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始まりの異世界  作者: てぃあべる
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第68話-先生の教え-

そう……先生が教えてくれた

それは、私が初めて大会で凄く緊張して良い成績をだせないでいた時

先生が私に微笑みながらお母さんのように優しく……話をしてくれた


「雅ちゃん、ここを大会の会場だと思わなければいいのよ」


「え……?」


私の通う弓の道場の先生は60代後半のお婆ちゃん

段位は『九段』で、弓の世界では有名な人らしい


「そうね、雅ちゃんはここに慣れてないのよ

 だからね……心を落ち着かせて、目を瞑ってみて」


「は、はい」


先生に言われた通り、両目を瞑る

そこは暗闇でもちろん何も見えない

そんな状態でも声は聴こえる


「そうしたら……何時も雅ちゃんが練習してる道場を思い出してみましょ」


「……」


私は先生に言われた通り、いつも練習していた道場を思い出す


「思い出した? じゃあ今度はいちばーん上手にできた時の事を思い出して

 いつでもいいわよ、あ……そうね、雅ちゃんが『完璧』と思った所がいいかな」


私は道場の練習場で一番よかったの時の事を思い出す

それは道場で10本打って9本が真ん中……中心に刺さった時

その光景はまだ始めたばかりの私のビギナーズラック

でもそれが嬉しくて先生に抱き付いたのも覚えている


「……その光景を覚えたまま、やってみましょ?

 ここは『いつも』の練習場、ちょっと見にきた人が多いだけ」


そこで私は目を開ける

すると今まで緊張していたのが嘘のように弾け飛び

結果、その大会で優勝する事ができた

その結果を先生に報告すると、まるで我が子のように私を抱きしめ

笑顔で頭を撫でながら言ってくれる


「それを忘れないようにね、雅ちゃんならきっと……」


そこまで思い出し私は目を開ける

そこは……闘技場の広場、目を前にナイフを落とされたヘルドさん

あとは観客の皆さん……ただそれだけ……


『10本打って10本正確に当てられるわよ、だって私の生徒さんだもの』


「先生……」


私は小さな声で先生を思い出し、少しだけ懐かしく思いながら涙目になる

そして……動揺してるヘルドさんを他所にもう一射放つ

その矢をヘルドさんが右に交わす、けど……『それは予測通り』

だから、動いたと同時に矢を構え放つ


「……的は円の一番端……そこが一番点数高いかな」


私は独り言を呟き、矢を放つ

それは吸い込まれるようにヘルドさんの右手の一番端のナイフを吹き飛ばす

これでヘルドさんの右手には3本、左手には4本

合計3本を弾いた事になる


「チッ……うぜぃな……」


ヘルドさんは舌打ちをするかのようにこちらを見る

でも……余裕はあった

何故なら、これは遠距離戦、接近も可能ならば私に勝ちはなかった

でも接近がないこの状況なら私にも勝ちはある


「……でも君はここまでだ」


ヘルドさんは私に向けてナイフを一直線に投げる

そのナイフは糸が付いており、速度はそこまでない


『撃ち落とす』


私の直感がそう教えてくれた気がする

だから私は弓から矢を放ち、ヘルドさんではなく、飛んでくる矢に当て

矢をナイフは左右に音をたてて弾き飛ばされる


「う、そ……だろ……今のを狙ってたのか?」


その光景はヘルドだけでなく、観客席で見ていたクラウとリノエも驚いていた


「おいおい……あの芸当は凄すぎるぞ」


「ですね……まさか雅にそこまでの力が……いや、違う?」


「ん? リノエ何かわかったのか?」


「わからないんですが……雅から『優しい』感じがします」


「優しい? どういう事だ?」


「わからないです、ただそう感じただけで」


「リノエが言うならそうなんだろうな……」


2人はそこまで話すと黙り、また広場の戦いを見る

その後の戦いは一方的だった

雅の放つ矢は必中、放つ矢は全てヘルドのナイフに吸い込まれるように当たり

次々とナイフを弾く、それもヘルドに1発たりとも当たってない光景は

観客を魅了し、いつの間にか雅にたいする応援ばかりになっていた


「嬢ちゃん、あと2本だ!」


「そうよ! 全部撃ち落として!」


「嬢ちゃんならいけるぞ!」


そんな言葉が雅の耳に聴こえる


「ありがとう……」


私にはその観客すらも今は道場で一緒に練習してきた皆に見える

だからこそ……応援に従い、私は全てのナイフを撃ち落とす


「いい加減にこれなら……どうだ?!」


ヘルドさんに私に左右からナイフを投げる

そのナイフは斜めに私に向かい飛んでくる

それを私は後ろに下がり避ける

その後……ナイフが通った後に弓の先体を横に向けその地点を見るが何もない


「……糸なんかねぇよ」


その瞬間ヘルドさんはナイフ2本を私の後ろから斜めにクロスするように引く

だが……それは雅の予測通りの行動だった


『でも、ヘルドさんに戻るのは投げた軌跡通りのはず』


そう、最初ヘルドが投げたナイフの軌跡を目を追っていた

その光景は一直線、そう投げた後、戻す『線』が同じだった


「だったら!」


雅は弓を構え、軽く引くと自分の目の前に矢を放つ

するとその矢とほぼ同じタイミングでナイフが2本重なるように通り

矢がナイフ2本に当たり、弾け飛ぶ……

その直後、ヘルドは地面に両足を付け、両手を上にあげると宣言する


「俺の負けだ……」


その直後、観客席から大きな歓声があがる

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