第33話-他から見た雅の様子-
そう……雅とクラウは3日間パートナー契約を結ぶ事ができない
それを違反すれば、運営側から何か処罰などが与えられる
そんな状態で……決闘の約束をしてしまった
「……やらかしたな」
クラウが腕を組み、悩み出す……そんなクラウにリノエは料理を1口食べた後
飲み物を飲むと両手を膝の上に置きながらクラウに言う
「クラウ……あの人の話をちゃんと聴いてましたか? 『決闘』ですよ?」
「あ……そういう事か」
「え?」
雅が2人の話に首をかしげているとリーナが説明してくれる
「決闘はツヴァイ・ユニット・バトルと関係ないのよ
まぁ、闘技場を使う事に関しては同じだけどね」
「……?」
「簡単な話でランキングとお金を貰う部分はなしの変わりに賭けをするのよ」
「賭け……ですか」
「そうですね、街の中でも争いを防ぐ物として、運営側の同意の元できる
決闘、ただし……観客はいつも通りいるので、ペアバトルなんです」
リノエは雅の横から説明してくれる
雅はその話を聴いた後……リノエに質問する
「その……賭けって、上限みたいなのはあるんですか?」
「上限ですか……たしかですが、命以外なら大丈夫なはず
嫌な話、人身売買もいいとか言う話もありますね」
「……」
リノエの説明に雅は黙ってしまった
『命以外なら大丈夫』、たしかに賭け事はお互いの同意の元、行う事は
雅も知っていたし……自分の世界で漫画やアニメで聴いたフレーズ
しかし……今実際目の前でその言葉を聴くと寒気のような物を感じてしまう
「まぁ……どうせ、彼奴が勝ったらもう一度、俺とパートナー組み
とか言うつもりだし、雅ちゃんは心配しなくても平気さ」
「は……はい、後、決闘っていつやるんでしょうね……?」
「ん? んー……何時だろうね、あちらが俺達に言いに来た時じゃないかな」
「なるほど……では今ですね」
リノエは腕を組み、クラウの後ろで立っている人物を見ながら言う
クラウはリノエの言葉で後ろを振り向くと、そこには先程の女性がいた
「クラウ、決闘よ……闘技場まで来なさい」
「……今、食事中なんだが」
「さっさと食べなさい」
「ていうかだ、俺にお前の食事代を払わされた挙句、食事中に決闘だ?
お前にはマナーの1つもないのかよ……」
「っ……わかったわよ、外で待ってるから早くしなさい」
そういうと女性は店の外の出た所の入口で待っている
それを見ながらリーナはクスクスと笑いながらクラウに言う
「まだ30分ぐらいしか立ってないのに早いわね
よっほど、クラウにご執心って事かしら」
「やめてくれ……俺は雅ちゃんと組むんだ」
しかし、当の雅は食事を食べる手を速めている
それは、女性を待たせないための物なのだろうが……
今のクラウの言葉を聴いていない、それを横目で見ながらリノエはクラウに言う
「……タイミングが悪かったと言うことで」
「……だな、さて俺はもういいから、先に金を払ってくる
2人は雅ちゃんを見ててくれ」
「はい」
「了解」
クラウが椅子から立ち上がり、店員の所まで向かったのを確認した
リーナは急いで食べている雅に話かける
「そんなに急がなくても大丈夫、あと……雅」
「……なんですか?」
食べる手を遅くしながらもスプーンを片手に持ちながら雅はリーナの方へ向く
リーナはその行動を気にせず、話を続ける
「雅はさ、クラウの事……どう思っているの?」
「クラウさんですか? えーと……」
雅の次の言葉をリノエとリーナは待っている
そして雅が口を開き言った言葉は……
「お兄ちゃんみたいな人ですね」
「お、お兄ちゃん?」
リーナは唖然とした顔で雅に聴き返すと……雅はそれに答える
「ですね、優しくて頼りになって……私一人っ子なんですけど
お兄ちゃんがもしいたら、クラウさんみたいな人がいいですね」
その言葉にリーナは雅に『ごめん、もう食べていいよ』と言う
そしてリノエは小さな声でリーナに話かける
「これは……クラウに言わないほうがいいですよね?」
「そうね、向こうは気を引こうと頑張ってるのに……雅の方は
お兄ちゃん扱い、これはクラウはもっと頑張らないと……」
「まぁ、付き合いは長くないですが、雅らしいと私は思いますけどね」
「雅らしい?」
「そうです、なんというか……ここに来て、最初に仲良くなった男性が
クラウなわけで……そこで優しくされて、感情をそこまで抱かない
そのあたりが雅な感じがするんです」
「……ごめん、難しいから簡単に言って」
「ようは、雅……この子は、『仲良くする』までは行きますけど
それ以上は考えない子なんですよ」
雅が食べている横で女性2人がヒソヒソと話をしている最中
クラウが戻ってきて、椅子に座ると3人に話かける
「金は払った、後は……雅ちゃんが食べるの待つだけだな」
そういうとクラウは席に座り、片膝をテーブルに置くと雅が食べているを見る
その視線に気づいた雅がスプーンを銜えながらクラウの方へ向き
スプーンを右手で取り、テーブルに置くと……クラウに言う
「どうしました?」
「あ……いや、食べ方が綺麗だなって」
「そうですね……早く食べている感じは見てわかりましたが
汚くなく……上品と言うか綺麗な食べ方をしてますね」
リノエも横から雅にそういうと雅は下を向き、恥ずかしそうに言う
「私の家がマナーに厳しかったので……すみません」
「いや、良い事さ」
クラウは笑顔で雅に言う、リノエはそれに頷きながらクラウを見ると
満面の笑顔を浮かべている……それを見ながらリノエは思う
『まったく……何年もこの人のメイドとして働いていますが
この人がここまで感情をむき出しにするのは……戦闘だけだと思いましたよ』
そして、雅が食べ終わるのを待って4人は店の外に出た時
女性に怒鳴られる
「遅い! いつまで私を待たせるわけ?!」
「……勝手に来て、文句を言うのはどうかと思いますよ?」
「そうそう……あんたには常識がないんじゃない?」
リノエとリーナに睨まれた女性は1歩後ろに下がりながらクラウに言う
「……さ、さぁ……決闘よ、付いてきなさい」
「それはいいが……何を賭けるんだ?」
「その件ね、こっちは決まっているから……そっちはなんか考えて置いて」
女性は歩きながらクラウの言葉に前を向きながら言う
クラウは少し歩く速度を落とし……雅の横に来ると雅に話かける
「どうする?」
「え? 何がですか?」
「こっち側が相手に賭けてもらう物」
「えっと……」
「まぁ、俺は特にそういうのは興味ないから、雅ちゃんにまかせるよ」
「え?!」
雅が慌てる様子をクラウは微笑みながら見ている
それを後ろから歩いているリノエは他の人に聴かれないように独り言を言う
「あなたは好きな子をからかって興味を引く子供ですか……」




