第17話-聴いていい事、悪い事-
「えっと……この後、どうすれば……いいんですか?」
「うん? 契約ができるまでの3日間、雅ちゃんを鍛えようと思う」
「はい?」
雅は歩きながらクラウとリノエに質問すると
クラウは笑顔で雅の方を振り向き、そう言うが……雅はその理由がわからなかった
そのため、雅はもう一度、質問する
「えっと……きたえる? ですか?」
「そう、せっかく3日間もあるんだ、鍛えないと勿体ない
だよな、リノエ」
「ええ、そうですね……鍛えるのはいいと思いますが
少しは雅がこの世界に慣れるようにしましょう」
「たしかに……」
「あ……あの、鍛えるって街の中でやるんですか?
それなら、できないですよねっ」
雅は少し嬉しそうに言う、実際の所、雅は『鍛錬』が嫌い
というか、自分からするのは良いが、相手に言われるとやる気が削がれるタイプ
そのため、雅は少しでも『できない』理由を探そうとするが……
「ん? できるよ、あの闘技場の裏に鍛錬所があって、そこでできる
だから、そういう心配をしなくて大丈夫、安心していいよ」
『安心したくない……』
雅は心の中でそう思うが、その言葉が喉まで来たところで飲み込み
言わない事にした
「まぁ、今日はやらないで、明日からだから今日はリノエと一緒に
街の中で巡って楽しんでくるといいよ」
「そうですね、で……クラウ、あなたはどうするんですか?」
「俺はちょっと野暮用でね、今日はフリーにさせてもらうよ」
「わかりました……」
「……」
クラウが黙ってそこに立っているとリノエは腕を組み、クラウを睨みながら言う
「どうしたんですか? 行かないんですか? 行くならさっさと行ってください」
「いや、ほら……そんなに焦る必要はないから……」
「……雅も急いだほうがいいと思いますよね?」
「ほえ? あ……はい」
雅は急に話を振られ、少しだけ声が裏返りながら頷き答えると
リノエは笑顔でクラウに言う
「だ、そうですよ? あなたの『パートナー』さんもこういってますし
どうぞ、行ってきてください、雅の面倒は私が見ておきますので」
「……わかったよ、雅ちゃんを頼む……後、1つ頼み事がある」
「なんですか?」
クラウはリノエの右耳に小さくつぶやくように言う
それは雅に聴こえず……雅自身は少し首をかしげている
『雅ちゃんの服とかいろいろ頼む、俺は少し……『遊んで』くる』
『……なるほど、どうぞ、ごゆっくり』
リノエは両目を瞑り小さな声でクラウに言うとクラウはその場から歩きだし
背中を向けたまま、2人に手を振りながら言う
「じゃあ、行ってくるよ」
「お気をつけて」
「い、いってらっしゃい」
雅とリノエはクラウを見送ると、リノエは溜息を付きながら両手を雅の両肩に置き
雅を押すように歩きながら話始める
「さて……私達もいきましょうか」
「あ、あの……どうしてクラウさんを急がせたんですか?」
「え? そんなの簡単ですよ、あの人がいると……いろいろと『暴走』
するので、さっさと行かせたんです」
「ぼうそう?」
「ああ、雅はクラウの呼び名と言うか……不名誉な方を知らないんでしたっけ」
リノエはクスクスと笑いながら雅を押しながら歩く
押されている雅はそれが気になり、リノエに聴く
「不名誉ってどんなのか……聴いてもいいんですか?」
「別にいいですよ、クラウは『黄金の殺人鬼』って言われてたんですよ
でも……本当に笑えるような呼び名ですよね」
リノエは笑いを押さえながらそういうが雅がリノエの顔を見たときには
微笑みが抑えきれず、今にも笑い出しそうになっている
「黄金の殺人鬼……髪が金色で黄金……殺人鬼は戦いの勝ち方?」
「そうですね、黄金はその名の通りで、殺人鬼のほうは……
あの人、戦いになると血の気が多すぎて、性格が変わるんですよ」
「そ、そうなんですか?!」
「そうです、まぁ……あの人と組むのは雅なのでしっかりと
コントロールしないと、収拾が収まらなくなるので……お願いしますね」
「聴かないほうが……よかった……」
雅はリノエに押されながら空を見上げ、ただ1つ……後悔する
人の事に興味を抱きすると、碌な情報を得られない事
しかし、その変わりに、事前情報を得られたのは……
雅からしたら得なのかもしれない




