表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定】と【修復】が不遇スキルなんて誰が決めた? ~ゴミ捨て場の「呪われた遺物」を直してたら、伝説の戦乙女たちが勝手に復活して、帝国を滅ぼし始めた件~  作者: イチジク浣腸
救いようのない依存

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

世界のログ

カインを拘束し、要塞の残党を追い払ったのも束の間。空気が、にわかに重くなった。  それは帝国軍のプレッシャーなどとは比較にならない。世界そのものが「重力」というルールを忘れ、不協和音を奏でるような、絶対的な不快感。


 空に、巨大な「文字の帯」が現れた。


『――不適合個体、レン。および、記述外の残滓たち。汝らは、この物語の整合性を決定的に損なわせた』


 声ではない。脳内に直接叩き込まれる、冷徹なログデータ。第1章の最後に現れた「管理者」の本体が、ついにこの世界のバグを取り除くために降臨したのだ。


「……あ。……来た。……サーバー管理者。……この世界そのものを、一度『削除デリート』して、再インストールするつもり」


 ラジエルの身体が、再びノイズのようにブレ始める。今度は、俺の魔力でも繋ぎ止められないほどの、圧倒的な消去命令だ。ブリュンヒルデの漆黒の剣が砂のように崩れ、エキドナの魔力が霧となって消えていく。


「主様……身体が、動かない……。……世界が、私を拒んでいる……」


 アイギスが地面に膝をつく。彼女たちの存在理由は、神の書いた「物語」の中にあった。だが、今、神自身がその物語をゴミ箱へ捨てようとしていた。


「……修復師。汝の善意は、世界を腐らせた。汝が壊れた英雄を直し、死すべき道具に命を与えたことで、物語の結末は霧に消えた。……ゆえに、この章はここで打ち切る」


 天から降り注ぐのは、物理的な光ではない。それは「存在の否定」。光に触れた巡礼者たちが、悲鳴を上げる暇もなく、塵一つ残さず消えていく。


「……打ち切りだと? 勝手なことを言うな」


 俺は、ポケットの中にあった懐中時計を握りしめた。  かつてラジエルが「中身がスカスカで直せない」と言った、あの古い時計だ。  俺は、その時計のゼンマイを、無理やり、指がちぎれるほどの力で回した。


「……神様。あんた、大きな勘違いをしてるぞ。……物は、あんたの書いたシナリオ通りに動くためにあるんじゃない。……使ってくれる奴と、笑ったり泣いたりするために、ここにあるんだよ!」


 俺の心臓が、激しく脈打つ。  俺の【修復】が、自分自身の魂を燃料にして、ゴミ捨て場全体へと広がっていく。


 俺が直してきた全ての剣、全ての盾、全ての魂。それら一つ一つが、世界の消去命令に対して「ここにいたい」という明確な拒絶を返していた。


「ブリュンヒルデ! エキドナ! ラジエル! アイギス! ……お前たちはバグなんかじゃない! 俺が直した、世界で最高の『一点物』だ!」


 俺の声に、消えかけていた彼女たちの瞳に火が灯る。


「……そうね。……私は、あいつの書いた神話なんて、とっくに飽きていたところよ。……レン、あなたの作ったこの地獄を、私は選びたい」


 エキドナが、消えかかっていた魔力で俺の手を握る。その温かさが、虚無の世界で唯一の現実だった。


「――全事象、上書き保存セーブ・アンド・オーバーライト!!」


 俺の叫びとともに、ゴミ捨て場のガラクタたちが一斉に共鳴を始めた。それは、神の記述を書き換える、職人のエゴそのものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ