王維と零誓―サイド零誓―
「小さい…。」
「あなた死になさい!」
天上の華とすら評される美貌。
史上最年少で全ての術を体得した才気。
第一神位にして、死者の国を治める神、縁の直系たる家柄。
誰もが羨む存在であったのに…。
生まれて初めて、私に屈辱を与えたのは一人の少年だった。
少年と言っても、私と同じ仙士であるため、その姿と年齢は一致していない。
しかも彼は私と同じく、成長が完全に停止する型だ。
この型は仙士の中でもごく稀であり、同時に非凡な才能を示す。
特に私は、わずか十歳で成長を終えた身を誰もが賞賛してくれた。
その私にむかって彼は言ったのだ……小さい、と。
異端の存在に花達がざわめきだす。
訪れたのは、予想通り待ち人だった。
「遅かったわね。」
「指定された時刻にきたつもりだが?」
「予想より遅かった、そういう意味よ。」
顔の筋肉が麻痺しているのか、それとも情緒が鈍いのか。
表情の動かない瞳がこちらを見ている。
彼は全体的に薄い色彩を纏っているが、この瞳だけは濃い紫であるため、自然と視線は瞳にいってしまう。
何を考えているのかまるで理解できない瞳。
「相変わらず小さいな。」
「死になさい、愚か者!」
この前置きもなく暴言を落とすくせはやめてほしい。
おかげで何度殺しかけたか…。
そう、術士である私の攻撃を彼は一度もよけないのだ。
それこそ神速の性質を持つ彼なら全てよけれただろうに。
本当に理解できない男だ。