sky dust
//機械仕掛けの朝顔
天津道照 僧
崩木 柚子 技師
アナログとデジタルには何ら差異は認められない。…結果が同じならば。
だからきっと人は脳の錯覚に酔い続ける。甘い甘い痛みに。
だから気紛れな電気信号に惑わされてはいけない。
僕はこんな脳みそぶちまけて、もっとシンプルでシーケンシャルな回路が欲しい。
僕の前には1と0だけでいい。
「猥雑な君には理解しがたいだろうけど、天津」「人に理解を求めるなんてナンセンスだよ崩木さん、理解をしたつもりにしか人はなれないし伝わった気にしかなれない。
思考も処理も違うのに同一の答えなんてでないよ」
「知ったような口、」
「ほら、つたわんない。けど、そういうとこが愛しいんだろうね」
「なんで、そんな事いうわけ?」
「さぁ、崩木さんなら答え知ってそうな気がしたから」
「答え?」
「相手の心に伝える方法」
「いま自分で否定したばかりじゃん」
「うん、だから覆して欲しい」
そういって天津は狐みたいな面を笑わせた。
「天津はいちいち人の意見を鵜呑みにするか?僕はそういった人種は幸せだと思うよ。
そういう思考が僕も出来たらいいのに」
「直ぐには信じれないよ、試験と施行を繰り返して納得するまで保留中」
「研究者には時間だけが足りない」
「なにそれ」
「老いぼれを見てた少女の言葉。言葉ではどうか知らないけど…天津は信用してる気がする。そう観察できる」
「証明したいんだ、それを」
「誰に?」
「…ん、まぁ。知り合い」
なんとなくどんな知り合いかわかってしまった。
「あ、そぅ」
興味無さげに呟いた。
「とにかく、」
其処で言葉を切って空を仰ぐ天津。
眩しいに違いない。
「綺麗事にはもう沢山なんだ」
「あの日は綺麗事しか吐けなかった癖に」
「いちいち細かいところ、なんだか職人っぽいよね。」
「僕は技師。仕事以上の技は使わないし、知らない」
「…そうだね」
「そうだよ、もう職人は死んじまった。僕の一番大事な空を汚しちまってね」
僕もほんの気紛れに空を見上げた。
あの日から空を眺めるのは止めてしまったけど、やっぱり蒼い。
「雨でも降ればいいのに」
こんなに天気が好いと竜もはばたいてしまいたいだろう。
きっとあんな破滅が再び待とうとも、
――あれがはばたく機能を有する限りは悉く、墜ちていくに違いない。
空が終わるその刹那まで。