表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの異世界  作者: てぃあべる
13/70

第13話-人を信じる事、疑う事-

食事を食べ終えた雅達は店を後にし、宿屋に戻る途中の道

雅は考え事をしながら歩く


『あのお魚……なんだっけ……食べたことあるような……』


「雅、雅? どうしました?」


『……うーん』


「み・や・び」


「きゃっ」


雅の前にリノエが立ち、考え事していた雅がリノエの胸元にぶつかる

リノエは両手を腰に当て、雅の顔の覗きこみながら言う


「どうしたんですか? 何か困り事でも?」


リノエの前を歩いていたクラウも後ろを振り向き、心配そうに雅を見ている

その状態に慌てた雅は両手を体の後ろ側で軽く組み、リノエに言う


「えっと……さっき食べた魚なんですけど、あれってなんって名前なんですか?」


「魚? ああ、あの魚のフライですか、あれは『ジア』って言うんですよ

 どこから持ってきてるのかは不明ですが、美味しかったですよね」


「おい、リノエ……不明じゃなくて運営側が用意してくれてるんだ

 そういう言い方すると盗ってきたみたいな言い方だぞ」


「そうですね……失言でした、まぁ……そういうことです」


「なるほど……『ジア』って魚なんですね」


「他にも『シワイ』、『リブ』、『イタ』など、いろいろありますよ

 もちろん、高級な物は上位の街に行けば食べられますね」


そこで、雅はある事に気づく、それは……

今、リノエが教えてくれた魚の名前を全て逆から読む事

そうする事によって魚の名前は……


「……あ、やっぱり……そうだったんだ」


「どうしました? 何かわかったんですか?」


リノエは雅のその発言の意図が掴めず、雅の顔を覗きこむと

雅は慌てながら一歩後ろに下がり、両手を胸元で広げながら言う


「い、いえ……なんでもない」


「そうですか? それならいいのですが……」


リノエはそういうと前を向き、歩き出す……雅もリノエの後に続き歩き出す

すると目の前から茶色のフードの男性が雅の横を通り過ぎる時

フードの男性が雅に話しかける


「……もしかして、闘技場で弓を披露してくれた女性か?」


「え?」


「やっぱりそうだ……あの戦いを見学させてもらったが実に良かった

 もしよければ、君の弓を見せてもらっても構わないか?」


「あ……えっと、ごめんなさい、今持ってなくて……」


「そうなのか? ぜひ見てみたいのだが……置いてある場所まで

 付いて行っても構わないか?」


「だめです」


リノエが雅に気づき、雅の前に立つとフードの男性にそう答える

すると、フードの男性はリノエではなく、雅に再度話かける


「だめかい?」


「ごめんなさい」


雅はフードの男性に頭を下げ、謝ると男性は無言でどこかへ歩いて行ってしまう

それを見送った後、リノエは呆れ顔で雅に言う


「さっきの人、運営側ではないですよ」


「え? 違うんですか?!」


「やっぱり……あれは参加者側の人ですね、雅に上手い事言って

 武器を見せてもらい、それを奪う魂胆でしょう」


「でも、そういう事は街中で禁止なんじゃ?」


「それは違うよ、雅ちゃん」


雅の後ろに立っていたクラウは笑顔で雅にそう言い、さらに話を続ける


「たしかに攻撃や殺す、そういった行為は禁止されているし、処罰もある

 だけど『奪う』行為は禁止されてはいない、理由はわかるかな?」


「……どっちもいけない気がします」


「たしかにそうなんだけど、簡単な話、その持ち物に名前が書いてあるかい?

 書いてあったとしても、それを証明する物がない限りは自分の物じゃない

 ちなみにだけど、証明書発行には莫大なお金がかかる」


「そういう事ですね、もしも一度とられ、それを自分の物だ!

 と主張したいのなら、証明書が必要なわけです」


「と言うことは街中とかで物が盗まれても

 運営側は何もしてくれないってことですか?」


「そういう事、だから簡単に相手に武器を見せたりは渡したりはだめだ

 もちろん、相手が信用できる人間なら、話は別だけどね」


クラウはそういうとまた前を向き歩き出す

リノエは雅の左側に右手を置くと微笑みながら言う


「大丈夫です、ただ……そういう行為をする人もいる事はわかってください

 でも、人を信じる事は大切です、私が雅を信じているように」


リノエはそう言うと歩き出し、雅はその後を付いていき、宿屋に辿りつく

そして、宿屋の受付でリノエは店の叔母さんに言う


「この男は別部屋で、後、料金も別でお願いします」


「かしこまりました、では、こちらが部屋の鍵になります」


「……どうも」


クラウはその鍵を右手で受け取るのをリノエは確認すると

雅の右手を握り、歩き出しながら雅に言う


「さて、部屋に行きましょうか、女2人なので心配いりません

 クラウは『そんな事』する人じゃないので、大丈夫ですよ」


「はい、クラウさんを『信じてます』」


その2人の発言がクラウの夜這いを行うのを防ぐセリフであり

クラウがその行為をする、しないにしろ、対策になるセリフである


そして雅とリノエが部屋に入り、クラウは1つ奥の部屋の鍵をあけ

中に入ると、そこは1人部屋、クラウはその部屋のベットの上に座ると

独り言を言う


「……俺も女だったらよかった……マジで寂しいのは久しぶりだぜ」


そういうと、クラウは上下の鎧を脱ぎ、剣を木の丸いテーブルにおくと

1人、ベットの毛布に包まり寝ることにした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ