第37話-ロナリィの疑問-
「ばいばい……!」
『私の魔法でね』
ロナリィは雅の前まで来ると剣を上段から振りかぶる
しかし……その攻撃にロナリィの力は籠められていない
雅の防ぐ力を利用した『衝撃反射』をするため
「っ……」
雅はロナリィの攻撃を短剣で防ぐ
その瞬間、ロナリィは微笑み『勝った』と思った
しかし……ロナリィの魔法は発動しない
『え……どうして? ま、まさか……私の魔法って1戦に1回?!
そんなわけないわ……前はちゃんと使えたし……』
そう思いながら自分の剣を防いでいる雅を見るが
雅はなんの変哲もない短剣で防いでいるだけ
それはロナリィに取って今までの戦いの中で一番驚いた事なのかもしれない
そんな事で動揺しているロナリィを余所に雅は短剣で剣を弾き
後ろに下がった時、クラウが雅の隣の走ってくる
「悪い、またせた……大丈夫?」
「は、はい……大丈夫です」
「しかし……あいつ相手に良く1人で……でも何か様子が?」
「私にもわからないんです……」
クラウがロナリィの方を見ると
ロナリィは茫然と立ち尽くし何やら考えてる様子である
「……あなた、私と1対1で勝負しなさい」
ロナリィは急に雅を指さすとそう言う
その言葉に反応したクラウがロナリィに怒鳴る
「おい……これはペア・バトルだ、1人がやられた時点でそっちに勝ち目はない」
「……そういう問題じゃないのよ」
「……?」
ロナリィは真面目な顔でクラウを見る
それは雅とクラウから見ても可笑しな光景で
戦いの真っ最中なのだが、ロナリィは攻撃してくるわけでもなく
こちらに話かけてくる、もちろん……その光景に観客は動揺している
「……どうなの? もしも、この条件でそっちが勝ったら賭けの物2倍でいいわ」
「いやいや、そんな分の悪い条件受けるわけが……」
クラウがロナリィにそう言いながら雅を見ると、雅は半歩後ろに下がり
短剣を鞘に仕舞い……弓を両手持つ
その雅の態度にロナリィは嬉しそうに下を向くと小さな声で言う
「ありがとう」
しかし、その雅の行動にクラウは納得できない様子
だが……クラウは首を横に振ると雅に言う
「あとで理由教えてね、雅ちゃん」
「……はい」
そういうとクラウは2人から距離を取ると剣を鞘に仕舞う
そして……広場が静まりかえる
それは、雅とロナリィ……2人対決が始まるのに気付いた事
「……あなた、名前は?」
「雅、九重雅です」
「九重ね……じゃあ、行くわよ」
「雅でいいですよ、ロナリィさん」
そう雅が言うとロナリィは頷き、雅に走り込む
2人の距離は短くロナリィに有利に見えたが、それを雅は許さない
雅は間隔を明けず、矢を放つ
『っ……さすがにつらいかも……』
雅自身、速射に自身はない……それをいきなりやろうとしてるのだがら無理はある
その矢を1発1発正確にロナリィめがけ飛ばしている力量は並大抵ではないが
『……違う、これはあの子の魔法なんかじゃない、あの子に技量ね』
ロナリィは冷静に雅の矢を剣で払いながら思う
ロナリィの魔法『衝撃反射』を防いだのは魔法か、それとも別の何かか
それが気になり、雅にいっきうちを申し込んだ
『……やっぱり接近のほうみたいね』
ロナリィは一気に走る速度を高め、雅に接近すると剣を横から振る
その攻撃に対応しきれず、後ろに転び、尻餅を付く雅
それに追撃するようにロナリィは剣を雅に突き刺すが……
雅は間一髪の所で短剣で防ぐ
『やっぱり……私の魔法が発動しない
こっちから攻撃してるから……?』
そう思ったロナリィは雅から半歩後ろに下がり、雅の短剣による攻撃を誘発する
それに釣られる形で雅はロナリィに短剣を振るう
『ここっ!』
ロナリィは雅の攻撃を受け止め……完全に魔法が発動する条件に達した
しかし……衝撃反射は発動せず、ただ剣と剣がぶつかる音が響く
『……なんなのよ』
その一瞬、雅だけが『それ』に気づく
それは……自分が振るった短剣がロナリィの剣とぶつかる時
一瞬だが、薄く光輝いた事を……




