表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

恋のディスタンス〜遠距離恋愛している大学生カップルの卒業旅行についていってしまった女子大生の末路は!?

遠距離恋愛。

将来の選択。

友情のかたち。


美杉という静かな里山で、

彼女たちは“約束”を交わします。


どうぞ、最後までお付き合いください。

【ペルソナ】※モノローグは遥楓

▪️遥楓はるか=大阪に住む女子大生。主人公モノローグ。紗愛とは家も近い幼馴染で親友。紗愛の相談役。隠しているが旭川の家具職人・じょうと遠距離恋愛中

▪️紗愛さら=大阪生まれ大阪育ちの女子大生。同級生の結葵と遠距離恋愛中。結葵から卒業後に東京で暮らそうと誘われているが悩んでいる

▪️結葵ゆうき=高校時代オーストラリアから大阪の高校へ転校した帰国子女。紗愛と付き合っていたが、東京の国立大学で経済を学び、国家官僚を目指す


【シーン1:大学のキャンパス】


「遥楓、一生のお願い!

私たちを救ってぇ〜!!」


紗愛が必死の形相で泣きついてくる。


「結葵と私の恋を成就させてぇ〜!!」


私は遥楓。

大阪に住む、どこにでもいる女子大生 。


私の腕をとり、すがりついているのは、幼馴染で親友の紗愛。

昔からなにをするにも一緒。

言い換えればソウルメイトかな。


紗愛は、高校のときつきあい始めた結葵と、遠距離恋愛中。

紗愛の彼氏=結葵は上昇志向が強く、東京の大学で経済を学んでいる。

将来は国家官僚になってこの国を動かしたいんだって。


「遥楓〜、最近結葵に連絡とれないんやわ〜」


ディスタンスに悩むとき、紗愛の慰め役は私だった。


ディスタンス?


はぁん?たかだか2時間半の距離じゃない。



で、冒頭のセリフに戻るんだけど。


今回紗愛が推しているのは、卒旅。

ネットを調べまくって見つけた、コスパ最強のプランらしい。


「遥楓〜、みて、これ〜。

里山のコテージ泊まって、温泉入って、ライブキッチンの夕食バイキングついて

1泊夕食でこの値段やで!

え?〆パフェまでついとるやないか」


「無双やな。

うちら貧乏大学生の強い味方ってか。

結葵と行ってきたらええやん」


と言うと、紗愛はニヤっと笑って・・


「そうやろ〜。

た・だ・な・・」


「ん?」


「3名以上のプランなんや」


「え?」


「だ〜か〜ら〜」


「なっ、なに?」


「遥楓、お願い!

一緒に行って!」


「なんやてええええええ!?」


「一生のお願いやから〜!」


「無理無理無理無理!ぜったいに無理〜!!!」


「そんなん言わんと〜!

お・ね・が・い〜!」



【シーン2:近鉄榊原温泉口駅/待ち合わせ】

※10:19発:伊勢中川行急行

(近鉄上本町駅8:31発〜榊原温泉口10:18着)

https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nakagawa.mp3

■アナウンス「榊原温泉口、榊原温泉口です。1番乗り場から伊勢中川行き急行が発車します」

■急行列車の発車する音〜小鳥のさえずり


で、結局イマココ。


紗愛と私は、近鉄榊原温泉口のホームに降り立った。


「遥楓、とりあえず改札でよか」


「でもすぐに結葵、くるんやろ?」


「せや。

けど、うちらが先に待ってへんとカッコ悪いやんか」


「ふうん。そんなもん?」


※10:20発:大阪難波行特急

https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nanba.mp3

(東京駅のぞみ7:12発〜JR名古屋8:48着〜近鉄名古屋9:10発〜伊勢中川10:09着〜乗換10:10発〜榊原温泉口10:19着)

■アナウンス「まもなく2番乗り場に大阪難波行き特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください」

■特急列車の到着する音


「はやっ。

もうきよったか」


紗愛が私の手をひっぱる。

榊原温泉口の改札を出ると、


「看板でとるで。

”ようこそ白山町へ”

“火の谷温泉、南西20km”」


「20km?まあまああるな」


「なにゆうてんねん。

20kmなんて、目と鼻やで」


あ・・そっか・・・

紗愛に距離の話は禁句だった。


駅前のロータリーには1台のワゴン(※合ってますか?SUVとかだとさらにかっこいいですが)・・


「み・す・ぎ・リゾート・・・

あれやな、ホテルの送迎」


紗愛は大きく背伸びをしながら、おぢさんみたいに笑う。

ホームには特急列車到着を告げるアナウンスがこだましていた。


https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nanba.mp3

■アナウンス「榊原温泉口、榊原温泉口です。2番乗り場から大阪難波行き特急が発車します」

■特急列車の到着・発車する音

■スニーカーの足音〜スーツケースを引く音


「お待たせ〜」


7時台ののぞみで東京からやってきた結葵が手を振る。

名古屋から近鉄特急を乗り継いで、榊原温泉口へ。


「東京から榊原温泉口まで2時間40分か。

大阪まで行くのと、そんなに変わんないな」


「うわっ、東京弁きもいって。

まだ4年しかおらんのやろ、東京には」


「はは・・

お、遥楓、久しぶり!

いつも紗愛が迷惑かけっぱなしで悪いね」


「ホントに」


「ちょ、遥楓。

根に持ってんのぉ?」


私は笑ってごまかす。

ホテルの人が、ワゴンの荷室に私たちのスーツケースを乗せてくれる。


私のスーツケースを持ったとき、

一瞬、あれ?という顔をしたけど、すぐに笑顔で積み込んだ。



【シーン3:ガイドツアー/いなかツーリズム】


■SE/小鳥のさえずり


私たちは、チェックインの前に、”いなかツーリズム”へ。

田舎の里山が残る、美杉町ならではの体験イベントだ。


紗愛と結葵は、ノルディックウォーキング。


ノルディックウォーキングというのは、北欧発祥のフィットネス。

スキーのストックのようなポールを持って

森林セラピーのコースを歩く。


「最近運動不足やからな。

ダイエットや」


「オレもや」


「結葵、おかえり!やっと戻ってきたな」


「なんやて?」


「関西にきたら関西弁が標準語やろ」


「ここ関西やなくて、三重県やで」


「遥楓、おまえもノルディックウォーキングくるやろ?」


「うちはやめとくわ。

二人で楽しんできぃ」


「遥楓、気ぃつかうのはやめてや」


「ちゃうちゃう。

うち、やりたいこと、あるんよ」


「なによ?」


「木工教室や」


「木工教室?」「木工教室?」(※同時に)


「ちょうど他にも予約が入ってたらしくて・・

一人でも参加できるって」


「なんか、シブいなあ」


「ホントは木地師体験がしたかってんけど、

電話で聞いたら、2名以上からやねんて」


「キジシ?」


「木材を削って、木の器を作る人のこと」


「いや、シブくね?」


「最近、木とか森にすっごく興味あるねん」


「そうか、そういや遥楓・・

就職先、家具屋さんやったな。

ま、楽しんでき。

終わったらコテージにチェックインして夕食やで」


「うん。わかった」


「やっぱ、シブいわ・・・」


2人にはまだ言ってないけど、木が好きなのにはちゃんと理由があるんだ。


あれは大学の研修で関西万博へいったときのこと。


林野庁の「スマート林業」体験に参加して、ひとりの男の人と知り合った。

名前は”じょう

北海道の旭川で家具職人を目指しているんだって。


直接会ったのはそのときだけだったけど、

今でもずうっとLINEでやりとりしている。


私も、もともと木の香りが好きで、

お部屋も木の家具やアクセサリーに囲まれているから。

城とはすごく話が弾んだ。


”いつか旭川で一緒に木工の仕事をしないか?”


それがどういう意味なのか、よく考えずに


”いいね”


と答えた。


私、就職先は大阪の家具メーカーだけど、いつか旭川へ行きたい。

それまでに、いっぱい木に触れておきたい。


これって、不純な動機?


まいっか。


とにかくいまは、木工体験楽しもう。

ペアのマグカップ作って、旭川に持っていこうかな。

城に見せたら、なんて言うだろう。

つい口元が緩む。

美杉の稜線に低い雲が流れていた。



【シーン4:チェックイン/コテージ〜夕食バイキング/ライブキッチン】


■SE/森の夜イメージ


チェックインしたコテージは想像以上に広かった。

木の香りが心地良い。


泊まってみたかったログハウス。

ほんとに泊まりたかったな・・・


紗愛と結葵は、スーツケースの中身を部屋中に広げた。

ふふ・・宝探しでもするつもり?


「遥楓は荷物ださへんの?」


「うん。うちは荷物少ないから」


そう言ってスーツケースを片手でひょいと上げる。

ホントに軽いな。


「そっか・・

あ、そろそろ夕食バイキングやで。

お腹すかせといたから、ガッツリいてまお!」


■SE/夕食バイキング会場


ライブキッチンってなんだろう?


と、思ってたけど、こういうことなんだ・・


職人が目の前で焼いてくれるステーキ肉。

目の前で握ってくれるお寿司。

美杉のジビエ料理。

地元野菜のサラダバー。


まるで森の中にいるような、木の温もりあふれる空間。


だめだ。

城に会いたくなってきちゃった・・・

私、こんなに木の香りが好きだったんだ・・・


「なぁなぁ。

たまには贅沢して、クラフトビール頼まへん?」


「賛成」


私はバッグからさっき作ったコースターを取り出して

クラフトビールを置いた。

コースターの真ん中には小さく「H」のイニシャルが刻まれている。


「お、それ完成品?」


「うん。ちょっと歪だけど・・」


「ぜ〜んぜん歪やないやん。

そのまま売れるで」


私はにっこり微笑んで、バッグの中に手を入れた。

そこにはもうひとつ。

小さく「J」と刻印したコースターが入っている。

左手の薬指で刻印に触れながら、右手で・・


「乾杯」


くうに向かって杯を掲げる。


そこへ紗愛と結葵のグラスが重なった。


「遥楓、今日はありがとう」


「ううん、こちらこそありがとう。

お邪魔虫やのにごめんね」


「なに言うてんねん。お邪魔虫って・・・昭和かっちゅうの」


「3人だから楽しいんだろ」


それからは、楽しいディナータイムが続いていった。

2人がデザートをとりに行くのを見て、私は帰り支度を整える。


「あれ?もう部屋帰るん?」


「うん、なんか食べすぎちゃってお腹苦しいねん・・

お部屋でちょっと休んでくるわ」


「胃薬あるで」


私はお礼を言って断り、コテージへ。

上着を羽織り、マフラーを巻いて、スーツケースを持つ。

リヴィングのテーブルには、2人へ短い手紙を書いた。


ごめんね、紗愛。結葵。


顔を上げて、コテージの外へ出たとき・・


「はるかぁ〜、どこ行くのぉ?」


「え?」


「黙って消えるつもりか」


結葵と紗愛が笑いながら立っていた。


「こういうことちゃうかって思ってたんや」


「そんな・・・」


「おまえがおらな楽しみ半減するやろ」


「え・・・」


「ちょっとそれ、エロいな」


「い、いや。そうじゃなくて」


「さ、いさぎよく、回れ右しぃ」


「私、終電で帰るから・・・」


「あかん。

遥楓はあたしと一晩中喋り倒すんやから」


「お、おれは?」


「結葵はゲームでもしとき」


「あかん!

せっかく二人会えたのに」


「ええの。

あたしにとって、優先順位の一番上はあんたやねん」


「それはちゃうやろ」


「それにな・・・

あたし、卒業したら東京行くねん」


「えっ」「えっ」(※同時に)


「去年から結葵に誘われてたんや。

東京で一緒に暮らそうって。

迷ってたんやけど、ここに来て決めた」


「ホントか?」


「ウソつくタイミングちゃうやろ」


「紗愛・・・」


「だから、遥楓と一緒にいる時間、大切にしたいんや」


「紗愛・・・」


「遥楓、せっかくの卒旅やねんで。

しかもコスパ最強の。

目一杯楽しんで、元とろうや!」


紗愛らしい言葉で笑いをとってるけど、気持ちは痛いほど伝わった。

冷たくて心地いい夜風が、私たちの間を通り過ぎる。

結局私はスーツケースを持って、部屋に戻った。



【シーン5:露天風呂〜あったまりなさい】


■SE/露天風呂のイメージ


「遥楓、お泊まりセット、貸すで」


「え?」


「持ってこんかったやろ」


「うん・・・ありがと。

・・ねえ紗愛」


「なんや?」


「ほんまに東京行くん?」


「ああ」


「東京弁喋れへんのに?」


「そんなん、いざとなったらなんとでもなるもんや。

なんなら、東京中に関西弁ひろめて標準語にしたるわ」


「(笑)」


「それにな」


「なに?」


「さっき、ライブキッチンで3人で話してるとき」


「うん」


「結葵の顔見てたやろ」


「え?わかんない」


「あいつ最近、ときどきフッと寂しそうな表情するねん」


「そう?」


「東京行って4年間。

いっぱしのシティボーイ気取ってるけど、寂しがりやなんやて」


「シティボーイって・・(笑)」


「この厳しい社会へ出てみい。

あたしがおらんときっとボロボロになるわ」


「せやな・・」


「だから、あたしが守ったるねん」


「紗愛らしいわ」


「なあ遥楓、ここで約束せえへん?」


「約束?」


「そ。

5年後・・・いや10年後。

もしもそのときまだ、あたしたち3人が友だちやったら、またここへ来えへん?」


「ええなぁ。

でも、3人じゃなくて4人かも」


「えっ?

なに?

4人て?

どうゆうこと?」


「ふふふ。決まりな」


「お〜〜〜い!結葵〜!聞こえる〜?

遥楓にもうええ人おるんやて〜!」


「なんやてぇ〜!?」(※遠くから)


ふふ・・

10年後かあ・・・


私、なにしてるんだろう?

旭川からここまでだと、どうやって来るのかな?

飛行機?やっぱり・・・


美杉の湯気の中に、城の顔を思い浮かべながら、

私は夜空を見上げていた。


あったまるなあ・・・ここ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


距離とは、ただの時間ではなく、

覚悟なのかもしれません。


この物語はボイスドラマになっています。

「ヒダテン」で検索して公式チャンネルから聴くか、

Spotify、Apple、Amazon、YouTubeなどのPodcastで

「ヒダテン」と検索してください。


あなたの心にも、

あたたかい湯気が残りますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ