巨大ラーバを叩いていく。


 状況が更に変わった。


 そいつが押し戻されたのだ。


 正確に言うとおれに削られて徐々に小さくなっていったのだが、あの規模だど後退してるようにも見える。


 そうして削っていく。


 削って削って、削りまくる。


 ラーバが徐々に小さくなっていき、やがて普通のラーバのサイズになると。


「トドメだ!」


 魔力を込めて、思いっきりたたき込む。


 それでラーバが消滅した。


 跡形もなく消え去った。


「ふう」


 息をはいて、まわりを見る。


 山頂が半壊――ほぼ真っ黒焦げになった。


 一部えぐられてるようにもみえる。


 移動しただけでこうだ、野に放ったら大変な事になってた。


 まあそれはいい。


 それよりも戦果だ。


 元凶のエンカウントアップと同時に、運アップも使った。


 一発でラーバの魂が出るだろう。


 そう思って、ラーバの残骸に目を凝らす。


 すると、そこに魂が浮かび上がった。


「あれ?」


 今までのものと同じ形をした、しかし金色をしたもの。


 それを手にした瞬間、DORECAが光った。


 新しいアイテムを作れるようになった時に出る光。


 手に入れたのは、真なるラーバの魂。


 そして、DORECAにそれで作れるものが複数現われたのだった。

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