第49話-金紅と俊隠-
「あ」
雅が部屋の外に出て少し歩いた時、思い出したように声をだし
また部屋に戻るため歩き出す、それを見ながらリノエは雅に話かける
「どうしたんですか?」
「あ、ちょっと忘れ物を……」
「わかりました、ここで待ってますね」
リノエは廊下の窓側の壁に寄りかかり、雅にそういうと腕を組み、両目を閉じる
それを確認した雅は部屋の中に入り、綺麗に直されている自分のベットの前まで
来ると……突然服を脱ぎ始める
「遅いですね……」
リノエが目を開け……雅が中々外に出てこない事に疑問を感じ
リノエは部屋の扉をノックし、部屋の中の雅に話かける
「雅? 何かあったんですか?」
すると部屋の中からバタバタと雅の足音が聴こえる
それに少し違和感を感じたリノエは慌てるように部屋の扉を開ける
すると、リノエの目の前には丁度、リーナから貰ったワンピースを着た時である
「……何かと思えばお着替えですか」
「え、えっと……せっかく貰ったので」
昨日、寝る前にリーナが雅とリノエに服を渡した
リノエ自身もそれを忘れており、リーナは思い出したかのように
クラウとの話の後、店まで戻りわざわざ取りに行ってくれたのだ
『……正確には2人とも忘れてたんですけどね』
「あ、そういえば、リノエさんのもあるんですよね?」
「え、……あーえっと、ありましたっけ?」
リノエは誤魔化すように雅に言うと雅はリノエのベットの下から
それを取り出し、両手で持ち、見せる
「これ? ですよね、綺麗に畳んで下に紙まで引いて置いてあったので」
「……それはリーナのですよ」
「たしか昨日、リノエさんのって……」
「……」
「……」
雅の発言から2人は黙っていると、雅が持ったままの服を見ながら言う
「この服、色いいと思いますよ? 赤と白ですもん
ぜったいリノエさんに似合うというか……」
その後、雅は小さな声で喋る
「私と色が逆でペアぽいかも」
その言葉を聴いてしまったリノエは両手を腰に当て、溜息を付くと
頭のカチューシャーを取り、メイド服を脱ぎながら雅に言う
「わかりました、それに着替えますよ……雅、手伝ってください」
「あ、はい」
その頃……宿屋の外で待ちぼうけを食らっているクラウとリーナは
少し、イラついていた
「……遅い」
「遅いわね」
「……たしかに、女性の支度には時間がかかるが……」
「……ねぇ、私はここで待っているから様子見てきてよ
もしかしたら2度寝しちゃってるかもしれないし」
リーナは微笑みながらそうクラウに言うと、クラウは『そうかもな』と言い
宿屋の中に入っていく、それを見ながらリーナはポケットから紙切れを1枚
取り、広げると……そこにはこう書かれていた
『弓使いの魔法の正体を見つけろ、報酬は……』
その紙に睨むように見た後、リーナは一言、その場で喋り、その紙を破る
「バカバカしい……たしかに最初は調べようと思ったけど
今は……あの3人と一緒のほうが楽しいのよ」
すると、宿屋の横の路地から黒いフードの男性がリーナの前まで歩き
リーナに話かける
「最速情報屋のリーナが依頼を断るとはな」
「悪いけど、その情報屋、今ここで廃業、今後は別を当たって」
「ふん、それなら以来金を返してもらうぞ?」
「あー、それならある子の服を作るのに『全額』使っちゃったわ」
「……」
リーナのふざけたような態度にフードの男性はフードの下のポケットから
小型のナイフを取り出し、リーナを突き刺そうとする
しかし、そのナイフがリーナをとらえる事はない
「そのナイフは何かしら? 送り物?」
リーナはそのナイフの持ち手を既に掴んでおり
微笑みながらそのナイフだけを見ている
「……手を離せ」
「嫌よ、って言うかさ……あんたのほうが危ないわよ?」
「あん?」
その直後、フードの男性の背後から衝撃が走り
フードの男性は路地に吹き飛ばされ、気絶する
「まったく、ナンパを宿屋の前ですると……」
「あら、クラウ……どうして戻ってきたの?」
「行こうと思ったんだけど、変な男と話してるの見て、ついな」
「そっ」
リーナはクラウに気づいていた、クラウが宿屋に入り
宿屋の廊下を横にまがった時、クラウはそれ以上、動かなかったのを
それに、クラウもリーナがフードの男性に話かけられてるのに気付き
少し様子を見た後、ナイフの存在に気づき、戻ってきた
「しかし、私を助けるとはね……クラウ」
「……別に助けなくてもいいんだがな、雅ちゃんが泣いちゃうから
助けて『やった』までだ」
「……そ、じゃあ雅に感謝しないとね」
「そういう事だ、さて……俺はもう一度、部屋を見てくる」
「はいはい、いってらっしゃい……金紅のクラウ」
「……いってくるよ、俊隠のリーナ」
そう2人は小さな声で話すとクラウは右手を軽くあげ、宿屋の中に入る
それを見送った後、リーナは睨むようにクラウを見、心の中で思う
『まさか……私の呼び名まで知ってるとは……
あいつ、予想外に馬鹿じゃないわね』
それだけ思うと、リーナは先程のように宿屋の前で立ち、3人を待つ




