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cube×cube  作者: レプリカ
1/3

1//bad moon▼

崩木柚子 技師

崩木霧忌 パイロット

斑鳩燕 設計者

空を眺めていた。

一繋ぎの青を――。

綺麗だと思う。

青という色は千差万別たくさんある。

それは多分人が青を好きだからに違いない。

僕はツクリモノに興味はない。

あの青だけが、


//Bad Moon

「崩木」

そう僕を呼ぶ声がする。

祖父だ。

祖父はけして僕を名前で呼ばない。

「なに、」

自分でもわかる程やる気の無い返事。

「感覚神経フィラメントが馴染んでない。調整しておけ」

クレイジィ。

祖父をそう評価している。

またそう思った。

「これ以上シンクロを高くしたら過敏すぎるよ。微風一吹きでたっちゃうよ」

タバコをくわえながらそういうと祖父は僕に拳骨を食らわせた。

一瞬視界がホワイトアウトするくらい強烈なヤツをだ。

「やれ、拒否権はない」

言いたいことだけ言いやがる。

僕はわかったよと頷いてベランダを後にする。

部屋は暗く埃臭い。

しかも通気性が悪いので気が滅入るには最適だ。

この僕達がいるのは人工的に創られた島、さらに範囲を狭めればそこの古くさい時計塔。

島の名前はhimmel

空を冠した美しい名前。

けど、と僕はすぐに思い直した。

だって人が創ったものに美しいものなんて在りはしないのだから。

冷たいオブジェと人は変わらない。

僕達に意味はない。

だから好勝手できるんだ。

こうしてここで続ける夏休みみたいに破滅を待ってるんだ。

僕はそんな事を考えながら最下層へと馬鹿の一つ覚えみたいに続く螺旋した階段をおりる。

かつかつ響く足音は不覚にも好ましい。

それは僕の欠陥が二極化を許さないために起こる必然的なものだろう。

「斑鳩、フィラメントの調整にきた」

螺旋の終焉はただっ広いキューブ体の部屋だ。

学校の体育館よりずっと大きい。

そこには人工照明に照らされたどれだけの水が有るのかワカラナイほど深いプールがある。

しかしそのプールでは泳げない。

少し勿体ないと思う。

「どこの?ボディはもうプールではないか」

「違うアーム」

端的に言うと斑鳩は手招きをした。

「ああ、いいよ」

斑鳩は好ましい対応をしてくれる。

余計な会話はして欲しく無いのをよく察してくれるし僕の領域を汚さない。

あの坊主とは大違いだ。

「感覚の感度を上げる」

僕がそういうと斑鳩は呆れたように頷いた。

作業中は静かなもので実にやりやすい。

企業の雑多な感じは性に合わない。

まずなにより人が邪魔だからだ。

「アームは今日でプールだから」

なるほど、それで。

僕は手っ取り早く作業を終わらせて立ち上がる。

「それじゃ霧忌に伝えとくから」

斑鳩はそのままコーヒーを手に階段を登っていく。

脚が悪くて杖が無いとマトモに歩けないくせに斑鳩は歩くのが好きだ。

誰の手も借りない。

そういう姿勢は正しい気がする。

だって一人なのはべたべたしてない。

僕は祖父が来るまで三日振りの睡眠を味わう事にした。

くらくらする脳みそがプールに映した照明を月みたいに見せていた。


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