識と創子―サイド創子―
憎しみと愛情が両立するのは知っていた、
けれど、嫉妬と友情も両立するのだと知ったのは奴のせいだ。
「ねえ、創子。」
「なんだ?」
「どこにも…僕の知らない所に行かないでくださいね?」
「…は?」
…頼むから俺にわかる言葉で話してくれ。
お前といい、零誓といい、人を翻弄して楽しいのか…。
可憐に微笑む相手はただの友人。
まるで恋人に戯れるような言葉を時折投げてくるが、他意はない。
才華の一族独特の魅了の力と、こういった言動で魔性としかいいようのない男。
…何度注意しても全く理解せずに他者を魅了し、対人恐怖症にまでなりかけていた。
今もそう、勝手に人の部屋に来たと思ったら用件もつけずこちらを鑑賞。
他の奴だったら確実に誤解するぞ?
また押し倒されて重症にしたとか聞きたくないからな?
「僕は意外と友達思いなんですよ?」
「…お前、俺以外に友達いないだろう…。」
ある意味俺も深い付き合いはしないが、こいつの場合仕事が絡まないと誰とも話さない。
―――俺以外いない。
声も、瞳も、態度ですらそう訴えてくるから拒めなくなる。
友なのに、友なのに…俺が欲しかったモノを当たり前に持っている識が嫌いだ。
零誓も、識も…あの女ですらそうだ。
どうして術師ばかり俺に構うんだ!もうたくさんだ!
…そう叫べたらどんなに楽だろう。
でも結局俺は…”興味なかった”って嘘で自分を騙すことしかできない。
だから気づかないでくれ、
嫉妬が混じった歪んだ友情しか返せない俺に。
ごめん、親友。