第55話-1つの疑問-
「……遅い」
リーナは過去を振り返り……しばらく宿屋の前で待っているのだが
3人は宿屋の外にでてくる感じがまったくないので
リーナは宿屋に入り雅達の部屋の前に辿りついた時
リーナの目の前でクラウが壁に寄りかかり座っている
それに疑問を感じたリーナは両手を腰に当て、前屈みになると
座っているクラウに質問する
「何してんの?」
「あ……リーナか、実は……」
クラウの話を聴くと内容はこうだ
リーナに言われ、クラウは2人を呼びに行き、雅達の部屋の扉をノックすると
中から雅の声だけが聴こえ、リノエの声が聴こえない事が気になったクラウは
部屋の扉を開けた……するとクラウの目の前には……
「で、2人の下着姿を覗いたと」
「いや、まぁ……事故だろ?」
クラウは右手を顔に当て、罰の悪そうな顔をする
その気持ちはリーナが男性ならば少しは理解できたのだろうが
女性側のリーナにとっては呆れるほかない
「……で、謝ったの?」
「いや、見た瞬間……リノエに殴り飛ばされてここにいる」
「……なるほど、まぁ……私が中見てくるからクラウはそこで待ってて」
「了解」
リーナは部屋の扉をノックする……すると中から雅の声で『はーい?』
と聴こえるので、リーナは『リーナだけど、入ってもいい?』と聴くと
『どうぞー』と聴こえるのでリーナは中に入るため、扉を少し開けると中に入る
それを見たクラウは1つの動作を忘れてる事に気づく
『……確認すればよかったんだな』
そしてリーナが中に入り2人を見ると、2人はリーナの店で作った服を着ていた
雅は白と赤のワンピース、リノエは赤と白のワンピースに……カチューシャ
「ねぇ……そのカチューシャは合わないと思うんだけど」
「……そう思います?」
「うん……」
リノエは2人の服を褒めるよりも速く、リノエの頭のそれにたいして突っ込む
すると、雅が隣でリーナとリノエに聴こえるように言う
「私言ったんですよ? その服に合わないからやめたほうがいいって……」
「そうしたら、メイドだからカチューシャはつけなきゃだめって?」
「え? リーナさん、よくわかりましたね……」
「え?! そうかしら? 今までのこの人を見ているとそう思っただけよ」
「あ、なるほど……」
そう……リーナは前のリノエを知っている
だからこそ、このリノエと言う人物の凝りようは理解できた
だから雅の言葉を理解し、その答えをだしてしまったのだ
『危ない危ない……リノエにまで思い出されたら私の未来がないわ』
「……リーナさん」
「え? な、何かしらメイドさん」
「赤と白、なかなか悪くないですね」
リノエはそういうとその場で一回転すると
リノエの茶色のセミロングの髪も軽やかに回転する
「綺麗……」
雅はリノエのそう行動に見惚れ、言葉がでてしまったのだろう
その言葉にリーナは微笑むが、リノエは両手で雅の口を覆うと
恥ずかしそうに言う
「み、雅……そういう事は私に言わないでください」
「ぅ? んんしてんですん?」
口を押えられたままの雅が言葉を発するが
その言葉は理解できるような言葉ではない
しかも……
「み、雅っ……くすぐったいです」
リノエは雅から両手を離し、恥ずかしそうに両手を前に組んでいる
それを見ながらリーナはある事を思う
『この人……本当にあのリノエ? こんな感情豊かだったかしら?』
リーナの知っているリノエはもっと冷静で恥ずかしい態度をよりも
クールな方がリーナの頭のイメージにこびりついていた
だからこそ、今目の前で雅と話をしているリノエが別人に見えてしまう
『双子……? まさかそれはないわね……でも気になる』
そう思ったリーナは2人の言う
「うん、まぁ……服が似合っててなにより、さて……外のクラウをまたせると
悪いから、私は先に外に出てるから……速く来てね、また下着見れちゃうわよ」
「あ、はい……」
リーナのそう言葉に雅は恥ずかしそうに両手でワンピースを握り下を向く
そんな雅の頭をリノエは左手で撫で、優しく言う
「所詮クラウなので……気にしなくていいですよ」
その光景を横目で見ながらリーナは部屋の扉を開け
部屋の外で待っているクラウに話かける
「ね、ちょっと話があるから宿屋の外まで来て」
「ん? 告白ならお断りだ」
「だれがあんたなんかにするのよ……」
「さすがにそれは酷くないか?」
「そう? まぁ……2人はそろそろ来ちゃうから早めに」
「……わかった」
クラウとリーナは宿屋の外に足早で出ると……先程の路地裏に入り
2人は両側の壁に寄りかかり話を始める




