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奴隷ファンネル

「シャスリ、それを村の奥、あのおばあちゃんがいるところに持っていって」


「はーい」


 子供奴隷のシャスリがひょい、と木の家を持ち上げて、言われたとおり村の奥に運んでいく。


「……」


 おれの隣にいるアンナ――ミドロファンに襲われてた若い女が口をぽかんと開けていた。


「あんな小さな子供が……すごい。それに他の子も」


 アンナがまわりを見る。


 シャスリの他にも、五人の子供奴隷が動き回っている。


 奴隷カードを使って村の外周に柵を作ってて、その柵がちょっとずれたから、ヴェラが持ち上げて位置を調整した。


 柵は子供達の体よりも遙かに大きい。普通に考えれば重量だけで三倍くらいはある。


 それを苦もなくひょいと持ち上げられるのはやっぱりすごく見えるんだろ。


「あの子たちって王様の子供?」


「おれの奴隷だ」


「そ、そうなんだ」


 おれがはっきりそう答えた。アンナはちょっと引いたように見えた。


 が、そこは間違いない、譲れないところである。


「ごしゅじんしゃまあぶない!」


 子供の叫び声が聞こえた。


 振り向くとミラの子・イリーナがコケてて、柵が放物線を描いて飛んでくる。


 予想着地点には……アンナがいる

「きゃあ!」


 アンナが悲鳴を上げた。


 彼女の前に出て、柵を受け止めた。


 DORECAの力で作った柵は、重量なしでもてる。


 だから簡単に受け止めた。


「大丈夫か」


「は、はい」


 アンナは頬を染めた。


「イリーナ、もうコケるなよ」


「はーい」


 起き上がったイリーナに向かって、柵をひょいと放り投げる。


 放物線を描いて戻っていく柵を軽々とキャッチするイリーナ。これもまた衝撃的な映像だが。


「……」


 アンナはそっちを見てなかった。


 耳の付け根まで赤く染まった顔でおれを見つめる。


 何となくわかるが、今はそうしてる場合じゃない。


「共同の炊事場と銭湯も作っといた方がいいな。となるとラーバか。アンナ、この辺にラーバが出る場所はあるか?」


「……」


「アンナ?」


 強く呼んでやる。


「――な、なんですか」


「ラーバが出る場所あるのかって聞いたんだ。溶岩っぽいモンスターだ」


「えと……ごめんなさい見た事ないです」


「そうか。じゃあ魔法を使うか。それとも魔力生産か……」


 魔力で十倍払うのと、エンカウントアップ運アップを使ってラーバを狩るのと、どっちのが低コストなのかを考えた。


 こうして村を作り替えていく。


 衣、食、住。


 最低限でありながら、この寒村には似つかわしくない文化的な生活が出来るように作り替えていく。


「王様……これ」


 アンナが恥じらったままパンを持ってきた。


 発酵してない平べったいパン。


「今作ったんですけど、良かったらどうぞ」


「ありがとう」


 受け取って、食べる。


 味はそこそこだ。


 おれが食いながら作業をするのをじっと見つめるアンナ。


 ちょっとやりにくい、はっきりさせとくか。


 そう思った時。


「なんじゃこりゃ!」


 村の入り口から野太い声が聞こえた。


 目を向ける、そこに見た事のある格好をした男がいた。


 男自体は知らない、が、その格好はミドロファン残党のものだ。


 男は四人組で、我が物顔で村の入り口に来ていた。


「おいお前! お頭はどこ行った」


 男が村人の一人、老婆に怒鳴りつけるように聞く。


 恐怖心からか、老婆は腰を抜かしてがくがく震えていた。


「どこ行ったのかって聞いてるんだよ!」


 男は手を振り上げた、殴るのか。


「やめろー」


 幼い、甲高い声が響いた。


 男たちの反対側からイリーナを中心にした、子供奴隷の五人組が現われた。


 五人は男と老婆の間に割って入った。


「おばあちゃんをいじめちゃだめ!」


「いじめかっこわるい」


「ど、どっかいって」


 子供奴隷達は口々に男に言った。


 それで激高されるのか……と思えばそんな事はなかった。


 男達は下品な笑みを浮かべた。


「おいおい、こいつらエターナルスレイブだぞ。しかも五匹。今日はついてるな」


「色のついてないガキ奴隷は高くうれるんだもんな」


「お頭もいねえみたいだし、こいつら売っぱらった金は山分けしようぜ」


「女買おうぜ女。おれ最近たまっててよお」


 ……なるほどそういう事か。


 話はわかる。要は子犬とおんなじもんか。


 生まれたての高級犬種は高く売れる、そういうことか。


 ……好き勝手言ってくれる。


「捕まえるぞ、とりあえず一人一匹な」


 男がそういって、いよいよ動き出した。


 手を伸ばして、子供奴隷の体にふれた――直前。


 おれは真・エターナルスレイブに触れた。


 子供奴隷の無色の首輪が光って、光になって、奴隷剣に吸い込まれた。


「なっ、どうしたんだ一体」


「あいつは!」


「奴隷王……」


「なんでこんな所にいるんだ!?」


 男達は驚き、戸惑った。


 うち一人に至っては腰を抜かしてる始末。


 ちょっと哀れみを誘う姿だが、同情はしない。


「シャスリ、イリーナ、ヴェラ」


 リーシャとミラとユーリアの娘が半透明で出てきた。


「アリサ、ベラ、オリガ」


 リリヤとライサとスベトラーナの娘も半透明で出てきた。


 六人はまるで妖精か精霊のように、半透明で宙をぷかぷか浮かぶ。


「手加減するな、いけっ」


 命じると、六人が飛んで行った。


 ミドロファン残党を容赦なく始末した。

おかげさまで総合ポイント5万超えました。


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