第57話-優しさと強さ-
その頃……雅は1人、部屋の中で悩んでいた
『んーこの服だと肩に弓を背負うと痛いよね……
でも……手で持ってると邪魔になるし……』
雅は腕を組み、左手を顎に当てながら考える
しかし……良い案が思いつかず悩む
そして、今度は左手をやめ、右手を顎に当て……それを繰り返す
そんな事を何度もしていると……リノエが部屋に戻ってきた
「まだ悩んでいるんですか?」
リノエがクラウに向かって可愛いポーズをした後
クラウは苦笑を浮かべながら『雅ちゃん、遅いから見てきてくれ』と言われ
リノエは部屋の扉をノックするが返事がなかったため中に入った
その事に雅はまったく気が付かず、今驚いている
「あ……れ? いつ戻ってきたんですか?」
「今ですよ、私はちゃんと部屋ノックしたんですけど……
気が付きませんでした?」
「ごめんなさい……」
雅はリノエに頭を下げる
するとリノエは雅の頭に右手で軽く置いた後
リノエは自分のベットの上にあるメイド服の上を手に取り
その後、リノエはメイド服の下のポケットからナイフを1本取りだすと
雅は驚いた表情でリノエに言う
「ナイフがあったんですね……」
そのナイフは折りたたみ式の果物ナイフ
リノエ曰く『果物を斬る時に困るので』と雅に説明したのだが
雅自身……内心では『護身用かな?』と思ったのである
そしてリノエはナイフを持ったままベットの上に座り、自分の持っている
メイド服の上の袖をナイフで切っていく……
その行動に驚き、雅は慌てながら止めようとするが、既に時は遅い
リノエは自分のメイド服の両袖を切り持っている
「リノエさん……?」
「雅、こっちに来てください」
「え? あ、はい」
雅はリノエの座っているベットの方へ行くと
リノエは雅の右手を取り、自分の膝の上座らせてる
その後、リノエは先程切った袖の部分を雅の右肩に合わせる
「あの……リノエさん、何を?」
「……私の袖の部分で使って雅の弓を担ぐ部分を作るんです」
「え?!」
雅は驚いた声を上げるとリノエは無言で合わせた後
雅をベットの方へ座らせ、自分は立ち上がり部屋の外に出ていく
「え?」
その行動に驚きと疑問の状態の雅は黙ってそこで待っていると
リノエはすぐ戻ってきて、またベットの上に座り雅に話かける
「宿屋の主人から裁縫道具をお借りしてきました」
そういうとリノエは雅を軽くだっこすると自分の膝の上に乗せ
雅のワンピースの右肩にメイド服の両袖だった物を合わせ縫いだす
「この色なら……さほど目立ちませんから……大丈夫」
自分の後ろで裁縫をしてるリノエに雅は前を向いたままリノエに聴く
「どうしてそこまで……? 弓は手で持ってもよかったのに……」
「たしかにそうしてくれた方が速かったですね、でも」
リノエの言葉に雅は下を向き、申し訳なさそうな表情で浮かべた後
リノエはそんな雅を余所に話続ける
「雅は弓を背負いたかった……そっちのほうが大事です
だから……私ができる最大限の事を雅にしてあげるだけです」
「リノエさん……どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「……さぁ?」
雅は後ろを振り向き、リノエの顔を見た時
リノエは微笑みながら雅のワンピースを縫っている
その頃、リノエが宿屋に入った後
クラウはその場に座り……下を向いている
そんなクラウにリーナは立ったまま話かける
「何? どうしたの?」
「いや……凄く変な物を見た気がして……」
「ぁ……ああ、あのリノエさんのポーズ?」
「あれってメイド店でメイドがやってくれるポーズなんだ
それを完璧に俺の前でやるとは……」
「……凄いのか凄くないのかわからないわね」
「……なんて言うか、リノエは凝性なんだよ
一度やると決めると、完璧を追い詰める人で」
「なんとなくわかるけど……」
「……まぁ、この話は路上強盗を叩き潰してからにするか」
クラウそう言い立ち上がる
リーナはその言葉に辺りを見回すと、路地裏から店の前の道に2人
そして奥に行く道に黒いフードを被り小型のナイフを持った人物
計4人に包囲されている
「……リーナの知り合い?」
「さぁ? さっきクラウがいじめた相手の仲間じゃない?」
「あれはリーナの知り合いだろ」
そんなやり取りを余所にフードの人物達はクラウ達へ距離を詰める
それに対応するように背中合わせでクラウとリーナは立ち、素手を構える
「……腕が錆びついてなければ、こんな奴らには負けるなよ?」
「もちろん、あんたこそ……負けないようにね」
クラウとリーナはお互いに目の前の2人のフードの人物を相手にする
狭い路地裏、それも人2人が精一杯
そんな状態の中、リーナは思いもよらない行動を取る
それは、ジャンプし右の建物の壁を軽く蹴り、反動をつけると
フードの人物の顔めがけ回し蹴りを放つ
その動作に驚いたフードの1人はリーナの回し蹴りを直撃し
吹き飛ばされ、リーナはその場に着地
その直後、もう1人のフードの人物がリーナめがけナイフを突く
しかし……リーナはそれをバク転でかわし……元の位置に戻る
「やるな」
「そう?」
リーナの動作を横目で確認しながらクラウは目の前のフードの人物2人を牽制し
リーナと自分に近寄らないようにしていた
それに気づいていたリーナは合えて、自分の目の前の人物達を倒す事にしたのだ
「もう少し持つ?」
「誰に言ってるんだ? 余裕だ、余裕」
「そ、じゃあお願い」
リーナは目の前の人物めがけ走る、それに合わせフードの人物は
リーナにめがけ、右手に持っているナイフで斬りかかる
「ばればれ」
しかし……リーナは右足を上げ、フードの人物の右手を蹴り飛ばし
ナイフをどこかへ吹き飛ばした直後、今度は左足でフードの人物の顔を蹴る
すると、フードの人物はそれを防げず顔面に直撃し、その場に倒れる
「ふぅ……私の腕もまだまだ現役っと、さて……あちらのお手並み拝見」
リーナは腕を組み、壁に寄りかかるとクラウの方へ向く
その直後、一番初めに吹き飛ばしたフードの人物がリーナの背後から近寄り
『貰った!』
ナイフをリーナの背中めがけ突き刺す
しかし……リーナはそれを右足を後ろにあげ、蹴り飛ばす
「だからばればれ……って言うか、邪魔しないでよ」
そういうとリーナはその場で回転し、フードの人物の顔に回し蹴りをする
その回し蹴りは見事にフードの男性の顔を直撃し、その場に倒させる
「……まったく、殺さなかっただけましでしょ……」
そう……リーナは人を『殺してはいない』
自己防衛に従い、防衛したまでで……さらに相手を気絶させただけ
けして何か取ってるわけでもなく、殺してるわけでもない
リーナは倒れたフードの人物を少し見た後
また腕を組み、壁に寄りかかるとクラウの援軍にはいかず
微笑みながらクラウの方を見ている




