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荒野の27人

 リーシャがミラを連れて、首輪の素材を探しに行った。


 シュレービジュから戻った人間が一人、また一人と目を覚ました。


 目覚めた順番から一人ずつ質問していく。


 全員、ヨシフたちと同じように、最後はモンスターに殺されたという記憶が残ってる。


 これで確定した、シュレービジュはモンスターに殺された人間が変化したものだって。


「ねえ、村は……村はやっぱり……」


「……ああ」


 一人の女が言って、男が重々しく頷いた。


 見れば他にも何人か――合計十人がその話で暗い顔をしてる。


 その十人は他の九人と微妙に距離をとって、ひとかたまりで地べたに座っている。


 なんとなくピンときた。


「お前達は同じ村の出身なのか?」


「ああ、おれ達は全員トマリ村に住んでた」


「そのトマリ村は?」


「……モンスターに襲われ、燃えて……多分なくなった」


「そうか」


 頷くおれ。予想はできていた。


「他のみんなも似たような感じか? モンスターに襲われて、住んでた村・町がやばかったのは」


 聞くと、今度は全員が沈んだ。


 19人全員同じ経歴で――もう帰る場所がないって認識したか。


 そんな彼らにおれが提案を持ちかけた。


「実はここからちょっと離れたところに町を作ろうって思う。そこに来ないか」


 全員がざわざわする。


「説明はあとでするけど、この世界は滅びかけてる、けど邪神はもう倒された。だからこれからは復興の時代だ。おれは町を作って、町を広げていき、ゆくゆくは豊かな世界を取り戻したいと思う」


 反応が薄い、まだみんな悩んでる。


 一息ついて、更に言った。


「今は町が一つで、そこもまだ小さいけどちゃんとイリスの泉を設置した。そこを発展させて――」


「イリスの泉だって!?」


 さっきの男が声を上げた。よく見ると19人うち大半が驚いている。


 どうしたってんだ?


「本当にイリスの泉があるのか?」


「あ、ああ」


「そこに住まわせてもらえるの?」


「そう誘ってるけど」


「じゅ、住民税とかは?」


「うん?」


 次々に質問された。なんか変な話になってきた。


「まてまて、なんでみんなそんなに驚いてる。イリスの泉ってそんなにすごいものなのか? おれは『町には必要なもの』だって聞いたから、ちょっと無茶をして作ったんだけど」


 そう言うと、全員から「作ったの?」と声を揃えて驚かれた。


 さっき以上に驚かれた。


 同時に、一部から尊敬の眼差しを向けられる様になった。


「どういう事なんだ、おれは嘘を教えられたのか?」


「いや、そうじゃない」


 最初の男が答える。


「たしかにイリスの泉は町には必要なものだ。それがあればモンスターの侵入を防げる。だけどそれを設置できるのはかなり人口の多い町だ。それこそ1000人くらい越える町とか」


「わたし達が住んでたような村にはとてもとても……」


「それにそう言う町って、住むだけで住民税とられるから」


 みんなが次々に言った。


 それでようやくわかった。


 間違いじゃない、作ったのは間違いじゃない。


 ただそれがものすごいアイテムだってだけの話だ。


 それを必要だと言ったヨシフは……多分、都会暮らしで田舎の常識がわかってないとか、そういうタイプの人間だったんだろう。


 おれは咳払いして、改めて言った。


「みんなをおれの町に誘う。住民税なんていらない。あそこで一緒に町を作っていこう」


     ☆


 首輪ををつけた二人の奴隷、そして19人の町人。


 それを連れて町の方に戻ってきた。


「おおお、本当にイリスの泉だ」


「すごい……」


「安心して暮らしていいのね」


 全員がイリスの泉を囲んで、感嘆している。


「でも家がないわ」


「建てればいいんだよ。おれ、昔大工をちょっとやってたんだ」


 元大工がいたのか。


 それはいいけど、今はまだそれをする必要はないかな。


 おれは19人に近づいていった。


「あー、ちょっとまって」


「どうしたんだ」


「メニューオープン」


 フロンズカードになったDORECAを出して、作成リストから木の家を選ぶ。


「リーシャ、頼む。ミラはリーシャの手伝いをして」


「はい」


「わかりました」


 二人が倉庫に入り、指定の素材をこ運びだして、リーシャの指示で魔法陣に入れた。


 素材が揃って、そこに木の家ができた。


「な、なんだこれは!」


「魔法?」


 全員が驚く。


「おれはこういうのを魔法で作れる力をもってる。見ての通りおれが魔法陣を作って、そこに必要な材料を入れたらそれでできる。イリスの泉もこれで作った。というかここにあるものは全部おれが作った」


「すげえ……」


 全員が更に感嘆した。


 おれの事を、まるで英雄でも見ているかのような目になる。


「魔法陣はあと7軒の家を作れる。ここに設置するから、みんなで素材を集めて作って」


「おう、わかった。みんなやろうぜ」


 男がいって、みんなが声を揃えた。


 何となくその男がリーダーっぽくなってる。


 19人が家を作るのに動き出すのを確認してから。


「メニューオープン」


 おれは再びメニューを開き、作成リストを見る。


 実はさっきから気になってたものがあった。


 フロンズカードになって、解禁されたものの中に一つ気になるものがあった。


 二階建ての木の家、魔力1000。


 それが気になっていた。


 普通の木の家は消費魔力が2500だ、にも関わらず二階建てはその半分以下。


 それに触って、素材を確認する。


「なるほど、木の家を丸ごと一つ必要なのか――よし」


 他の素材を確認して、作れる事を確認してから、おれは自分の家の前に戻ってきた。


「ご主人様」


「ご主人様」


 後ろから二人の奴隷がついてきた。


 二人して、何をするの、って顔でおれを見つめてる。


「二人とも手伝え、これからこの家を大きくする」


「大きくするんですか?」


 リーシャが驚く。


「これから三人になるからな……あっ、もしかしてミラは別の家がいいのか?」


 ミラに聞く。すると彼女はブンブンと首を振って。


「ご主人様と一緒がいいです! わたし、奴隷ですから!」


「そうか」


 ミラの意思も確認できたし、おれは二階建ての木の家の魔法陣を、今住んでた木の家の横に作った。


 すると、一番近いおれの家が光り出す。他の矢印が倉庫をさす。


「よし、じゃあ二人で中から荷物を運び出して。終わったら他の素材を集めて来い」


「「はい!」」


 いいつけ通り二人で中から布団とか、服とか、そう言う荷物を運び出した。


 そのあと素材を集めに行く。二人はそろってちょっとした笑顔だ。


 なんとなく気づいたけど、ちょっとした命令口調の方が彼女達は喜ぶらしい。


 多分本人でもわかってないくらいの、わずかな違いだ。


 それを眺めながら、空っぽになった家を見て、さてどうするかと悩む。


 他の素材は二人に任せられるけど、木の家はどうしたらいいんだろ。


 作ったものを素材にするって意味では、エターナルスレイブの時と同じだ。


 だけど、その時は鉄の剣だった。


 普通に持てて、普通に魔法陣の中に入れられるもの。


 それに比べてこれは家だ。


「まさかこれを持ち上げる訳にもなぁ――っておい」


 冗談で木の下のしたに手をいれて持ち上げようとしたら――普通に持ち上がった!

 さっきまでそこに立ってた木の家が軽々と持ち上げられた。


 全くの無重量で、本当に持ってるのかどうかが不安になる。


 ダンベルみたいに上げ下げした……普通にできたよおい。


「わあ……ご主人様」


「すごい、すごいすごい!」


 戻ってきた二人の奴隷が尊敬の目で見てきた。


 すごいのはわかる、おれもこれをみたら同じ感想を持っただろう。


 こんな風に家をもちあげてダンベルみたいにするのを見たらおれでも驚く。


 ……なんで持てるのかはあとで究明しよう。


 とりあえず木の家を魔法陣に入れて、彼女達が集めてきた素材も入れた。


 光を放ったあと、二階建ての家が完成した。


 まわりが平屋のなか、ここだけ二階建て。


 町長だし、これくらいの特権はないとな。

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[良い点] 見当たらない [気になる点] 主人公が何でもやり過ぎる [一言] 周りが成長する要素を主人公が剥奪している。 住民に労働をさせず、税すら取らない主人公に依存した町なんぞ破綻しか待っていない…
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