王維と零誓―サイド王維―
王維と零誓―サイド王維―
「小さい…。」
「あなた死になさい!」
これほどまでに贅を尽くした庭があるだろうか?
天帝の住まう天宮ですら、これほどの花々と建築物を目にすることはできないだろう。
百花繚乱、全ての花がここに集っているのではないかとすら思える。
仙士達はこぞって、この庭を「天上の華」と呼ぶ。
由来は花々ではない。
花に埋もれるように寝転び、手にした扇を弄んでいる一人の娘。
闇を表す長く艶やかな黒髪と、翡翠をはめ込んだような瞳。
もし彼女があと10年ほど成長を許されれば、天帝は天を滅ぼしてでも妻に迎えたとすら言われている。
「遅かったわね。」
「指定された時刻にきたつもりだが?」
「予想より遅かった、そういう意味よ。」
相変わらず、理不尽な答えしか返ってこない。
天上天下唯我独尊、挫折を知らない彼女らしい考えだ。
寝転んでいた状態から起き上がると、彼女に付いていた花が舞う。
髪についていた花も、一切絡まることなく落ちていく。
立ち上がっても、彼女の背は俺の肩までしかない。
少年の姿で時を止めた自分より小柄なその姿は、幼いとしか表現できない。
だが、その幼さこそが彼女の力を何よりも明確に誇示する。
自身の幼さを厭う少女。
けれど、
その幼さこそが、どうしようもなく愛おしい。
「相変わらず小さいな。」
「死になさい、愚か者!」
たとえそれが憎悪でもかまわない。
初投稿です、よければもう一人視点のほうもご覧ください。
本編となる長編は・・・いつか投稿できる・・・かも。