04 一番得意なこと
「素晴らしきかな図書館!!」
私は心から喝采をあげている。
やっと見つけた図書館に入れば、そこには望んでいた光景が広がっている。本がいっぱい。本だらけ。全部読み放題。ああ素晴らしきよ。私は今天国に来た。
「図書館内ではお静かに願います」
「あ、ごめんなさい」
職員の人に怒られてしまった。がっつりキツメに。いけないいけない。確かに、図書館は静かにするものだ。うん、常識だよ。
怒ってきたあの人、司書の人かな。
だったら仲良くしておきたい。図書館では、司書さんは大きな味方なのだ。図書館の蔵書について整理して、どこにどんな本が有るかを把握している人だから。
要するに、書籍の検索についての窓口。本に詳しくない人なんかが、ふわっとした内容で本を探すのを、具体的な書籍として教えてくれる。
「あの」
「はい、何でしょう」
さっきは大声出してごめんなさい。
「絶版本や話題の新作が読めるって聞いたんですけど」
あ、間違えた。
違うんです。ちょっとだけ、欲望が先に漏れてしまっただけで。
反省はしてるんです。
「はい。読めますよ」
「やっ!! ……ごほん」
やったぁと大声をあげそうになって、司書さんのひと睨みで口を手で塞いだ。セーフ。
反省さんが、危うく行方不明になるところだった。お帰り、反省さん。
「どこに置いてますか?」
声を落として、司書さんに尋ねる。
「希少な本は第四区画に置いてあります。新作は、新作コーナーですね」
「分かりました。ありがとうございます!!」
うっひょう。
新作が好きなだけ読める。貴重な本もいっぱい読める。
なんて素晴らしい。ここは天国に違いない。楽園に相違ない。エデンはここにあった。
早速探そう。今すぐ探そう。さあ探そう。
「第四区画……新作コーナー……」
しばらく図書館内を捜索してみるが、中々目当ての場所が見つからない。おっかしいな。司書さんが言っていたんだから、場所が無いってことはあり得ないと思うんだけど。
早く見つけてあげないと、私を待っている本ちゃんたちに悪いと思うの。
「あの」
「はい、何でしょう」
さっき聞いた司書さんとは別の職員さん。
腕章っぽいものを付けてるから、職員さんであるのは間違いなさそう。何となく、同じことを同じ人に何度も聞くのは悪いかなと思って、別の職員さんを探していたのだ。見つけたので、聞きたいことを聞いてみる。
「第四区画っていうところと、新作コーナーを探しているんですけど」
「それでしたら、第四区画は三階の奥、新作コーナーは二階の手前にありますよ。ちなみに、上にあがる階段はこの先です」
「ありがとうございます」
職員さんにお礼を言って、階段の方に行く。
そうか、二階もあるのか。
一階だけを探していたから、分からなかった。
階段を探そうと思えば、階段もすぐに見つかる。探そうと思わないと、意外とこういうのって気づかないもんなんだよね。
「あれ?」
そして、階段を上がろうとしたのだが、何故か階段手前から見えない壁のようなものに阻まれる。
何で!?
何度か叩いてみても、全く入れる気配が無い。
おのれ、何だこの壁は。
「ん?」
ふと、目の端に半透明のものが映る。
どうやらメッセージが出ていたらしい。
『この先に入る権限が足りません』
どういうこと?
「あの、すいません」
「はい」
「あの階段を上がりたいんですけど、権限が足りないって……」
職員さんに、必死に訴えてみる。視線で。
私、いきたい。あそこ。階段。いけない。困る。
何とかして欲しいと、強く強く想いを込める。
「ああ。あの上に行くには、利用者としての実績を積まないと上がれないんですよ」
「ええ!?」
だが、職員さんの言葉はとても無情なものだった。
私は階段にはいけないという。
そんなのってないよ。駄目、私は行きたい、新作も名作も読みたい!!
「図書館ではお静かに」
「すいません」
怒られてしまった。ぐぬぬ。
実績で判断される。実績を積めとな。
どういう意味だろう。
いや、意味自体は分かるんだけど、実績というものの具体的な内容が知りたい。
「あの、実績ってどうやって積めば……」
「図書館の発行するクエストをこなしていただくか、一階にある本を沢山読んでいただければ、実績として認められますよ」
「……分かりました」
ぐぬぬぬぬ。
貴重な本を読むのに、他の本を読まねばならないのか。
良いだろう。この私にかかれば、一階の本なんてすぐにでも全部読破してみせる。
やれるのかと問われるのも愚問。やらいでか。
本を読むなんて、私が一番得意なことなんだからね。




