第12話-世界は狭い-
「ここでいいんじゃないか?」
「……もうちょっと高いお店にしましょう
ここは安い気がします」
「おい、俺の奢りなのわかってて言ってるよな?」
「……そうでしたっけ?」
リノエはクラウから眼を横に背ける
するとクラウは呆れながら両手を頭の後ろに当てリノエと雅に言うと歩き出す
「わかった、わかった……もっと高い店な、俺が知ってるからそこへ行くぞ」
「……知ってるならさっさと案内しなさい、行きますよ、雅」
「はい」
雅はリノエの後に続き、街の中を2人の後に続き歩いていく
そしてしばらくクラウの後の続き歩いていくと、一歩路地裏の店の前
で止まりると後ろを振り向くと、右手の親指を立て、店を指すと
店の扉をあけ中へ入っていく……
リノエと雅もそれに続き中に入ると……そこは高そうに見えない居酒屋
らしい場所、リノエは呆れ顔で先に入りカウンター席に座っている
クラウの横に座ると言う
「……どういうことですか、ここが高級な店……?」
「ああ、そうだな、俺『から』したら高級な店だよ」
「はぁ……私達は騙されたってことですね」
「騙すも何も、俺が知っている店って言っただろ」
「そうですね……クラウさんはちゃんと言いました」
雅はクラウの発言に頷き、そう言いながらリノエの隣の席に座り
そう言うとリノエは溜息を付き、立ち上がると2人に言う
「……で、2人は何を食べるんですか?
ここはセルフですよ、店の人に何を食べるか頼んでから
食券を貰い、水か別の飲み物を自分で用意する場所です」
「おっと……そうだっけ、俺とリノエが適当に選んで持ってくるから
雅ちゃんはこの席、取っといてくれな」
そういうとクラウは立ち上がり、リノエと一緒に自販機らしき場所に歩いていく
雅は1人その場に座り……2人が帰ってくるのを待っていると
1人の若そうな男性に雅は話しかけられる
「お嬢ちゃん1人? よければお兄さん達と一緒に食事どうかな?」
「い、いえ……私は……一緒に来た人達を待っているんで」
「一緒に来た? どこにもいないじゃん、それに友達じゃないんでしょ?
なぁ、お前らこの子も一緒にいいよな?」
「もちろんっ」
男性は後ろを振り向き、一緒に来たであろう3人の男性に話かける
どの人も武器を持っており、戦いに参加する人なのは明白である
そういった後、男性は雅の右手を無理やり取ろうとしたその時
「俺の彼女に何をするのかな?」
その手をクラウが右手で思いっきり握る
クラウの後ろでは3人分の飲み物と食べ物が乗っているお盆2つを両手で持っている
「あん? 俺はこの子を誘っているわけ、お前にはようないの」
「いやいや、俺の彼女って言ったでしょ? 手だすなっての」
「彼女? さっきこの子は『知り合い』って言ったぜ?」
「……お前みたいにモテない奴に気をきかせてくれたんだろう?
そうだよな、リノエ」
「ええ、その通りだと思いますよ、モテるかもしれないクラウ」
「……ちっ、そんな餓鬼興味ねぇよ」
そういうと男性はクラウの手を振り払い、仲間の元へ歩いていく
それを睨むように見送ったクラウは雅の方を振り向くと笑顔で席に座り言う
「これで大丈夫、俺は雅ちゃんのパートナになる男だし
それにちゃんと『友達』だよ、歳は離れてるけどね」
「離れてると言っても私と2つしか変わらないでしょ」
リノエは右手に持っていたお盆をクラウの頭の上に置き、カウンターのテーブルに
料理が乗ったお盆を置くと、座り、笑顔で雅に話かける
「雅、あんまり寂しい事を言わないでください、私はあなたの友達ですよ
お姉ちゃんでもいいですけどね」
それを聴いた雅は両目から涙を流し……慌てて両手で涙をふく
それを見た2人は慌てだし、リノエがクラウを責める
「あんたが怖がらせたから泣いちゃったでしょ?!」
「え?! 俺のか……ごめんな、雅ちゃん、怖かった?」
周りの騒がしい声は雅の耳に入らず、2人の心配そうな顔と声が雅の耳に入る
「いえ……そうじゃなくて……私まだここに来たばかりなのに……
2人とも優しくて……それが嬉しいです」
「優しい……私が半無理やりここに連れてきたみたいな物ですから
雅はもっと嫌な態度でもよかったんですよ?」
「……俺がリノエに頼んだのが元凶だしな……まぁ、なんだ
雅ちゃんは俺達の事、嫌いか?」
「いいえ、2人とも優しくて……好きです」
「そうか、じゃあ……もう友達じゃないか
これからは遠慮なく、俺『に』甘えてくれ」
「俺達でしょ……とりあえず、雅はこれで涙を拭いて、ご飯にしましょ」
リノエは自分の服のポケットから白いハンカチを雅に渡すと
お盆の上から飲み物と料理を雅の前に置き、雅が涙を拭いているのを見ながら
リノエは料理の説明をする
「飲み物はお茶です、雅の世界にもある物と一緒だと思います
食べ物は……少し見た目は悪いですが、魚のフライとご飯、味噌汁です」
雅はハンカチを両手で持ち、リノエが説明してくれた食べ物を見ると驚き
そして、雅はリノエに言う
「え、えっと……これ、私の世界の食べ物……」
「そうだったんですか? 私も驚きました、もしかして『これ』もですか?」
リノエはそう言い、食べ物を食べるための道具を雅に見せる
それは……『木で茶色の箸』とフォークとナイフ
「これ……箸ですよね? それにフォークとナイフ……」
「やっぱり……知ってましたか、クラウもしかして知っててここに?」
「ん? 知らなかったよ、お……これ美味しい」
「まったく……」
リノエはクラウの『言いたい気持ち』を理解したのか
呆れ顔で食事を食べ始める、それも2人共、器用に箸で食べる
「2人共、箸使えるんですよね」
「そうだね、ここの街の店は箸を使う店多いから、慣れたよ」
「私もですね……最初は使いにくかったですが、今は使えます」
「以外ですっ」
雅は2人の言葉に少しだけクスリと笑う
それを見たクラウは少し顔を赤くしながらご飯を食べ続ける
リノエもその雅を見ると微笑みながら、箸で魚のフライを掴むと雅に言う
「冷めちゃいますよ、速く食べて宿屋でお話をしましょう、雅」
「はいっ」
雅は箸を取り、魚のフライを少しだけ食べると、その味に驚く
それは雅が自分の世界で食べた『何か』の魚と同じ味をした事に……
 




