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【鑑定】と【修復】が不遇スキルなんて誰が決めた? ~ゴミ捨て場の「呪われた遺物」を直してたら、伝説の戦乙女たちが勝手に復活して、帝国を滅ぼし始めた件~  作者: イチジク浣腸
救いようのない依存

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20/20

本日開店

世界が白く塗り潰されていく中、俺はただひたすらに「叩き直して」いた。

空を、大地を、そして今にも消えそうな彼女たちの存在そのものを。

神様が「いらない」と切り捨てたものを、俺が「必要だ」と定義し直す。

それはもはや修理などではなく、新しい世界を一から創り上げる行為だった。

「……あ。……書き換え完了。……世界設定、管理権限……オーナー、奪取確認。……お疲れ様。……もう、大丈夫」

ラジエルの声が、驚くほどはっきりと耳元に響く。

次の瞬間、俺はゴミ捨て場の地面に大の字で倒れていた。

空は、かつての毒々しい琥珀色ではなく、どこまでも澄み切った青。

管理者の姿も、あの耳障りな声も、もうどこにも存在しなかった。

「主様! お目覚めですか!」

ブリュンヒルデが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

白銀の甲冑は、俺が修復したあの時のまま、美しく輝いていた。

「……ああ。……終わった、のか?」

「ええ。あなたが世界を『直して』しまったせいで、神様も呆れて帰っていったみたいよ。……本当に、無茶をするんだから」

エキドナはそう言いながら、俺に手を貸して立たせてくれる。

周囲を見渡すと、不時着した空中要塞バベルが、ゴミ捨て場の象徴のように鎮座していた。

そのハッチには、真新しい木製の看板が掲げられている。

『アイゼン・リサイクル

 何でも直します。神の呪いから、恋人の形見まで』

……数か月後。

ゴミ捨て場は、もはや死の場所ではなかった。

帝国の元兵士、かつての英雄、そして遠方の村からやって来た農夫たち。

世界中から「捨てられたくないもの」を抱えた人々が集まり、いつしか賑やかな街のようになっていた。

「オーナー。……接客、交代。……私は、クッキーの『改良』で手が離せない。……食べて。……毒見、必要」

ラジエルが、少し焦げたクッキーを差し出してくる。

一口かじると、以前よりもずっと「人間臭い」甘さが広がった。

「……少し、砂糖を入れすぎだな。……まだ、直す余地がある」

「……ん。……じゃあ、今夜。……一晩かけて、二人でじっくり『修復』。……異論は、却下」

感情の宿った瞳で、ラジエルがいたずらっぽく微笑む。

「おい、ラジエル! 主様の夜の時間は、私の剣の手入れに使うと決まっているだろう!」

「ふん。重力制御の調整こそ最優先だ。貴様ら、下がっていろ!」

「あ、あの……! 聖域の結界メンテナンスも……!」

相変わらずの喧騒。

直りすぎて、むしろ以前より手に負えなくなった最強の「ガラクタ」たち。

俺は小さく溜息をつき、腰を上げた。

世界はまだ壊れている。

完璧な物語なんて、どこにも存在しない。

だが、壊れているからこそ、直す楽しみがある。

「……さあ、開店だ。……壊れてるなら、何でも持ってこい。……俺が、全部直してやる」

店主の、乾いていながらも確かな自信を帯びた声が、

新装開店したゴミ捨て場の青空へと、いつまでも響き渡っていた。

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