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四コマ探偵 斉藤計ジリーズ

悪魔宝石殺人事件

作者: フナジュー(13)

『どこへ逃げようとでもいうのかね?』

ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタのセリフより



「これが悪魔宝石か……。人を狂わす力を持っているようだ」

斎藤さんが独りで呟く。

「すごいですね」

僕は、斎藤さんに呟く。

そこに神張警部がやってきた。

「斎藤探偵、今回はすまないね、わざわざ来てもらって」

「いえ、悪魔宝石の呪いなんて聞いたら行かないわけにはいかないんで」

いかないわけにはいかない。ダジャレかいな。

「それじゃあ、君達に来てもらったわけを説明するから、ホテル内のカフェに行こうか」

「早速話しを始めるぞ。悪魔宝石の持ち主である」

「えぃさん」

「え、えぃさんに、一週間前に脅迫状が届いたんだ。『悪魔宝石は私の物だ。誰にも渡さん。悪魔宝石と貴様の命を奪う』と書かれてあった」

「なんだ、呪いじゃないじゃん」

斎藤さんはつまらなそうである。

「しかし、脅迫状を見てえぃさんは震えていたらしい。何かあると思って警備を頼まれた俺は君達を呼んだわけだ。で、人間関係も話しておこう」

「げぇ」

斎藤さんの苦手領域だ。

「フナジュー助手くん、メモを頼むよ」

そういうとね ね……寝てしまった……。

「メモの準備はいいかい」

神張警部もその気になってしまっている。しょーがない。

「この悪魔宝石展示会を企画したのはある美術館の館長でもある安……」

「びぃさん、ですね」

「そうだ……。びぃさんはえぃさんから悪魔宝石を買い取ろうとしているんだ。しかし、えぃさんは売ろうとしないのだよ。悪魔宝石を美術館に展示できれば、儲かるだろうというのがびぃさんの考えだ」

「悪魔宝石って、どれくらい価値のあるものなんでしょうか」

「今まで聞いたこと無かっただろ?」

「はい」

「五日前に初めて名前が公開されたのだ。何故えぃさんが今頃になって公開したかはわからないんだ」 「わかりますよ」

「え?」

「さ、斎藤さん?」

斎藤さんが顔を上げる。

「神張警部はついさっき、『一週間前に脅迫状が届いた』と言ったじゃないですか。脅迫状を送ってきた人『ぜっとさん』は一般公開される前から悪魔宝石を知っていたんですよ? どう考えてもぜっとさんは悪魔宝石の前の持ち主としか考えられない」

うんうん、確かに。

「脅迫状の内容もしっくりきますね」

神張警部は言う。

「そんな考え方はしていなかった。君に来てもらってよかったよ」

……君? 君達じゃないのかよ。

ブゥ。僕はふくれた。

「続けて下さい」

斎藤さんはそういうと寝た。

「このホテルのオーナーのしぃさんはえぃさんの友人だ。恨み辛みといったものは無いようだ」

「そうですか」

「人間関係といっても、今のところはこれくらいだ。ゆっくりしていてくれ」

斎藤さんは起きた。



『事を急ぐと元も子も無くしますよ、閣下』



「ほら、あの人が榊原さん、いわゆるえぃさんだよ」

「エレベーターにのっていきますよ」

「今日はこのホテルに泊まっていくらしい」

「しぃさんがオーナーですものね、警部」

こんな話しをしていると、展示場の方が騒がしくなった。

「どうしたんですか!?」 神張警部が急いで向かう。僕も斎藤さんを叩き起こして後に続く。

「悪魔宝石がすりかえられています!」

「榊原さんの命と悪魔宝石はいただいた、という紙が届きました!」

神張警部は、何だって! と汗を拭うと部下の与古根刑事を連れてえぃさんの部屋、7○4号室へ走った。僕と斎藤さんと男が二人、追いかける。

「くそっ、生きていればいいのだが……」

名前を知らない男が扉を叩く。ホテルで働いている人らしい。もうひとりはオーナーだろう。 「榊原さん!出てきてください」

「警察です、開けてください!」

返事はない。

「ぶち破りましょう」

斎藤さんは声をかけた。

「せーの!」

扉が破られた。鍵は確かにかかっていた。灯りのある方へ警察は向かった。

オーナーのしぃさんは部屋の入り口で待っているようだ。

「えぃさんがいないぞ!」

神張警部が怒鳴ったその時、反対側の部屋で叫び声が聞こえた。

真っ先に反応した斎藤さんについていくと、ホテルの従業員の姿と榊原さんの……死体が。

「遅かったか……」

従業員も言う。

「僕が見付けた時はすでに息たえていました……」

斎藤さんは辺りを見回す。そして、1つの注射器を拾い上げた。

「これが凶器だな。即効性の毒が仕込まれていたようだ」

「手首に傷がありますね」

「そして、これは密室殺人だ」

神張警部もやってきた。

「くっ、ここからは警察に任せなさい」



『馬鹿共には丁度いい目くらましだ』



「脅迫状通りに犯行が行われてしまうとは……くやしいです、斎藤センセイ!」

「密室……密室……」

「大丈夫、ですか?」

「あの密室は今までに見たことないほど完璧だ。ありの子一匹通さない。入り口のドアはしっかり鍵がかかっていた。えぃさんの指紋しか検出されない。キーはえぃさんが持っていた。窓も完全にしまっている。これこそ不可能犯罪だ……」

僕は慰めにかかる。

「それをいうなら、このホテルも完璧な密室ですよ。犯人は出ることはできない!」 「悪魔宝石消失事件はどう説明すればいい」

「誰でも盗むことは出来たはずです。持ち物を検査しとも誰も持っていなかったのが謎です」 「どこかに隠したんだろう。それだけのことだ」

「ですね。難しく考えない方がいいですものね」

ピキーンと斎藤さんが反応する。どーしたんだぁ。

「そうだよフナジューくん!難しく考えなければいいだけの話しだ」

「え 真相が……わかったんですか?」

「マンガ家の発想力を甘くみてはいけないよ。心理的密室トリックは、もう解けた」 斎藤さんは発想だけの探偵だ。

証拠は後からつければいいというが……。

事件が起こってからたったの四十行で謎を解くとは、世界最短推理時間推理小説ぢゃないか? これは。



『素晴らしい!最高のショーとは思わんかね!?』



「みなさん、集まりましたか。謎ときに入ろうと思います。」

斎藤さんの周りには僕、神張警部、与古根刑事、びぃさん、しぃさん、あの時の従業員がいる。 「この事件の謎をまとめてみましょう。まず、最大の謎完璧な密室。そして消えた悪魔宝石、脅迫状です。脅迫状を送ったぜっとさんが犯人で間違いないでしょう」

沈黙。斎藤さんが口を開く。

「あの密室は確かに密室でした。それでも、トリックは心理的なものだったのです。心理的な要素を加えたのが悪魔宝石と脅迫状でした」

「何いってんだ、探偵クン。意味わかんないぞ。」

びぃさんがせかした。

「私達は、脅迫状が送られてきたことによってえぃさんが」

「榊原、榊原さん!」僕は小声で叫んだ。

「榊原、さんがすでに殺されていると思いこんでしまったのです」

「な……!」

「あの時はまだ生きていたのか!」

「それなら何故、榊原さんを呼んでも部屋から出て来なかったんだ!」

質問に答える。「自分が警察に捕まるかと思ったからですよ」

沈黙再び。

「は?」

「悪魔宝石をすりかえたのは、榊原さんなのです!」

またまた沈黙。

「榊原さんは、脅迫状通りに悪魔宝石が盗まれるのを恐れて自分ですりかえ部屋に戻った。そして部屋に内側から自分で鍵をかけた」

あきずに沈黙。

「これが密室トリックです」

「そういうことだったんですか、斎藤さん!」

僕以外の人は、しつこく沈黙。

「そんなにうまくいくものですかね」

神張警部も理解した様子。

「だから、ぜっとさんは榊原さんに協力するフリをしたんです。私も悪魔宝石を守ると偽って」

「しかし、ぜっとさんは第二の脅迫状を送って警察を榊原さんの部屋に向かわせた」

「その通りだよ、フナジューくん。榊原さんはさぞ驚いただろうね。警察が出てこい、というもんだからオドオドするわけだ。扉を破ろうなんて聞こえたら、部屋の奥の方に隠れるだろう。ぜっとさんは榊原さんを真っ先に見付けるとこう言ったんでしょう。警察にバレた、悪魔宝石は私に預からせてくれ、とね」

「悪魔宝石をぜっとさんに渡した榊原さんは、その直後注射器で即、殺されたのか!」 「即効性の毒が使われたのもそのためでしょう」

「なら、犯人ぜっとさんは……」

神張警部が信じられんという顔をして呟く。

「そうです。犯人はあなただ、……」

「斎藤さん?」

「名前を知らないもので……まだみなさんの名前を聞いていませんでしたね。犯人は死体発見者のフリをした従業員、あなたです」

滅びぬ沈黙。

「僕がそんなことする理由はありません。しかも全部あなたの想像でしょ? 僕は悪魔宝石を持っていなかった。取り調べしたじゃないですか!」

しぃさんも言う。

「そうですよ。まだ消えた悪魔宝石の謎が解けてませんぞ、斎藤探偵」

びぃさんまで言う。

「今悪魔宝石はどこにあるんだ」

「私が持っていますよ」 斎藤さんはポケットから悪魔宝石を出す。

「待った!みなさん動かないで!今この中で不審な動きをしている人がいます。ですよね、与古根刑事」

ビクリとする与古根刑事。

「両手を上にあげて! おとなしくして下さいよ」

斎藤さんは、与古根刑事が手を突っ込んでいたポケットを探り、悪魔宝石を出した。

「私が持っていたのはレプリカです。これが本物。警察に共犯者がいたらこの犯罪計画はうまくいくなと思っていましたが、本当だったとはね。取り調べの時に渡したんでしょう? 従業員くん」

力が抜けて、がっくり肩と膝を落とす従業員。本当に後から証拠をつけた。斎藤さんらしい事件の解決の仕方だ。

「与古根刑事、あなたはヤマダの部下ですね?」

何でそこまでわかるんだという顔をする与古根刑事。

「心理的誘導トリックが山小屋の事件の時と似ていてね。あなたはそういう理由でこの事件に送り込まれたんですね」

神張警部も言う。

「この事件にもヤマダが絡んでいたか……」

「動機は従業員から聞いておいて下さい、警部。後は任せました」

与古根刑事は逃げようとする。神張警部は取り押さえる。

しかし、逆に組伏せられた。あっさりと逃げられてしまった。僕もあっさりと見ていた……。



『制服さんの悪いクセだ』



「従業員の兄が、元の悪魔宝石の持ち主だったらしい。兄はえぃさんに襲われ、重体。で、今回の事件が起こったようだ」

神張警部が言う。それに対して斎藤さんはこう言った。

「悪魔宝石の呪いだろ」

このトリック、小5の時に思い付いたものなんですが、結構お気に入りでして。

当時の僕がさらりと書き流しているから、状況が伝わりにくいですね……。

「なるほど」と思ってもらえたら、昔の僕が喜びます。

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