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別系統の魔法

「メニューオープン」


 かつて聖夜のものだったカードを持って、おなじみの呪文を唱える。


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:50/50

魔法使用回数:0/100

--------------------------


 メニューが目の前に出てきた。


 半透明のパネルにステータス表示、DORECAのそれとかなり似てる。


 が、内容はまるで違う。


 おれの名前だけ一緒で、カードの種別がクレジットカードっぽいものがトレーディングカードっぽくなってて、魔力値は数値が小さくて、最大値があるって表現だ。


 そして何よりも。


 ステータスの下にあるのがDORECAとまったく違う。


 DORECAのは「物理的にものを作る魔法」だが、こっちは違う。


 一言でいえば……「現象を引き起こす魔法」ってところだ。


 試しに一つ使ってみた。


 一番上にある「通り雨」を使ってみた。


 魔法陣が足元から出た。


 魔法陣もDORECAのものとは違った。


 DORECAのはサークル型の魔法陣で、こっちは三角というか、角張った感じの魔法陣だ。


 それが光って――雨が降った。


 一分間くらいの通り雨が降った。


 魔法の効果が終わった後、もう一回メニューを開いた。


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:49/50

魔法使用回数:1/100

--------------------------


 魔力の現在値が1減って、代わりに使用回数が1増えた。


 更に試す、リストにある魔法を上から順番に使っていく。


 全部で10個ある魔法を一通り使いおえると。


--------------------------

アキト

種別:コモンカード

魔力値:40/50

魔法使用回数:10/100

--------------------------


 となった。


 魔法は何を使っても1の消費と、回数が1増える(こっちは当たり前だが)。


 大体わかってきた。


「50か……」


 おれはメニューを穴が空くほどじっと見つめた。


 魔力の最大値、50。


 どうって事のない普通の数値だが、心当たりが一つだけある。


「……試すか」


     ☆


 森にやってきた。


 DORECAの魔法で作って、奴隷カードの魔法で拡張が進んでる森だ。


 木々が生い茂り、動物たちが集まっている。


 イリヤの泉に守られた地上の楽園に足を踏み入れて、何となく歩いた。


 しばらく歩いてると、リーシャの姿が見えてきた。


「ご主人様」


 向こうもおれの事に気づいて、森の拡張の作業をとめて、こっちにやってきた。


「どうしたんですか?」


「いや、リーシャに用があってな」


 そういいつつ、森をぐるりと見回した。


「ますます賑やかになってるな。鳥とか、小動物が更に増えてる」


「はい」


「鹿がいるな。親子か?」


 木々の間に二頭の鹿が見えた。


「はい。ちょっと前に流れてきました。お母さん鹿が怪我をしてましたから万能薬で治したら、そのあと住み着きました」


「なるほど」


 頷き、鹿の親子を見る。


 二頭の鹿はおずおずって感じでやってきた。


 手を伸ばして子鹿の頭から首にかけて、ちょっと強めの力で撫でてやった。


「親子か」


「はい……」


 リーシャはおれに撫でられる鹿の親子を羨ましそうな目で見た。


 何をうらやましがってるのかは……あえて聞くまでもなかった。


 しばらくして、リーシャがおずおずと問いかけてきた。


「あの……ご主人様。わたしに用事って?」


「ああ」


 頷き、リーシャをまっすぐ見る。


「した約束を果たそうと思ってな」


「約束、ですか?」


「子供がほしいんだろ」


「あっ……」


 ぽっと顔を赤らめ、うつむいてしまうリーシャ。


 伏し目がちになりながらもおれを見つめてくるその姿は愛らしいの一言につきる。


「いいか?」


「はいっ。あ、あの……」


「うん?」


「子供が出来たら――」


「その子もおれの奴隷にする。わかってる、最初からそのつもりだ」


「ありがとうございます……」


 感極まったようすのリーシャ。


「さて、どこがいい?」


「ここで」


 手を組んで、潤んだ目でおれ見つめるリーシャ。


「森の中で――それもご主人様と一緒に作った森のなかなら……」


「そうか」


 ますます健気なリーシャの肩を抱いて、優しく地面に寝かせた。


 目を閉じて、体をゆだねてくる。


 リーシャは痛みをこらえつつも、必死に笑顔を繕った。


 それがあまりにもかわいくて、おれは本来の目的を忘れるくらい彼女を可愛がった。


 ――魔力の最大値が1あがりました。


 大事な声を聞き逃すほど、リーシャを腕の中でとことん可愛がってやった。

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