第65話-情報戦-
「と……息巻いて来たのはいいんだけど」
リーナはリノエ達と別れた後、1人溜息を付きながら独り言を洩らす
「……私が情報屋を引退した話は同業者に伝わってるだろうし」
そう思いながらもリーナはある場所を目指す
そこは……ただの民家に見えて、中は情報屋達の集合場所
グループを組んで活動する団体の中、リーナはここが『大手』だと思い尋ねるため
扉を開け、扉を裏を軽く笑顔でノックし、中でこちらを睨んでいる数名に言う
「こんにちわ」
「……」
しかし、リーナの言葉に誰1人として答える事はなく
ただ無言でリーナを睨み続けている
それに怯える事なく、リーナは笑顔で話続ける
「あれぇ? ここって『情報屋・エルゴニ』じゃなかった?」
その言葉に睨みを効かせていた数名の顔が少し揺らぐ
その直後、奥から50代ぐらいの男性が顎の髭をさわりながらリーナの前に来ると
笑顔でリーナに話かける
「お嬢ちゃん、よくここがエルゴニだと知っていたね」
「それは……ええ、わざわざ情報を買ってここを探していたんです」
「ほぅ……そこまでして売りたい情報があると?」
「はい」
リーナは目の前の男性が自分を知らないと悟り、
わざと情報を売るためにここまで来た『ただの小娘』を演じている
「……で、どんな情報だい?」
「実は先ほど街を歩いていたら、クラウと呼ばれた男性が
賭け勝負をしようと騒いでいた男性に決闘を申し込んだんです」
「ふむ……なるほど、あのクラウなら……まぁ理解できる」
「それなら……買っていただけますか?」
「ん? でも……今俺達が狙っているのは『九重』と言う女だ」
『……雅を? ここは……ちょっとだけ頑張っちゃおうかな』
リーナは主旨を変えた、最初はクラウが言った嫁発言を消すために
わざわざここまで来たのだが……今の話を聴いたかぎり
この連中が雅を狙っている事がわかっため、リーナは笑顔で話を続ける
「その九重って子、私少しだけど話をした事がありますよ」
「本当か?!」
男性はリーナの顔に顔を近づけ、まるで興奮したように言う
その状態にリーナは目を細め……男性に言う
「はい、あ……もしかしてこっちのお話のほうが売れます?」
「ああ、もちろんだ、そっちの話をしてくれれば
さっきの情報と一緒に高額で買うぜ」
「えっと……九重って子は弓を持っていました
服装は変な服を着ていて……」
「その辺はこっちも知っている……ただ、最近
その変な服を見なくなったせいで、九重って女が見つからなくなった」
『無能でしょ』
リーナは心の中で男性の言葉に突っ込む
しかし、それを口に出さず……リーナは話を続ける
「それで、その後……服屋さんに入っていって服を買ったみたいですね」
「服を? どんなのかわかるか?」
「えっと……赤と白のワンピースですね」
「ほぅ……なるほど」
もちろん、赤と白はリノエの方で……雅の服ではない
『変装』をしているように情報屋に思わせ、さらに人を違わせる
これこそ情報屋として戦うための『言葉』
「すみません、これぐらいしかわからなくて……」
「いや、十分だ……お礼はこれぐらいでいいかい?」
男性ズボンのポケットからだした額は『30』ベル
クラウと雅、あわせて15ずつと言うのはリーナに取って少ない
「あ、あの……お金はいいので決闘の事を広げてくれると嬉しいです」
「ん? なんでだ?」
「実はその周辺のお店で働いてまして、お客さんが来てくれると嬉しいんです」
「ああ、なるほど……そういう事か
そういう事なら、引き受けた、野郎ども」
男性の言葉に座りこちらを見ていた男共は立ち上がり、家の外に出て行く
それに合わせ、リーナと話をしていた男性はリーナに話かける
「まぁ、そんなわけだ……後はまかせな」
「ええ、『まかせました』」
リーナはそういうと男性に頭を下げ、店の外に出る
そして……その民家から離れた場所で細く微笑みながら
小さな声で独り言を言う
「大手ねぇ……所詮は金の亡者、あんな口車に簡単にのせられて
それも『10』ベルをくれるなんて、ありがたいお話よね」
そう先程男性が手に持ったお金にわざと手をぶつけ
地面に落とさせると……それを一緒に拾いつつ、お金を自分の懐に入れた
相手がそれに気づいてリーナに言えば、返す予定だったのだが
男性はリーナにお礼を言うと、懐にお金をしまった
「これだから平和ぼけした……大手のコバンザメは美味しいのよね」
リーナは笑顔で走り出すと、リノエ達に追いつくために急ぐ




