第14話-気づかされる現実-
部屋に入ったリノエは溜息を付きながら右のベットの上に座った後
盾と剣をベットの枕側のほうに寄せる
雅もそれに習い、立て掛けてあった弓を枕側に移動する
その後、リノエはベットの布団を少し捲り、ベットの中に入り、横になる
その直後、雅はある事に気づき、リノエに質問する
「あ、あの……リノエさん、パジャマとかに着替えないんですか?」
「え? ぱじゃま……ですか? そのような物は着ませんし
それに着替えたらいざと言う時に困りませんか?」
「それはそうですけど……あ、あとお風呂は……」
「お風呂ですか、一応この街にもありますが、値段が高い上に狭いです
それならさっさと上の街に行って、綺麗で広い所使ったほうがいいです」
「……汗とかで体臭くなりません?」
雅は心配そうにリノエにそう聴くと、リノエはベットから起き上がり
両足を地面に付けると、雅の顔を見ながら話始める
「雅の世界がどうだったかは私にはわかりませんが……
汗なんてタオルか何かで拭けばいいし、それにその内、汗なんて引きます
……というか、この『セイランベルク』では命の次にお金が大事です」
「……でも、今日勝ってお金に余裕は……できたんじゃないんですか?」
その言葉にリノエは溜息を付きながら雅に説明を始める
「今日、あの人達に勝って貰った額は『150ベル』、食事はご主人様が
持ってくれて、宿屋代は私が払いましたが、この宿屋3日で『150ベル』
です、1日50ベルになりますね、食事も自分達で持つ事になれば
20~30ベル、一日50ベルぐらい用意しないと宿屋と食事は無理です」
「で、でも……もしもお金足りなくなったらどうすれば……」
「そんなのは簡単です、野宿すればいいです、それで持ち物奪われようが
自己責任です、運営側はたしかに『殺し合い』は禁止してますが
前に説明したように自分の物と証明できないのであれば強盗もできる」
「……」
雅がリノエの言葉に黙っているとリノエは話を続ける
「……この世界はそんなに甘くないです、働かない者には優しくはなく
働かない代わりに私達は戦いを仕事にしてます、ようは戦争とかでお金を稼ぐ
傭兵と何も変わらないんですよ」
その言葉に雅はこの世界の現実を突きつけられた
たしかにランキングで上位に行けば、富と良い暮らしはできるだろう
だが、低平で何かを頑張らなければ待っているのは……
しかし、そのリノエの話に雅は『もう1つ疑問がでてくる』
「あ、あの、リノエさん、私……の他にもここに呼ばれた人がいたりで
元の世界に戻る方法はないんですか?」
「ありますよ」
リノエは真面目な顔で雅にそう言うとその言葉に少し安心した顔の雅を余所に
リノエは話を続ける
「……ランキング二桁、たしかですが100位以上が条件のはずです
後、先に行っておきますが、雅の世界のほうの時間は知りません
進んでいるのか、進んでいないのか……まぁ、進んでいたら大事件になるので
それはないと思いますが」
「……嘘ですよね?」
雅はリノエにただ一言、真面目な顔でそう言うか、リノエは両目を閉じ
首を横に振る……今言った言葉は全て本当だと雅に言うように……
雅はリノエの態度に動揺し、首を左右に振りながら泣きそうな顔を浮かべる
リノエはそんな雅を見ながら、悲しそうな顔で思う
『当たり前よね……突然異世界に連れてこられて、帰る方法は厳しく
元の世界より待遇は悪い……何も良いことなんてありはしない』
しかし、雅は泣く事なく、両手を胸に当て……何かを考え始める
その光景はリノエから見て、驚く光景である
「……雅?」
「私決めました」
「……?」
「何が何でも元の世界に帰ります、その前にお風呂も入りたいし
服も着替えたい……それをするには上に行くしかないんですよね?」
「え、ええ……そうですね」
「なら、私頑張ります……お風呂も入れない生活は嫌ですから」
そういうと雅は布団を捲り、ベットの中に入ると顔を横に向け寝てしまう
それを驚いた顔のままリノエは寝ている雅を見ると心の中で思いながら
ベットに横になり、布団をかぶせ、寝る
『……お風呂と着替えのために頑張る……元の世界に戻りたいからじゃないのね
まったく……自分の世界よりお風呂を取る子なんて聴いた事がありませんよ』
それから数時間後、外は暗闇に包まれ、街は静けさに包まれた時
リノエと雅の部屋の扉が音を立てずに開かれる
それを開けたのは昼間、雅に話しかけたフードの男性
あの一見から雅を付けていたのだろう
フードの男性は足音を立てないように部屋に忍びこみ、雅が置いておいた
弓を取ろうと足を進めようとしたその時、フードの男性の右肩を何者かが
手を置く、それに驚き、男性が首を横に向け、後ろを振り向いた時
そこにはクラウがいた
「よっ……女子の部屋に夜這いとはなかなか良い根性じゃないか」
クラウがそういった直後、扉を開けた右側、ベットと扉の間の壁に寄りかかるようにリノエが腕を組んで立っており、2人の顔を睨むと話かける
「両方とも夜這い以上に……塵ですね、とっとと出て行ってくれませんか?」
「……俺は部屋に誰も入らないか護衛をだな」
「じゃあなんで不審者が部屋に入ってから捕まえてるのよ」
「……それはあれだ、あれだよ」
「は?」
リノエが不機嫌な顔でそういった直後、フードの男性はクラウの手を振り払い
走り出し、部屋を出ると外に向かう……クラウはそれを追うように走り出す直後
一緒にきそうになったリノエに言う
「俺1人で十分だ、お前は雅の護衛をしてな……」
「……わかりました、お気をつけて」
「はいよ」
クラウは走り出し、宿屋の外にでると、リノエはゆっくりと部屋の扉をしめ
ベットに横なり、また眠りに付く……まるで何もなかったように




