第46話-言葉には気を付けよう-
「でも……賭けは賭けだし……お金は払うわ」
ロナリィはそう言うと雅の前まで歩き、ポケットから財布を出すと
紙幣を掴んだ時……クラウがロナリィの紙幣を持った腕を掴み言う
「……俺の分の抜かして半分でいい」
「は? それだと賭けの意味がないでしょ?」
ロナリィがクラウの言葉に突っ込み、その手を振り払おうとした時
クラウはロナリィの腕を握っていた手を緩める事無く、さらに力を入れる
しかし、ロナリィは痛がりもせず……クラウを睨みつけている
「違う、お前のパートナーの分はいらないって事だ」
「……どういう意味?」
「慰謝料ってやつだ、俺が重傷を負わせたからな」
「……それでいいの? 雅」
「はい、クラウさんがそういうのなら私は全然構いません」
雅はベットの上に座ったまま、ロナリィの顔を見ると笑顔で答える
すると、ロナリィは苦笑を浮かべながら財布の紙幣を半分掴む
それを確認したクラウはロナリィの腕から手を離す
そして、ロナリィはその紙幣を雅に渡すと、雅はそれを両手で受け取る
その額『2,000ベル』、紙幣4枚……雅には少ないように見えたが
クラウは驚いた表情をロナリィに言う
「こんなに……良いのか?」
「良いのか? って……私の財布に入っている半額がそれ」
「って事は財布の中に4,000も入ってたのか……」
「そういう事、あんたみたく遊んでた訳じゃないからね」
ロナリィは皮肉めいた事を言うと、部屋の入口の扉まで歩いて行き扉を開け
後ろを振り向くと……クラウの顔を一瞬見た後、雅の方へ向き言う
「また、会いましょう……雅、次会う時は『その』力、教えてね」
「え? あ、はい」
「それじゃ」
ロナリィはそれだけ言うと部屋を出て行く
しかし……ロナリィの最後の言葉を雅は理解できていない
「えっと……『その』力って一体……?」
「なんでしょうね、私にもわかりません」
リノエは微笑みながら雅の質問に答えると雅は首を右に傾け『?』と言った
表情で悩んでいる、それをリノエとリーナが口を押え、笑っている
そんな光景を見ながらクラウは雅の左手を握ると、リノエが睨みながら言う
「……そこのクラウ、なんで雅の手を握ってるんですか?」
「え、いや……ほら、パートナーだし、それに疲れたかなぁって思って」
「疲れたら手を握るんですか……それも女性の」
「ほ、ほら……一緒にねよ……」
クラウがその言葉を発するよりも速く、リノエがクラウめがけ
持っていたロングソードの柄ごと、クラウに投げつけると
クラウは驚いた表情を浮かべながら剣を手で取り、リノエに怒鳴る
「あ、危ないだろうが!」
「あんたが雅に変な事を言おうとしたのが悪いんです」
そういうとクラウはロングソードをリノエに投げ返した直後
リーナがクラウの目の前まで歩き、クラウの頭にチョップする
「っ……痛いんだが?」
「じゃあ、その手をささっと離して部屋の外にでようか」
「いやいや、手を離すのはいいが、どうして部屋の外へ?」
「そりゃあ寝るからに決まってるでしょ、あんたの昔話のお蔭で
もう夜な上に夜ご飯食べてない、なら……寝たほうが楽だからよ」
「楽って……リーナはお腹空かないのか?」
「空かない、というか今から食べたら太るだけ」
「別に少しぐらい太っても……」
その言葉が……部屋の中に殺意を生んだ
その殺意に気づきクラウは雅の手を離し、慌てて立ち上がったが
時、既に遅しと言わんばかりに、笑顔のリノエとリーナがクラウを見ている
そんな2人にクラウは笑顔で言う
「ど、どうした? 何かいい事でもあったのか……?」
「ええ、それはもう……ちょっと部屋の外まででましょうか……」
「そうね、私もメイドさんに賛成」
リノエとリーナは両脇からクラウの腕をつかむと部屋の外へ引きずる
その光景を只々黙って見ていた雅に気が付いたクラウは声をかける
「雅ちゃん?! 見てないで助けてくれると……嬉しいんだけど」
「……えーと、頑張ってください」
雅は笑顔でクラウに手を振るとクラウは絶望の表情を浮かべ下を向く
そして3人は部屋の外へ行くと……リノエが笑顔で雅に言う
「雅、先に寝ててください、私達はこの人をぼ……ではなくて
お話がありますので」
「わ、わかりました」
「じゃ、おやすみ、雅」
「おやすみなさい、リーナさん」
リノエとリーナの言葉と共に部屋の扉は閉められ、ずるずると引きずられる
音と共に3人は宿屋を出て行くと、雅はベットに横になり、眠りに付く……




