キセキと空の始まり
――――嗚呼、人生なんて所詮こんなもんか・・・
いつもそうだ、何か特別なキッカケがあった訳でもない
ただ、なんとなく・・・本当に何の前触れもなく
諦めてしまう。
別に諦めたくて諦めてる訳じゃない。
俺だって諦めたくないし出来ることならやる気出して認めてもらいたい。
いや、「誰に?」って聞かれると困るわけだが。
「じゃあ諦めなきゃ良いじゃん?」って周りは言ってくる。
だから言ってるだろ?“諦めたくて諦めてる訳じゃない”
同じ言葉の同道巡り、いい加減にしてくれ。
たとえばこれが漫画の世界なら、空から人が降ってきて
助けてくれたりなんかしちゃったりしてくれる訳だ。
「おこまりですか?」
そう、そんな感じで・・・・そんな感じで・・・。
「おこまりなのですか?」
えーっと、これは夢か?俺はうたた寝したのか?
だって、こんな現実離れした人間、現実的に居ないだろ。
碧くて床に付くほどのサラサラロングヘアーに乳白色の透き通った肌
地球の様に青々とした瞳、ごめん可愛い。いや、可愛い過ぎるんだけども・・・
冷静すぎやしませんか俺。
俺は今、えーっと3階物置部屋の出窓に座って考え事をしていて
空から人が降ってきて何か助けてくれたりしないかなーとか考えてたら
この青々とした物体が目の前に居て
「こんばんは、迷える羊さん」
青々しい物体は微笑む。
「すいません、夜遅いので怪しい勧誘的なものは明日にしてもらえますか?」
「いえいえ、遠慮なさらずに!」
グイッと今にも掴みかかってきそうな勢いで前に乗り出してくる。
鼻すれすれなんですけど、ちょっとドキドキするんですけど。
「むしろ、お前が遠慮してくださいませんかコノヤロウ」
しかも目の前の“コレ″は出窓を閉めさせないように足まで入れてくる。
顔は可愛いが憎たらしい、性格的な意味で。
「あなたの望みは何ですか?」
「望み?」
「だって、困ってるでしょ?」
困ってるけど困ってないけど困ってる矛盾、なぜ伝わった?
もしかして、うっかり口に出してたか?ヤバイな俺。
「じゃあ、何、助けてくれるの?」
俺、馬鹿かもしれない。
この状況に、ほんの少しだけワクワクしてる。。
それでも、もし、もしも、こんな自分が変われるのなら変われるのなら
俺はこの青々しい物体に人生の半分を掛けてみても良いかもしれない。
これ以上何かを諦めて失い続けるのは嫌だ。
最後まで走り切りたい、俺の思ったことを思うことを。
後ろを振り向けない後悔のゴミ、もう勘弁だ。
だからもう一度、目の前の青々しい物体に問いかける。
今度は別の言葉で。
「俺を変えれる?」
「その為に、その望みを叶えるために私は生まれました」
その答えだけで満足だ。
「名前は?」
「キセキです」
「俺は空だ」
納得のいかない出来事に少しだけどワクワクしてる。
ひんやりと冷たい夏の夜風、揺れる髪の毛。
始まった俺の夢で終わらない高校1年の夏休み。