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主人を嫌う奴隷

「ご主人様、それは?」


「新しいカードだ」


 森の中、リーシャが見てる横でカードを取り出した。


 メニューオープンって唱えて、ステータスを確認する。


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:42/51

魔法使用回数:10/100

--------------------------


 変わったところは二つ。


 魔力値の最大値が1増えて、現在値が2増えてる。


 原因は明白。リーシャを抱いたからだろう。


 ちなみに色々ガマンを――こらえようとするリーシャがかわいくて、二回連続してしまった。


 それ込みで考えると、最大値は経験した人数、現在値は一回ごとに1回復する、って事になるのかもしれない。


「あの、ご主人様」


「なんだ?」


「こっちも魔法でものを作るんですか?」


「いや、魔法で現象を起こすものだ」


「現象?」


「そうだな……サイコロを作れるか?」


「サイコロですか? ちょっと待ってください」


 リーシャは自分奴隷カードを取り出して、魔法陣をはってサイコロを作った。


 使った素材が石だったから、ずっしりしたサイコロになった。


「これをどうするんですか?」


「振ってみろ、そうだな、とりあえず百回だ」


「はい」


 リーシャは言われた通りサイコロを振った。


 百回振って、出た目はバラバラだった。


 大体6分の1、種も仕掛けもないサイコロ通りの出目だ。


 終わった後、「これがどうしたの?」って表情でおれを見る。


「魔法を使う、リーシャに『運が悪くなる』発動」


 魔力を1払って、角張った魔法陣で魔法を使う。


 光がリーシャを包み込む。


「振ってみろ。また百回だ」


「わかりました」


 リーシャは不思議がりつつも言われたとおりサイコロを振った。


 振って、拾って、振って、また拾う。


 二十回越えた辺りで彼女は気づいた。


「目が……低い? ほとんど1か2です」


「ああ」


「ご主人様の魔法でですか?」


「ああ、今のは言葉通り運が悪くなる魔法だ。もっと振ってみろ」


「はい」


 リーシャは更に振った。


 百回のうち、八割以上が1か2で、6は1回しかでなかった。


 サイコロは一緒、振り方は無造作。


 普通に考えて偏りがでる振り方じゃない。


 もう一度魔法を使う。


 『運が良くなる』を使った。


「もう100回だ」


「はい!」


 今度は期待する目で振り始めるリーシャ。


 魔法がきっちり効果を発揮した。


 さっきとは真逆で、8割近く5か6で、1は3回でた。


「1が多いです」


「運だからな、そういうもんだ」


「他に何がありますか?」


「そうだな……これはどうだ?」


 何も言わずに魔法を使う。


 不思議そうに首をかしげるリーシャ。


 しばらくして、変化が起きる。


 森の動物が次々と集まってきた。


 今までだと、集まってきた動物たちはエルフっぽいエターナルスレイブのリーシャの元に集まってくるのだが、今回は違った。


 大小様々な動物がおれのところにやってきた。


 リスと小鳥が肩に乗って、イノシシがフゴフゴしてすり寄ってくる。


 リーシャが助けた鹿の母娘はおれにほおずりをする。


 一方で、リーシャには目もくれない。


「こ、これは?」


「好かれるようになるんだ。効果は見ての通り」


「すごい」


「で、逆もできる」


 もう一回魔法を使う。今度は真逆の『嫌われるようになる』。


 動物たちが一斉に逃げ出した。


 今までおれに甘えてたのが潮を引くようにいなくなる。


 小動物がいなくなって、鹿は母が子をかばって去っていった。


 イノシシはおれに体当たりをかましたが、びくともしなかったのを怒りながら去っていった。


「こんな感じだ」


「すごいです。あんなに懐いてた動物たちが」


「そういう魔法だからな。そういえばお前は大丈夫か?」


「え?」


「魔法の影響下にあるはずなんだか」


 魔法の効果範囲は「おれ」だ。


 特定の動物が好きになったりきらいになったりするんじゃなくて、おれの事を好きになったりきらいになったりする魔法だ。


 だからリーシャにも影響してるはずなんだが。


「きらいです、でもご主人様ですから――あれ? え、え、えええええ」


 言ってから自分の台詞に驚くリーシャ。


「そんな……でもわたし。ご主人様を……あれ?」


 ものすごく葛藤するリーシャ。


 魔法に影響されてきらいになったがその相手はご主人様で苦しんでるみたいってところか。


 くるしそうだ。


 流石にこれはかわいそうだから、魔法を解除した。


「あっ……」


 見るからにほっとしたリーシャ。


 涙目でおれを見つめる。


 なんか……申し訳なくなってくるな。


 謝っとくか。


「わる――」


「ごめんなさいご主人様!」


 先に謝られてしまった。


「ご主人様の事をきらいになってすみません。本当にすみません!」


「気にするな、そういう魔法だ」


「でも――」


「おれの魔法だぞ」


 言葉を遮りつつ言い放つ。


「おれの魔法にあらがえると思うのか? んん?」


「あっ、そうか、ご主人様の魔法……」


 はっとするリーシャ。


 うん、納得したみたいだな。


 変に落ち込まれていやだから、これでいい。


「ご主人様のちから、すごいです」


 うってかわって尊敬しきった目でおれを見るリーシャ。


 おれもそう思う、そうおもいはじめた。


 エターナルスレイブ、過労すら名誉に感じ、母娘ともども奴隷になることを希望するエターナルスレイブの気持ちすらゆがめてしまう魔法。


 かなりすごい効力だと言わざるを得なかった。


「メニューオープン」


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:38/51

魔法使用回数:14/100

--------------------------


 もう一度メニューを開いて、ステータスを見る。


 DORECAの経験がある、だから期待を持った。


 このカードはもう既に強力だが、まだまだつよくなるはずだと思ったのだった。

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