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奴隷乙女

「メニューオープン」


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:34/51

魔法使用回数:18/100

--------------------------


 開いたメニューの中からエンカウントアップと運アップの二つを発動。


 魔力が2減って、魔法陣が二つ出る。


 魔法の組み合わせ、これが想像した通りならしばらくしたら現われるはずだ。


 やってきた岩山の前でちょっと待つ。


「来た」


 ちょっと興奮して、おもわず声に出してしまった。


 岩山の陰からサソリが現われた。


 もはや顔なじみの相手だ。


 そいつはおれを見つけるなり向かってきた。


 最初にあった時からしてそう、かなり好戦的で攻撃的だ。


 カサカサカサと地面を這った後――猛烈にジャンプする!


 おれにむかって飛びかかってきた。


 半身になってそれを躱す――と同時にしっぽをつかんだ。


 サソリがもがく。


 間髪入れずにボディに手刀をたたき込む。


 柔らかい感触がして、プチッ、って音が体を伝って耳に届く。


 サソリが、真っ二つになった。


「すごい……」


 背後から驚嘆の声が聞こえた。


 スベトラーナ、ショートカットの奴隷が驚愕した顔でおれをみている。


「荒野の魔王とも呼ばれたあれを一撃で……」


 ご大層な呼び名が出てきたが、ツッコミはしなかった。


 こいつが強いことは知ってる。単体で村一つを壊滅させる程のヤバさを持つモンスターだ。


「それに……素手で」


「こいつはしっぽの付け根から大体指二本分体に上ってったところにメチャクチャ柔らかいところがあるんだ。見た目からじゃわかんないけど場所は決まってる。それさえわかれば素手でも倒せるものだ」


「いや、それは無理だ。あんなに早い動きを正確にとらえるなんて」


「こいつを百体単位でたおしてるからな、動きが最適化されてきたんだよ」


 強くてもある程度パターンがあるモンスターだとこういう風に最適化しやすい。


 ゲームとかだとローテーション行動をする相手がたまにいるけど、大体あんな感じだ。


 このサソリに限って言えば――例えばHP1状態でも倒せる。


 ミスしたら大変な事になるが、まあ大丈夫なくらいには慣れた。


「さて、そんな事をよりもやるぞ。手順は覚えてるな?」


 スベトラーナに聞く。


「ああ、覚えた」


「よし、ならやれ」


 早速ご主人様らしく命令口調で言った。


 スベトラーナは奴隷カードをだした。


 ここに来る前に作ってやった、彼女専用のカードだ。


「メニューオープン」


 同じようにメニューを出して、リストから選ぶ。


 魔法陣が地面に出現する。


 矢印が二手に分かれる。


 片方はスベトラーナの背後に置かれている素材、もう片方はおれが持ってるサソリだ。


 スベトラーナは素材を入れた。


 サソリを彼女に渡す。


「自分の手で入れてみろ」


「ああ!」


 頷くスベトラーナ、ちょっと興奮気味だ。


 最後の素材、サソリを入れると魔法陣はドレスに替わった。


 草色のドレス。おれの奴隷のユニフォームみたいな衣装だ。


 それを持ち上げて、感動した目で見るスベトラーナ。


「わたしにも……できた」


「そのカードを持ってる限り出来る。おれの能力を一部貸し出してる状態だからおれと同じ事ができる」


「あなた様と……同じ能力」


「その一つに……そうだな、今それを着てみろ」


「わかった」


 頷くスベトラーナ、この場で服を脱いで着替えだした。


 これも慣れた。


 エターナルスレイブ、おれの奴隷達はおれの前だと羞恥心を見せない事がおおい。


 よく、姫様とかお嬢様とか、そういう貴顕の女達が使用人に羞恥心を感じないのと同じように、正反対だが、自分を持ち物だと自認してるエターナルスレイブはご主人様に羞恥心を感じない事が多い。


 スベトラーナも同じで、彼女は普通に脱いで、普通にドレスを着た。


「着たぞ」


「軽いだろ?」


「ああそうだな……むっ、軽いって言うよりは……」


「重量がない、だろ」


 頷くスベトラーナ。なぜ? と言う顔でおれを見る。


「DORECA、そして奴隷達がもつ奴隷カードで作ったものは、同じカードを持つ人間だと重量を感じないんだ。見た事はないか? 奴隷達がカードで作った家をひょいって持ち上げるの」


「いや、見た事はない」


「なかったか」


 頷くおれ。まあ今までは他国の使者でやってきたんだから、そんなもんか。


「とにかくそういう能力も使える様になってるはずだ、お前は」


「……」


「どうした、考え込んで」


「カードの中に鎧はなかったかと思って」


「鎧?」


「ああ、それもプレートアーマーのような分厚い鎧だ。あなた様と我々奴隷であれば重量は関係ないのだろう?」


「……おお」


 思わず手を叩いた。


 スベトラーナが言った通りだ。DORECAで作ったものを持つ時は重量を感じない。


 戦艦リーシャでさえ、中に人間が乗ってなければおれなら片手でもちあげられる。


 鎧なんて目じゃない。


「いっその事超巨大な鎧を作るのもいいかもしれないな。ニーナに開発してもらって」


「超巨大な鎧?」


「ロボットみたいな――ゴーレムみたいなって言った方がわかるか?」


 ゴーレムがあるのかどうかわからないが、ロボットよりはわかるはずだ、異世界だから。


「なるほど!」


 通じたようだ。


「それはすごそうだ」


 すごそうと言うより楽しそうだ。


 そしてロボットって言うよりは無重量なのを活かして着込むものだから、パワードスーツって言った方がより正しいか。


 どっちにしろ……楽しい。


 ニーナに開発させとこう。


 スベトラーナを見る、面白いアイデアを出したこいつにお礼をしないとな。


「メニューオープン」


 DORECAの方を出して、紙を魔力生産。


 それで折り紙のメダルを折って、スベトラーナに渡す。


「これをやる」


「もらっていいの?」


「ああ。十個――」


「うれしい」


 集めたらいいことをしてやる、って説明をする前にスベトラーナはそれを嬉しそうに抱えた。


 ――魔力を150,000チャージしました。


 基本気が強いスベトラーナは恋する乙女ってくらい喜んでくれた。

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