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あなたが神か

 次の日の朝、家の外でさあ今日はどこから手をつけようかな、って考えていると。


「ごしゅじんしゃま、たいへんです」


 子供奴隷の長女、シャスリが慌てて家から飛び出してきた。


「どうしたシャスリ」


「たいへんですごしゅじんしゃま、ヴェラがいないのです」


「あー、ヴェラか」


「いっぱいさがしました、みんなでさがしました。でもどこにもいないのです」


 大慌てするシャスリ。


 頭を撫でてやって、落ち着かせた。


「ヴェラは仕事だ」


「え?」


 驚くシャスリ、同時に他の四人も家から顔を出してこっちを見た。


「伝令だ。マイヤの所にメッセージを持っていった。と言うわけでいなくなった訳じゃないから安心し――」


「「「「「ずるい!」」」」」


 びっくりした。


 五人の声が綺麗に揃った。子供の舌っ足らずの声が完璧にハモって、予想外の迫力を産み出した。


「ずるい?」


 聞き返すと、シャスリが答える。


「そうです、ひとりだけおしごとなんて、ヴェラはずるいのです」


「あー、そういうことか」


 なりは小さくても奴隷、知らない所で仕事を任せられた事をぬけがけに感じたみたいだな。


 エターナルスレイブらしいな。


 まあもっとも、彼女達の母親ともなれば話は別だ。


 おれの理解だと、ずるいっていうよりも良かったねと祝福するか、何もいわないで自分にも命令が下されるのを待つだろう。


 そう言う奴隷達だ。


 まっ、どっちも健気でかわいいがな。


「安心しろ、残ったみんなにもちゃんと仕事がある」


「ほんとう!」


 食いつくシャスリ、他の四人も家から飛び出してきた。


 ――魔力を3,000チャージしました。


 ――魔力を5,000チャージしました。


 ――魔力を7,777チャージしました。


 ――魔力がチャージされます。


 ――魔力を4,000チャージしました。


 脳内アナウンスがかつてないほど賑やかだった。


     ☆


 子供奴隷達を指揮して、村作りをしていた。


 ばたばた走り回りながらも的確に仕事をこなしていく子供達はコロボックルか、妖精のような感じがする。


 見てて微笑ましい。


 ただでさえ奴隷は愛でたい派のおれに、仕事が終わったらさあどう可愛がってやろうか、と気が散るほどの可愛さだ。


「あの……王様」


 アンナが横にやってきて、おずおずと話しかけてきた。


「どうした」


「すこしご相談が……」


「ふむ?」


 なんか深刻そうな相談みたいだ。


「わかった。シャスリ」


「はーい」


「ちょっと話してくる。ここは任せた」


「わかりましたー」


 元気よく答える子供奴隷達。


 アンナをつれてその場を離れ、人気のないところに行った。


 とは言え元々が寂れた村、ちょっと離れただけでもう人気がなくなるんだが。


 動き回る子供奴隷の声が聞こえなくなった所まで移動してから、立ち止まってアンナに振り向く。


「ここで良いか?」


「は、はい」


「で。相談ってなんだ」


「その。わたし達王様の国の人になりたいんです」


「ああ、なればいいだろ」


 もとよりそのつもりだ。


 だからこそDORECAと魔力を使って、衣食住を保証したおれの国のスタンダードにこの村を作り替えてる。


 ここでやっぱり入らない、って言われる方が迷惑だ。


 まあ、それならそれでもいいけど。


「その……あの……」


「うん?」


 もじもじするアンナ、なんかものすごくいいにくそうにしてる。


 いったいなんなんだろ。


「税金とか……払えないかも……しれなくて」


「ああ」


 そういう事か。


 なるほど、アンナ――そして村人が心配してる事がよく分かった。


 これだけ人数の少ない寂れた村だ、普通に考えたら税を払うのも難しい。


 それなら話ははやい。


「それに、いま村にしてくれてることも……代価をお支払いするのも」


「気にするな。まったく払わないってのも他に示しがつかないが、本当に払えない時は何か方法を考えてやるよ」


「方法?」


「食えないところまで絞りとる事はしない。それはおれの方針に反する。最低限の衣食住は保証してやる。食糧も、家も、服も。基本的なものならいえばいつでもただで作ってやる。今やってるのがそうだ」


「た、ただで?」


 盛大に驚くアンナ。


「ん? それ話してなかったっけ」


「えっと……あの……」


 おろおろするアンナ。そんな彼女に微笑みかける。


「そういう事だ、だから気にするな」


 目を見開かせるアンナ、表情が少しずつ戻る。


 おれが言ったことを徐々に理解して行ってる、って表情の変化だ。


 やがて、彼女は感謝がほとんどをしめる複雑な顔で。


「王様って……神なの?」


 そんな事をいってきた。

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