見送り屋
ジン・カムナギ 35歳 右腕と頭以外は機械、ほぼサイボーグ
愛煙煙草はマルボロ赤のソフト
身長178㎝体重97キロ(サイボーグ部分も含む)
左手の銀色義手には様々な機能が備わっている 高周波ブレード他窒素100%の液体など
ヨミ・コトノセ 25歳 身長168㎝体重はヒミツ
右足が銀色の義足 ジンと同じく高周波ブレードが折りたたまれて収納されている
好きなものは合成カツサンド
俺は見送り屋をやってるジン、ジン、カムナギ
2065年日本は少子高齢化のツケを払わされ、今や年寄りと独身だらけ、子供は健康優良児なら国が管理している教育育成施設に強制連行、大人になるまで出られない
逆に少しでもその枠から外れた奴は置き去り、あとは親が面倒みるか、捨てられるかの二択だ
俺は後者、左手に障害があり捨てられた。今年で35歳だ
そんな俺をたまたま見つけたのが先代見送り屋のカルロス・カムナギ
カルロスは赤子の俺を良く育ててくれた、動かない左腕を手術し、動く義手に改造してくれた
感謝してもしきれない。だが人生は残酷だ、カルロスは、癌だった。吐血を繰り返しのたうち回り想像を絶する痛みに耐え、いつも仕事から帰ってきた俺に言った。見送ってくれと。
俺の義手には人一人分安楽死させられる気体が今入ってる。窒素だ、俺はそっとカルロスの口に義手の手のひらを置く、カルロスが息を吸う。ほどなくしてカルロスの呼吸が止まる。義手に内蔵された心拍計測機を見る。20・・15・・・12・・6・・0
心停止確認、俺は静かにその場を後にする
外は土砂降りの雨だった。ああ、クソッ、いつか、いつかとは思ってたが、まさかこんなに早く見送ることになるなんてよ!!
ジン「クソッ」
苛立ちながら煙草に火を付ける。ああ、最悪な一日だ
カルロスの家から離れ、事務所に入る。俺の住処だ。ま、非合法で手に入れたねぐらなんだがな、
ずぶ濡れのコートを放り投げ、PCを開き、あるネットワークを開く
通称送り屋ネットワークサービスだ、そこにカルロス死亡の為、俺が引き継ぐことを書き入れる
ピコン
すぐ返信が付く、ヨミという名前の送り屋だ、ヨミ・コトノセ、コイツはカルロスの二番弟子
昔相棒でもあった女だ
ジン「っふーーー」
タバコを大きく吸い吐きながら事務所の椅子に腰かける。
ああ、ここだけはいつもと変わらない、そしてコイツ、煙草の旨さも
ピピッとPCから音が鳴る、なんだよ、今日は店じまいだ
パソコンを閉じ、毛布に包まる。ああ、疲れた
次の日
相変わらずの雨だ、嘘かホントか今の日本は晴れか雨しかない、なんでそうなったのかは知らん
PCを立ち上げ依頼リストを開く、おうおう、今日も予約が一杯だ。今の世の中、死刑すら廃止され、囚人は工場でひたすら働かされる。無論死ぬまでだ。物価は上がり続け今や煙草一つ2000円だ、笑えねぇ
ジン「はあーあ」
見事なデストピアに仕上がっちゃったもんだよ日本
そんなことを思いながらその煙草に火を付ける。銘柄はマルボロの赤、ソフトタイプ、どーもボックスは取り出しずらくてな
ジン「えーと希望死方法は・・窒素か、まこれが一番早いよな」
受付を済ませさっさと着替える。うん、コート乾いてる。
スーパーカブ(屋根ありに改造済み)に乗り、目的地まで行く、ヘルメット?んなぜいたくな物ないわ
今回はここかぁ、なんか今時珍しい一軒家に着いちゃった。今の世の中集合住宅が基本だからな、非行政区を除いて
適当な場所に駐車してインターホンを押す
少しして中から母親らしき女性が出てくる
母親「お待ちしてました」
お辞儀される。なんとなくこっちも少しお辞儀をする
中へ通される。そこには人工呼吸器に繋がれている子供が一人眠っている
依頼はこの子か
ジン「お別れは?」
念のため確認する。母親が無言でうなずく、どうやらひたすら泣いた後らしい
ジン「この子の父親は?」
てきぱきと準備を済ませながら、他愛無いことを話す。なんの準備かって?無論今からこの子を殺す準備だ
母親「去年・・カルロスさんに送っていただきました」
ああそう、だから今回も、ってことか
ジン「準備出来ましたよ。」
義手に埋め込まれた画面に数字が増える。金だ
ジン「おかあさん、良かったら手、握っててあげて下さい」
母親「はい」
母親が子供の手を握る。用意した仕掛けが作動し、酸素でなく窒素が彼に送られる
義手で心音を見る60・・45・・・30・・21・・・10・・・3・・・0
死んだ、この子は間違いなく死んだ
ジン「少し時間をおいて病院に連絡を・・では」
早々にその場を後にする。送り屋は違法だ、長居しないことに越したことはない
玄関を出ると母親の泣く声が聞こえる。厳しいが現実だ
とめてあったカブのエンジンを掛ける。いつの間にか晴れた。雨に濡れないことは良いことだ
早々に事務所に帰ってのんびりしよう
事務所に着きドアを開ける。奥から物音がした。空き巣か?途端に身構える。義手からブレードを生やし
物音に近づく・・銀色の髪が見えた。冷蔵庫を漁っている
俺はげんなりして壁をコンコンとノックする
途端にビクゥ!!となる銀髪、恐る恐るこっちを見る
?「や・・やぁ・・」
両手を上げ、降参のポーズを取る銀髪
俺はブレードをしまう
ジン「なぁに人ン家の冷蔵庫漁ってんだぁ?ヨミ」
この泥棒猫
ヨミ「いやぁ・・待ってたらお腹すいちゃって・・なんか無い?」
ジン「タバコならある、あとコーラ」
ヨミ「相変わらず食べ物無いのねアンタ・・」
銀髪のポニーテールを揺らしうなだれるヨミ
ジン「それより来るなら連絡ぐらいしろ、空き巣かと思ったじゃねーか
ヨミ「したわよ!?メールで!!」
メール?・・しまった。アレか
ジン「食うもん買ってくるわ」
話題反らし話題反らし
ヨミ「あ、あたしも行く!!」
俺の肩までしかない頭がぴょこぴょこ付いてくる
通りを右に曲がった自販機に着く
ジン「何喰う?」
親指で指さし、メニューを選ぶよう促す。コンビニ??そんなもんとっくに日本から消えたわ
ヨミ「あたし合成肉のカツサンド!!」
元気よく言う
ジン「じゃ、俺はこれにするか」
ビタミン配合合成麦麺のカップ麺
それぞれカツサンド900円カップ麺600円
ボタンを押すとそれぞれ機械が動き、食い物がプリントアウトされていく
マタノオコシヲー
機械が喋る。黙れ
それぞれの物を持ち事務所に戻る
ヨミが嬉しそうにソファーに座る
コーラを二本冷蔵庫から取り出し、封を開けてやる
ヨミ「ありがと~!」
ジン「頂きます」
麺をずるずると啜る。ぐあー、味しねーーー
ヨミ「うっまああい」
俺とは真逆に旨い旨いとカツサンドにがっつくヨミ
あ、大事なもん忘れてた
ジン「おいヨミ、チップ見せろチップ」
ヨミが?マークを浮かべたまま右手を出す。俺はその上に左手をかざす
俺の数字の一部がヨミに移動する。その数字を見てヨミがぎょっとする
ヨミ「なにこの数字!?こんな額もらえないよ!!」
慌てて俺の左手を掴むヨミ
ジン「おやっさんの遺産だ、俺も少し貰ったが、お前の方が必要だろ」
ヨミ「そりゃ・・生身だし・・ジンより稼ぎ少ないけどさ・・」
おれは半分機械の身体だからな、飯も2週間か食わなくていい、だがヨミ、コイツは生身だ、しかも俺より年下、下手すりゃ俺を送ってくれる相手になるかもしれん
ジン「いいから取っとけ、生身の分コストかかるんだから」
もじもじし、納得のいかないような目をされる。知るか
ヨミ「・・ありがとう」
ヨミからお礼の言葉を言われた。そう、それでいいんだ
ジン「はぁーーー、、ともかく・・お前何しにここへ?」
煙草に火を付け、気になってた話題を切り出す俺、そう、送り屋には担当区画ってものがある。暗黙のルールってやつだ、人数が多くなりゃそれだけで巻き添えを食う
ヨミが一気にカツサンドとコーラを喉に流し込む
ヨミ「あのね!・・また私とコンビをくん」
ジン「ヤダ」
即答、当たり前だよ、なんで捕まるリスク上げなきゃいかんの
ヨミ「お願い!!」
綺麗に土下座された
ジン「ヤダ」
ヨミ「ワタシ、、私一人前になりたいの!!だから・・お願いします!!」
ジンは頭を抱えた
こーなったらテコでも動かねーぞヨミは・・全く、カルロスもよけーな二番弟子作って逝きやがって
しばし沈黙が訪れる
ジン「以前・・お前と組んだことあったろ・・・」
ジンが煙草をふかしながら語りだす
ヨミが顔を上げる
ジン「そん時お前さん・・何失ったかわかってんのか?」
ヨミが右足首を抑える
ジン「そう、そうだよ、お前さんは警官に右足を撃たれ・・義足になった」
ヨミが強く足を抑える・・少し軋む音がした
ジン「俺ぁもう半分機械だったからよ・・無事だった」
ヨミ「あの時・・依頼人が裏切って警察に通報した・・」
苦々しそうに歯を食いしばるヨミ
ジン「そうだ、そうだよ!!そん時お前は半分機械の俺を庇った!!命は平等だからってぬかしやがって」
だからヨミは右足を失うことになった。あんな思いはもうごめんだ
ジン「いいか!?お前は運がよかった!!あの時心臓に警官が狙い定めてたら!!・・死んでたのはお前だ・・ヨミ」
タバコの煙をゆっくり吐き出しながら言うジン
ヨミ「今はもう・・平等なんて思ってない・・生きようともがいた奴にだけチャンスが来ると思ってる」
おう、まさにその通りだ。金より軽くなった俺らの命はそうしなきゃ生きられん
ヨミ「だから・・私にもう一度もがかせて・・お願い、師匠が死んで、尚更そう思った」
その目には火が宿っていた。どうやら以前の偽善的なヨミはもういないらしい
ジン「わかった・・・組むよ」
ヨミの眼に安堵の色が映る。わっかりやすい奴だ
よし、そうと決まれば
ジンが立ち上がり事務所のドアを開ける
ヨミ「ジン、どこへ?」
ジン「お前さんとのコンビ再結成祝だ、たらふく食わしてやるよ
自販機に向かう、カツサンド20個卵サンド10個ビール10本、大盤振る舞いだ
それから、二人は依頼をひたすらこなした
政治家、資産家、富裕層、貧困層、ヤクザ、子供、老人、スポーツ選手、医者、患者、女、男、老若男女全員見送った
ジン「ヨミ!薬液注入開始、」
ヨミ「了解!」
ヨミの手が震えてる。優しいねぇ、けど感情移入するとろくなことにならん
ジン「殺れ、迷うな」
意を決したようにヨミがバルブをひねる。俺はすかさず左手を当て、心音を確認する
85・・63・・・32・・・18・・3・・・0
ジン「終わりました。」
依頼人が頭を下げる。しわがれた爺さんだ。もう介護が辛かったらしい
ヨミ「では、これで」
爺さん「ありがとうございました。」
俺たちはそそくさとその場を後にする
あるときは
ヨミ「ジン!!こっちは片付いたよ!」
ジン「おう!ナイス足技!だんだん切れがましたな」
ヘンな組織に追い掛け回され乱闘する時もあった
あるときは
子供「おかあさん・・しんだの?」
ヨミ「うん・・少なくともこれ以上苦しむことはないよ」
子供を優しく抱きしめ、宥めるヨミ
またある時は
ヨミ「ねーーーぇーーー!?ホントに道あってる!?」
ジン「ナビだとこっちなんだよーーー!?」
えーいこのポンコツナビめ、帰ったらあの業者に文句言ってやる
迷いもした
ジン「だーーーもーーーー!!だからこっちの方が上手くいくって言ったじゃねぇか!!」
ヨミ「ジンの分からず屋ーーー!!ちょっと改造に失敗しただけじゃん!!」
喧嘩もした
そしていつしか、日本にこんな噂が流れる。死に際に銀の左腕と銀の右足を持つ見送り屋が来たら必ず楽に死ねると
今を生きる苦痛から解放してくれると
噂が噂を呼び二人は政府から追われることになったが、ある時からプツリと噂が途絶える
時は過ぎ2103年日本某所
寂れたバーに歳の離れた二人の夫婦が現れ、旦那らしき人物がゴトリと銀色に輝く左腕をカウンターに置いてバーテンダーに聞く、嫁の方はカウンターの席に座り足を組む、その片足は銀色の義足だ
アンタ・・見送り屋って知ってるかい?
END
御覧いただきありがとうございました。頭休めにジャズ聞きながら書いてみました
本当はもう少しエピソード書きたかったなぁと思いましたが短編でこれ以上書くとグダグダになると思ってサクッと終わらせました。気に入ってもらえたら幸いです。




