第34話-戦いの前の安らぎ-
「さて……着いたわよ、私は申し込みしてくるから待ってなさい」
「はいよ」
闘技場の入口前に辿りついた女性と雅達
女性はクラウに話かけると受付のフードの男性の所に行き何やら話を始める
その待っている間、リノエは小さな声で雅に言う
「雅……あの人の使う武器は……」
「言わないでください」
雅はリノエは口に左手を当て、首を横に振る
もちろん……雅から見てもわかる通り、女性の腰にロングソードがある
しかし、女性が必ずしもその武器を使うかはわからない
リノエはそれを教えるつもりだったのか、それとも別の事なのかは
雅にもわからないが……リノエが喋ろうとしたのを雅は止めた
そんな雅の手をリノエは右手で優しく外すと雅に声をかける
「……いいんですか?」
「はい、正々堂々……向こう側も同じ条件ですしね」
「それはそうでしょうけど……」
誰から見てもわかる通り、クラウと雅にも武器がある
それを使うか、使わないかは……相手にも同じ条件
「メイドさん、雅が良いって言ってるから、いいんじゃない?
私達が戦うわけでもないんだし、でしょ? クラウ?」
「ああ、その通り……雅ちゃんが良いって言うのなら、俺も同じだ」
クラウはリーナの言葉に頷いた直後、女性がこちらに近寄り話かけてくる
「準備ができたわよ、クラウ達は右側の入場口、私達は左側から
それでいいわよね?」
「ああ、問題ない」
「じゃあ、行きましょうか」
女性に案内される間々、4人は歩き闘技場の中に入り
観客席へとあがる階段の前でリノエとリーナに別れを告げ
クラウと雅は左に歩き、女性は右に歩いていく……
その道中、クラウは大きく両手を交差させ、上にあげながら雅に言う
「ごめんね、変な事に巻き込んで」
「いえ、大丈夫です……緊張してますけど……」
「そういう時はあれだよ」
「え?」
「俺が抱きしめれば緊張はほぐれるさ、どう?」
クラウは両手を開き、雅に懐をあけると……雅は笑顔で首を横に振り言う
「ふふ、大丈夫ですよ……緊張を解そうとしてくれてありがとうございます」
「あら、わかっちゃったか」
クラウは右手で頭の裏をかきながら雅に笑顔を浮かべる
それは……わかりやすくもクラウなりの優しさに雅は気づいている
しかし、それとは裏腹にクラウの内心は戦いとは別の方向へ行っていた
『……笑顔可愛いな……って、それどころじゃない
今は勝つことに集中、向こう側が何を言ってくるかわからない』
そして闘技場広場の前まで2人が来るとフードの男性が雅達に話かける
「君達が『決闘』の申請者か……賭ける内容は向こう側から聴いてくれ
ただし、観客には聴かれないように注意してくれ」
「わかりました」
「了解」
「じゃあ、入ってくれ」
2人がフードの男性の横を通り、広場の中に入ると
そこには先程の女性ともう1人……隣に人が立っている
その人物は男性で、体格はクラウと似ている
髪型は黒のショートカット、上下黒色の鎧で武器は『斧槍』を右手で持っている
「……チッ、めんどくさい相手だな」
「え? クラウさん、あの人知ってるんですか?」
「いや、知らないけど……あの『斧槍』がね、嫌いなんだよ」
「なるほど……」
雅とクラウが話ながら広場の中央まで行くと女性が微笑みながらクラウに言う
「やっと来たわね……で、賭ける物は決まったかしら?」
「ああ……雅ちゃんが言ってくれる、その前に
そちらがこちらに要求するのは何だ?」
「言ってなかったね、それは……」
「それは?」
その後の言葉に女性以外の全員が驚く事になる
「クラウと私の結婚よ! あなた達が負けたらすぐさま結婚式よ!」
 




