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人間さんとは違う

 雨が上がった後、スベトラーナをつれてリベックに戻った。


 既に夜が更けてて、遠くから見えるリベックは奇妙な趣がある。


 林立する建物、ぽつりぽつりとつけられてる明かり。


 夜景マニアって訳じゃないが、この光景は好きだ。


 ま、自分の町だしな。


「リベックは夜になっても明るいのだな」


「これで明るい方か?」


「断然」


 スベトラーナは即答した。


「明るいし、町は華やかだ。わたしは邪神が跋扈し始めた後に生まれたのだからしらないが、話にだけ聞く昔の栄えていた頃の世界と似ていると思う」


「なるほど」


 世界再生は順調に進んでるって事だな。


 DORECAを出して、メニューを確認。人数は9904。ほぼ一万人だ。


 順調だな。


「これもあなた様の力なのだな」


「そうだな」


 スベトラーナをつれて、更にリベックに向かう。


「誰だ!」


 町の入り口にやってきた所で、番兵に呼び止められた。


 番兵は二人。DORECA製の槍を突きつけてくる。


 暗い中、おれの事がわからないんだろう。


「おれだ」


「おれだと?」


「……王様! す、すいません、王様だとはしらなくてつい」


 二人は慌てて槍を引っ込めて、その場でひざまづいた。


「きにするな。通るぞ」


「はい!」


「どうぞ!」


 二人は道をあけておれを通した。


 スベトラーナと一緒に二人の横を通ってリベックに入る。


 夜の町、人がまばらだ。


 ついてくるスベトラーナの気配が変だ。


 振り向くと、きょろきょろしてるのが見えた。


「どうした」


「す、すまない。町に見とれてたのだ」


「見とれてた?」


「夜になるとますますわかる、こんなに栄えているのだな。これが我が主の力なのか……」


 スベトラーナはうっとりしている。


「お前にも期待してるぞ」


「え?」


「正確には――おれが奴隷に命令してやらせた事の結果だ、この街も、この国も。これからもっと国を大きくしてく。ますます奴隷の力が必要だ」


「だからわたし……」


「そうだ。おれに力になってくれるか?」


「もちろんだ!」


 またしても即答された。


「この身、血の一滴、魂の一欠片にいたるまで全てあなた様のものだ。すり減るまでつかいたおしてくれ」


「すり減るまで、か」


 とことんエターナルスレイブだ。


「そうだ。わたしはあなた様の奴隷になるために生まれてきたのだ。あなた様のためなら何でもする――なんでもさせてくれ」


「何でもするんなら頑丈で長持ちする奴隷を目指してくれ。すり減るまで使うのは趣味じゃない」


 おれは軽くいった。


 その辺りの事のどうせ言ってもたいして聞き入れないだろうなって思うからだ。


 命令に従って過労で倒れるのを名誉だと思うがエターナルスレイブ。


 ここで頑丈で長持ちする奴隷になれって命令しても、どうせどこかで無茶をするのが関の山だ。


 もう諦めた。それが健気でかわいいけど、もう諦めた。


「頑張れよ」


「頑張る!」


 ――魔力を10,000チャージしました。


 スベトラーナをつれて、宮殿に戻ってきた。


 あかりはついてない。中に入っても人の気配がしない。


「みんないないのか」


「どこかにいってしまったのだろうか」


「メニューオープン」


 DORECAで確認。魔力はちょこちょこ減ってる。


 どこかで何かをしてるんだろう。


「さて、きょうは――」


「あっ! おにーちゃんがいたですの!」


 外からリリヤが飛び込んできた。


 血相を変えて、かなり慌ててる。


「どうした、そんなに慌てて」


「生まれるですの!」


「生まれる? なにか」


「だから生まれるですの! いいから来るんですの」


 リリヤがおれの手を引っ張る。


 要領を得ない、一体何がうまれるってんだ?


 おれはきょとんとしたが、横にいるスベトラーナがはっとした。


「もしや、奴隷の誰かが?」


「はいですの!」


 リリヤがおれを見る。


「おにーちゃんとリーシャお姉様の子供が生まれそうですの!」


「えっ、いくら何でも早すぎないか。彼女を抱いてから日が経ってないんだぞ」


 いくら何でも早すぎる、と思ったが。


「リリヤ達はエターナルスレイブですの! 人間さんとは違うんですの!」


 …………あっ。


 そういえばエルフも人間とは違う成長の仕方をするんだっけ。


 エターナルスレイブもそういうものなのか。


 ということは……本当に?」


「子供、主様の子供……」


 ――魔力を100,000チャージしました。


「わたしもいつかは……」


 喜ぶスベトラーナの顔は、それが本当だと強く主張しているかのようなものだった。

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